第161話 海に行くのである!
「全員で海に行くに決まってるだろ! な? な?」
と小原くんに強烈にアピールされて、応援団は海に……!
「いや、行くに決まってるっしょ。あたしだって水着用意してきてるんだし、真美奈だってそうでしょ? ほら、それに向こうからオカ研と黄瀬さんも来てるし」
「翔子でいいよー」
「ど、ど、どうも、城之内くん。あなたというオカルトが人々に認知されるようになっていて私は嬉しいです……」
「どんどん人が増えてきたぞ! それにみんな下に水着つけてきてるな? その明らかに脱ぎやすいシャツやホットパンツやミニスカートは……」
「ぐふふふふふ」
怪しげに笑う青菅と黄瀬なのだった。
やはりこいつら、相性がいい……!!
合わさると威力が何倍にもなりそうだな。
「さあ、城之内くんも行きましょう? あっくんはちょっとトイレに行ってから来るそうですし」
赤佐真美奈。
俺になんか濡れた視線を送ってきてないか?
お前には響がいるだろ……!
「今日こそジョジョを振り向かせるぞーっ! おーっ!」
青菅希美。
お前、友達以上恋人未満の大嶽はどうするんだ!?
やめろ、俺にアプローチするんじゃない。
「ふうん? 城之内くん……いえ、ジョジョは女の子にとっても人気なんだ? なるほど、ライバルかな……?」
黄瀬翔子。
ヒロイン戦線に加わる気満々ではないか!!
恐ろしいことになって来た。
この三人が並んだところに、凄いのがやって来た。
「ふむ! 揃っているようだな! お前たちの引率をするのは私だ。本来なら水着は、彼に見せたかったんだが……」
夫に見せるより先に、生徒たちの前で水着を披露しようという、人妻にして体育会系教師にして男っぽくて親しみやすく、それでいて大人の色気をたっぷりと漂わせたボンキュッボンッという歩く凶器のような人物。
厚木美夜子!
俺は海では、彼女こそが最も被害に遭いやすいと睨んでいる。
あの海水浴場は青少年の家のほぼ貸し切り状態だが、それはつまり青少年の家に宿泊している他の客も利用できるということである!
第十六宿舎からテニサーOBが消えたので、まだ無事な一部は宿泊所として営業を開始。
一般客がそこに入ってきているようだ。
つまり、外部からの人間が入り込んだのである。
「ジョジョがピリっとした感じになった! かっこいー!」
「ちょっと待って希美。それってつまり……彼の敵がいるってことじゃないの?」
「わ……分かってるね……。さすが翔子……理解が早い……」
うおーっ!
黒須が俺の影からスーッと出てきた!
いつの間に……。
時折俺でも感じ取れない隠密能力を発揮するな。
これは気を断つ技を身に着けているのかも知れない。
「黒須も水着で……?」
「わっ、私はいらないって思ってたんですけど……翔子がせっかく合宿行くならって……」
「だって去年の聖美ったらずーっと宿舎に籠もってたでしょ? でも今年はジョジョのお陰で外に出ずっぱりで、親友としては嬉しいなーって」
「か、過干渉してくる友達ぃ~!」
なお、この光景をとても羨ましそうに小原くんが眺めているのである。
憧れの厚木先生がいるのだから混ざればいいではないか。
手を出したらプロレス技で爆砕するがな……。
「ジョジョがマジの目をしてるから近寄れないんだよーっ! いかに俺と言えど、手を出したらヤバい相手は分かるんだぞ!」
「野生の勘というやつか……」
「こらこらお前達! 仲良くするんだぞ!」
そんな事情も知らない厚木先生は、上機嫌なのだった。
なお、三猿はマイペースと言うか、キカザルがオカ研のノッポと喋りながら歩いていると言うか。
「それでお体の具合は良いのですか」
「おう、お陰様でな! この埋め合わせは今日やってやるぜ。シャチのビニールボートでも借りて海に乗り出すか!」
「ひぃ、そのような陽の行い、自分は灰になってしまいます」
年頃の男女の青春のはずなのに、ノッポの方がなんかおかしいから会話内容が妙だなあ?
ミザルとイワザルも、これは恋愛になっているのだろうか?と首を傾げている。
オカ研は難しすぎる……!!
なお、メガネは気配を殺しながらついてきている。
気配を殺すんじゃない。
この中で最上級生なんだから堂々としろ。
こうして我々は海に向かった。
響は途中でダッシュで合流してきた。
「はぁ、はぁ、炎天下で走ると……効くねえ……!」
「響は体力をつけていかねばな……」
「が、頑張るよ」
「元ラレ男としては死活問題だからな。いいか? 回数をこなせない時点で赤佐を奪われる可能性が増す。まずお前は体力を鍛え、精力を鍛える。知性と将来性では文句のつけようがないが、若いうちの女は動物的な要素に惹きつけられるものだからな」
「う、うん! 城之内くんは詳しいなあ……」
「実体験だ」
「大量のゲームの中で仕入れた歪んだ知識ですねミノリー」
「こらセレス!」
「ミノリー」
「あらセレスちゃん、城之内くんに怒られちゃったの? 怖い怖いですねー」
くそっ、赤佐のところに避難しやがった!
チンチラとしての動きも堂に入ってきたな。
俺がどれほど濃厚に叡智なゲームを遊びまくってるか、詳細に知っている女神だからな。
本当のことを言われてしまっては響に言葉が届かなくなってしまう!
このようなやり取りをしつつ、合宿所から防風林を抜けて、坂道を下っていく。
見えてくるのは砂浜と海。
陽光を浴びて、キラキラと水面が輝く。
「おっしゃ! 一日遊ぶぞー!!」
小原くんがガッツポーズをし、青菅と黄瀬が「おーっ!!」と拳を突き上げた。
三猿が走り出し、ノッポが「ああーっ、そのような速度で走ると私の運動性能の限界を超えます~」とか泣き言を口にしている。
なんなんだお前は。
響と赤佐はマイペース。
厚木先生は生徒たちの様子を見ながら、ニコニコで。
メガネはそろりそろりと。
「で、では行きましょう城之内くん。それで、私に降り注ぐ陽の光を遮ってもらえるとありがたいのですが……」
「黒須はもっと日焼けした方がいいのではないか」
俺も軽口を叩きながら……。
新たな戦いの予感を覚えるのだった。
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