第156話 間男と間女と俺の三つ巴だ!
「ちょっと待てえーい!」
なんかいい声がするなーと思ったら、吹奏楽部の方からオシャレなシャツを着た派手なメガネの男が立ち上がるではないか。
「さっきからチアの子たちさ、うちの演奏に合わせてないで勝手にポップス掛けて踊ってるじゃん? そういうの困るんだよねえ。応援の主役って音楽でしょ? 君たちもちゃんと合わせてくれないとさあ」
どう見ても高校生ではない。
さてはこいつ……吹奏楽部OBか!?
「音坂さん!」
なんか吹奏楽部の部長らしきメガネのキリッとした女子が、その男の名を呼ぶ。
「音坂さん、あんまり揉められると……ここは穏便に」
部長の横で、副部長らしきノッポの男が音坂とやらを止めようとしている。
ほほう、部長と副部長の距離が近い。
こいつら出来ているな?
だが、部長の目は音坂に注がれたままだ。
隣に彼氏らしき男がいるというのに、女は別の男に色目を使っている!
「間男だな」
「間違いないですねミノリー。人間のそれではない覇気を感じますミノリー。というか、ここに使徒が二人も集まっていませんかミノリー?」
「しかもこれはどうやら……。仲が悪いぞ」
風吹がやって来て、チアリーダー部にケチを付ける音坂相手に抗議する。
「主役は見目麗しいチアリーダー部に決まってません? OBだかなんだか知りませんけど、ロートルが今更出てきてわあわあ言うのってウザいだけなんだけど」
チアの部員たちもそうだそうだと言っております。
共通の敵である音坂が現れたことで、ギスギスしていたチア部が一つになったか。
「なんだか妙な雰囲気……。私、こういう空気の吹奏楽は知らないなあ。ましてや、今のチアと反目してるなんてどうなってるの?」
黄瀬が唸っている。
彼女はどうやら学園のことに関して事情通のようだが……。
二人の使徒が絡んだ状況は、黄瀬の持っている情報の範疇を大きく超えているようだな。
なお、そんな二人の使徒は黄瀬の事が気になるらしく……。
「あれ~!? 黄瀬ちゃんじゃーん! 応援に来てくれたの? 君のアイドル性なら、卒業後は俺が口利きして芸能関係に売り込むのも全然アリだからね! 良かったらそういう話しない?」
音坂がアプローチしてきたのだ!
「ちょっとちょっと、音坂さん? 部外者がうちの放送部のアイドルに声かけないでもらえる? 翔子は私と仲良くするんだから。ねえ?」
「い、いやあ~」
引きつり笑いで曖昧な返事をする黄瀬なのだ。
ほう、一般人ならすぐに取り込まれてしまうような暗示が発されているのだが、二人の使徒からそれが放たれているので、相殺しあっている。
結果的に黄瀬は正気を保てているというわけか。
だが、彼女が間男、間女の脅威に晒されていることに違いはあるまい。
二人の使徒の視線が交差するところに、俺はヌッと入り込んだのだった。
「なにぃーっ!?」
「あ、あんた……! やっぱり翔子の彼氏なわけ……!? 私達の前に立って少しも揺らがないなんて……ただの人間じゃない」
「さあな。だが……友達に妙な色目を使われて、放っておける性質でも無くてな」
「わわわ、ちょっとかっこいいんだけど」
黄瀬がなんか言ってる。
「はわわ、こ、これは実はオカルトの只中にいるのではないでしょうか」
黒須、鋭い!
そのものズバリ、オカルトの中心だぞ!!
「俺達は応援団の下見に来ていてな。再開したばかりの応援団は、まだまだひよっこだ。そこで放送部の彼女に頼んで、先輩方がどれほどのものかを見せてもらっていたってことだ。それがまあ、こんな有り様とはな」
「何だと……!?」
「私達をバカにしてんの……?」
「お前ら、応援ってものを理解しているのか? さっきから聞いていれば、己が主役みたいな言い草ばかり……!! 笑わせてくれる!」
「な、な、なんだと!? さっきから言わせておけば好き放題! お前は何者だ!!」
音坂が青筋を立てて俺を指さした。
おうおう、うちに秘めた使徒としての力が溢れ出してきているぞ。
だがこいつ、ノーマルタイプの使徒だな。
肉体を変異させて戦うスタイルだろう。
それに対して、風吹の周囲にはつむじ風が無数に発生し、渦巻き始めている。
チアリーダーたちのスカートが巻き上げられ、アンダースコートが丸見えになるのだ。
見せてもいいものとは言え、流石に恥ずかしいのか彼女たちはスコートを抑えている。
「俺は応援団団長、城之内雪之丞だ。よろしくな、応援の先輩がたよ」
「応援団団長……!? そんな……あのお方からは何も話を聞いていないのだが……」
「バカじゃないの? こいつは私達とは違うってことでしょ。でも、どこにも所属しないのに私達とやりあえる傑物がやって来たってことでもある……。そいつが翔子のねえ……」
おっと、風吹の目に嫉妬の炎みたいなのが燃え上がったぞ。
こいつら、自分がいる部活の女子を落としておきながら、黄瀬に執着しているのだ!
「俺達は外野席まで回って、そこで先輩がたの応援を見させてもらうぜ。試合が再開するようじゃないか。さあさあ、俺たちのことなど気にせず、先輩方の実力を存分に見せつけてもらおうじゃないか」
「こいつ……!!」
「煽ってくれるじゃない」
俺の肩口で、姿を消したままのセレスが呆れたように囁くのだ。
「勇者はこういう策略もいけたのですね」
「放っておけばこいつらは仲違いする。そうやって俺と三つ巴状態にしつつ叩く。全てはそのための演技だ……」
NTRを滅ぼすためなら、演技でも策略でもやってやろう。
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