第157話 ええいこれが本当の応援だ!!
外野席で様子を見ていたが……。
こりゃひどい。
こんなものが応援か?
試合開始前だからいいものの、予行演習のつもりか軽く音楽を鳴らしたり踊っても、明らかにチグハグである。
いったんイワザルのところに戻ったら、奴はおじさんと二人でチアや吹奏楽にケチをつけていたのだった。
「どうだ?」
「いまいち応援が盛り上がってねえなあ」
まあなあ。
どちらも使徒が入り込んで、人間関係はガタガタだ。
満足な応援ができるレベルにない。
黒幕は何を考えているのだ?
いや、使徒が勝手に動き回って、あちこちの部活動が機能不全に陥っているのではあるまいか。
どうも、ときめき学園のNTR事情には異常ありな気配がするぞ。」
「イワザル。ここは俺達が一肌脱ぎ、たるんだ応援系部活動に喝を入れる必要があるとは思わんか」
「ああ! ジョジョの言う通りだぜ! こんな応援じゃ、盛り上がる試合も盛り上がらなくなっちまう! 野球なんだぜ!?」
イワザルが燃えている!!
ということで、ミザルに太鼓を持ってくるよう依頼をしたのだった。
海水浴場を調査に行く予定だったが、なんだかんだでまだ宿泊所にいたらしい。
助かった。
黄瀬と黒須がこの様子を見て目を丸くしている。
「ねえもしかして城之内くん。彼らと勝負しようって言うわけ……?」
「その通りだ。そして正面から叩き潰す……! その後に使徒は叩き潰す」
一挙両得である。
曇っている連中の目を覚まさせ、その上でガンとも言える奴らを排除する。
我ながら完璧な作戦では無いだろうか。
ミザルは、響と赤佐と青菅の四人で応援団セットを持ってくるそうで、ちょっと時間が掛かりそうだ。
その間に、俺は再び外野席に移動した。
練習試合が始まっているではないか。
一軍VS二軍みたいな感じなのだが、少子化の昨今では野球部で二軍まで作れるメンバーが集まりきっておらず、他はまだ戦力外の一年生などらしい。
ということで、二軍の半分は現地で募集した草野球チームのおじさんたちとなっております!
な、なんだってー!!
地域交流じゃないか。
「おうおう、チアが流しているポップスと吹奏楽のお決まりの応援演奏が不協和音になってる。予行演習通りだなこりゃ」
「ありゃあー。ひどすぎる~!! 前はこんなんじゃなかったのに、彼女が来てからおかしくなったんだよねえ。ってか、吹奏楽もおかしいし」
うーむと唸る黄瀬なのだ。
そして、すぐさまこの不協和音を録音し始め、スマホのレコーダー機能に自分の実況解説を吹き込み始めている。
プロだなあ。
二人の使徒に狙われているとは思えないほどの落ち着きようだ。
なお、狙われてもいない黒須は太陽の光にやられて、日陰を求めてバックスクリーン付近に張り付いている。
虫か何かのようなアクションをするな……!
こうして離れたところから応援風景を眺めていても、向こうからの視線を感じるぞ。
二人の使徒がじっと黄瀬を見ている……。
そんなんだから応援に身が入らないんだぞ。
そうこうしていたら、ミザルと仲間たちが太鼓を運んでやって来た。
台車を借りて、その上に乗せて押してきたようだ。
ミザルと響が押して、それを赤佐と青菅で応援してたようだ。
青春の光景!!
応援団が一番青春しているかも知れない。
ホーム側の席に、堂々と搬入されてくる応援団印の大太鼓!
「うわあっ、邪魔なんだけど!?」
風吹がぶうぶう文句を言うが、響がドーンッ!!と鳴らしたら「ウグワーッ!?」とか悲鳴を上げて静かになった。
吹奏楽部も止まっている。
俺は彼らの前に悠然と歩み出る。
「応援とも言えない何かをやっていたようだが、あんなものでは野球部の力にならない!! 我々応援団が、お前たちが忘れてしまった応援の何たるかを教えてやる!!」
「なにっ!?」
青筋を立てて怒る音坂だが、よく考えたらお前はOBだから吹奏楽部の誇りとか背負ってるわけでもないじゃん!
こうして登場した、応援団伝統の大太鼓が打ち鳴らされる!
俺とミザルとイワザルの応援が響き渡る!
「校歌ーっ!! はじめっ!!」
そしてアカペラで校歌熱唱!
伴奏は大太鼓のみ!
響、大太鼓上手くなったなあ。
練習し続けていただけある。
「これは……アカペラに勇者のパワーが乗り、しかも仲間たちが増幅していますミノリー!」
セレス!
お前、そんな良くわからないエネルギーを計測できたっけ……?
唐突にそう言う力が生えてきたのだろうか。
だが、彼女の言う通りだった。
死んだ魚みたいな目をしていたチアリーダー部と吹奏楽部が、徐々にその瞳に輝きを取り戻していったのである!
「あれっ!? みんなどうしたわけ!? なんでやる気に……」
風吹が驚いている。
なお、吹奏楽部の音坂は普通に嬉しそうだぞ。
間男であると同時に、吹奏楽部のOBだからな。
あの男もしや、理性の部分では吹奏楽部を応援しようとしており、しかし本能的な部分で間男としての力を発揮。
吹奏楽部のモチベーションを破壊し、部内の空気を最悪にしていたのでは無いだろうか!?
奴が指揮を取り始め、吹奏楽部が校歌の伴奏に参加する!
さらに、チアの彼女たちも校歌を歌い出した。
うおお、ときめき学園校歌が今!
球場に響き渡る!
野球ファンのおっさんが大喜びしているのが見える。
野球部の動きも、目に見えて良くなった。
「素人に毛が生えた感じの応援団が、やる気を失っていた2つの部活に情熱を取り戻させる! いいんじゃない、いいんじゃない!? これってすっごく美味しい配信ネタだよ……!!」
黄瀬が猛烈に興奮しているのだった。
「ジョジョ!」
「なんだイワザル!」
「声を張り上げてみんなと応援するのって……いいなあ! 俺、応援団で良かったよ!!」
「そうか!! 良かったな! 俺もこれで間男どもを部活で叩きのめせて、これから物理的に叩きのめせるからワクワクしてるぞ!!」
ということで、戦闘フェイズに移行しようではないか。
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