第16話 砦攻略戦!
朝である。
俺たちは早速、近場にいる別の隊と合流することにした。
確か待ち合わせ場所はここ……。
辺境村の農地のハズレ辺りだったはずだ。
しばし待つ。
来ない。
「どうしたんだ? 待ち合わせの時間はとっくに過ぎてるんじゃねえか」
「もうすぐお昼ですよ……。心配です」
ダイオンとチエリが不安げなのだが、俺は何が起こっているか大体察しているのだ。
「やられたな」
「なんだとジョナサン!? あいつらがやられたって言うのか!? 言っていいことと悪いことがあるぞ!」
「声がでかいぞダイオン。いいか、俺たちのところには弱い山賊が来たが、ではそいつらを掃討して侵入する予定だった敵の軍隊はどっちに来た? あいつらの場所に来たんじゃないのか? だからあいつらは負けた」
「俺たちのところが囮だったって言うのか……!?」
「結果的にな。本来なら死んでいたのは俺達かも知れない」
「あひー」
チエリが悲鳴をあげた。
では、俺たちはどうするか?
「敵は今、一度の勝利で慢心している可能性がある! そこを真横からぶっ叩いて全滅させる!!」
「いいな!」
「あひー!? わ、わざわざ危険なところにいかなくても……」
「いいかチエリ。敵の先遣隊だぞ。放置しておくとさんざんこちらの内情を偵察された挙げ句、次はもっとパワーアップして襲いかかってくることになる。大戦争にまで発展したら、逃げ場などなくなるぞ。今叩き潰しておくのがいいのだ」
ゲームの展開でもそうなっていたからな……。
それに、俺達三人は最小単位のユニットなので、隠密行動に向いているのだ。
特に、俺!
このための軽気功!
そして音を立てず、どんな間合いでも戦える格闘術!
問題は、ダイオンと二人きりにするとチエリがNTRされる可能性があることである。
ここにもフラグがあるんだよな!
『勇者よ、何を心配しているのですか? 一度や二度の過ち、いいではありませんか』
「よくないの!! よし、行くぞ二人とも!」
「指図するんじゃねえぞジョナサン!」
ダイオンもやる気になったようで、俺の横をのっしのっしと歩き始める。
昨夜は賢者モードだったから理性的だったが、精気に満ちたこの男がエネルギー充填するまで、あと数時間もあるまい。
そうなれば、女子と二人きりなど腹ペコ肉食獣の前に新鮮生肉を置いておくようなものだ。
では、ダイオンを敵の真っ只中に突っ込ませる?
いやいや、俺もNTR回避に魂を奪われているわけではない。
優秀な戦士であるダイオンがここで死ぬのは、将来的に時間凍結が解かれた王国にとっての損失である。
それではどうするか……?
頭の中で策略を組み立てる内に、別働隊が派遣されていたであろう、砦に到着した。
ここは戦時以外は利用されていない砦なのだが、別働隊はこの砦の機能をチェックに向かっていたのだ。
どうやら先に敵が来ており、別働隊はやられたようだ。
見よ、砦の最上階に、仲間の被っていた兜が吊るされている。
あれは殺されたということであろう!
ここで俺、ピンと来る。
「ダイオン。お前は隠密に向かないだろ」
「あ? そりゃあそうだろ。俺は騎士だぞ? こそこそ行動してられるかよ」
「そうだな。俺は偶然、訓練によって隠密行動能力を得たんだ。そしてチエリもちょっとそれっぽい能力を得た」
「な、なんだってー!!」
「なんですってー!?」
チエリも初耳みたいな顔するなよ!
運動スキルレベル上げただろ!!
「ということで、俺が潜入し、チエリが情報を中継する役割をする。手旗信号でいいか? これを見て、ダイオンは攻めどきを伺ってくれ」
「なんで俺がお前の言うことを……」
「ジダチ隊最強の戦士であるお前が切り札だ。お前がどこで力を発揮するかで、生存率が変わる……!!」
「俺が……切り札……!?」
ハッとするダイオン。
鼻息が荒くなる。
「仕方ねえな……最強は使うべき機会に使わねえとな……。おいジョナサン、チエリ、死ぬなよ! 俺に戦うべき時を知らせろよ!」
「ああ! 頼りにしているぞダイオン!」
よし、説得完了。
俺はチエリを連れて、岩場を駆け上がり砦へ向かうのだった。
後に残されたダイオンが、
「……それにしてもジョナサン、明らかに人が変わったよな……。話しててイライラするような生真面目さとか根暗さみたいなのが無くなって、なんかこう、底知れぬ怪物みたいな気配を感じる……」
勘の鋭い寝取り男は嫌いだよ!
こうして俺は、砦の裏手に当たる岩場を走る。
後ろをチエリが、「か、体がかるーい……! 不思議ーっ!」とか言いながらついてくる。
これまできちんと、魔法だけでなく体も鍛えていたらしいな。
運動スキルがあるだけで、常人よりもずっと身軽に動けるようになるぞ。
「チエリの努力が実ったんだ。今まで腐らずに努力し続けていて良かったな!」
「はい、ジョナサンさん! なんだか私、ジョナサンさんと出会ってからパーっと道が開けたみたいな……」
「ハハハ、気のせい気のせい」
パーティ加入させたことで、こっちでチエリのスキルをいじれるようになったからだけどな。
さて、今回の移動だが、俺とチエリがパーティであるというのが有利に働く。
ともに運動系スキルを持っているのと、先導する俺が軽気功持ちなので……。
「ツアーッ!」
俺がヒュンヒュンヒュンッと断崖絶壁を駆け抜け、枝の上を疾走し、突き出した倒木を駆けて砦まで飛翔すると……。
「あひー!?」
それに引っ張られてチエリも移動する!
「あいたたた! あだだだだ!」
チエリの運動スキルだと、ちょっと枝に引っかかるな。
髪の毛に葉っぱがたくさんついている。
「あひー! も、もっとゆっくり走ってくださあい!」
「ごめんごめん。だけど砦に侵入だぞ。奴らめ、まさか三階から入りこまれるとは夢にも思わない……」
「えっ!? 侵入者!?」
「ツアーッ! 振り向きざまの裏拳!」
「ウグワーッ!!」
いきなりこっちに気づいた敵兵を、裏拳で攻撃!
怯んだ敵兵の胴体を抱え上げ……「ウオーッ! やめろーっ! 離せーっ!!」
「三階から地上に向けてボディスラムだ! 終わりだーっ!」
「ウグワーッ!!」
敵兵一人を撃破!
「あひー! 大騒ぎしながら戦ったみたいですけど!?」
「チエリは砦の様子を見ておいてくれ。あちこちで兵士が動き始めるから、そしたらダイオンに手旗信号を送るんだ。あの岩の上辺りで……」
「あ、あそこですかあ!? 結構高いですけど」
「今のチエリなら行ける!」
それにゲームでも、あそこで仲間に信号を送るんだよな。
任せたぞ、チエリ!
俺は砦に混乱をもたらすために、奥へ向けて突き進むのだった。
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