第150話 躱せ熱波! サウナーバトル!
「なぁるほどぉ~、ネトラレブレイカーか。なかなかやるようだがぁ……」
にやりと笑う使徒。
「俺がここにいるということはどういう意味か分かるかなぁ~?」
「なにっ!?」
腰回りのタオル一枚以外全裸な間男が、鍛え抜かれた肉体でふわり、羽ばたくような動きをする。
「俺は熱波師だぁ~! つまりぃ!! この空間は俺の熱波に支配されるサウナとなるぅ!!」
「な、なんだってー!! まずい! キカザル、逃げろ! こいつはあのパターンだ!! 領域を支配するタイプだ!!」
「どういうことだってばよ!!」
くそっ、理論が飛躍しすぎて、キカザルには理解できなかったか!
「謎のパワーを使ってきますよミノリー」
セレスの冷静な分析。
それだけに、相手がガチなのが分かる。
これまでの使徒とはランクが違うぞ。
突如、周囲の気温が百度になった。
うおおっ、サウナ!!
暗示によってぼーっとしている女子生徒も男子生徒も、じんわりと汗をかき始めた。
「ウグワーッ! 暑いーっ!!」
キカザルが悲鳴をあげる!
そうか、お前サウナ行ったことないんだな?
これは、戦いが長引くとこの場にいる一般人が干上がってしまう。
環境そのものを己の戦場に作り変え、敵に強制的なデバフを押し付ける使徒がこの熱波師……もとい、プール清掃員なのだ!!
「これほどの環境支配能力……。パルメディアにいた使徒ですらこの領域にたどり着いたものはいませんねミノリー」
「まさか学園NTRもの世界で、ファンタジー世界ですら存在しなかった上位の使徒と遭遇するとはな……!」
俺は身構え、じりじりと歩く。
そうしながら、上着を脱ぎ捨てた。
「ほほーう!! 鍛え抜かれた肉体ぃ!! お前も我らを倒すため、相当な鍛錬を積んできたと見えるぅ~!!」
奴はにやりと笑いながら、どこからか布を取り出した。
むむっ!
奴の眼の前に、焼けた石が!
そして奴の片手には、水が湛えられた容器……!
「来るぞ! キカザル、耐えろ!!」
「来るって何が……」
「熱波ァ!!」
バシャーン!と焼けた石に注がれる水!
瞬時に蒸発し、蒸気となって室温を急激に上昇させる!
さらに、これを的確な動きで仰ぐことで、強烈な熱波が室内を蹂躙した。
「ウグワーッ!!」
たまらず倒れるキカザル!
いかーん!
キカザルの命が危ない!
サウナに慣れていない男に、この熱波は致命的だ!
「時間との勝負というわけだな! ツアーッ!!」
俺は飛び上がり、焼けた石目掛けてフライングクロスチョップを仕掛けた。
だが、そこに熱波の使徒のタオルが立ちふさがる!
水をたっぷり含んだタオルが、「熱波ァ!!」「ぬうっ!!」俺の攻撃を防ぐ!
この使徒……強いぞ……!
カウンターの熱波をギリギリで回避しながら、俺は水面蹴りを放った。
足元を薙ぎ払う、超低空回し蹴りである。
「熱波ッ!!」
熱波師使徒は、熱波を利用して上昇気流を生み出し、浮遊してこれを回避!
「熱波熱波熱波熱波熱波熱波熱波熱波!! ──熱波ァッッッ!!」
俺の頭を薙ぐように熱波を放つ!
「なんとぉーっ!!」
地に体を投げ出しながらこれを回避した俺に、熱波師はにやりと笑った。
降り注ぐのは、灼熱となった奴の汗!!
実質熱湯攻撃!
「凄くイヤですけど間違いなく恐るべき攻撃を繰り出してきますよミノリー!」
「一撃でも喰らえばこちらの身が保たんな! ツアーッ!!」
空気を揺らす裂帛のチョップで風を起こし、熱湯の汗を吹き散らす!
まずいな。
こちらも圧倒的な暑さでパフォーマンスが落ちつつある……!
「どうしたぁ~? 暑さで動きが鈍くなっていやしないかぁ~? サウナは我がホームグラウンド……。例えあのお方であろうとぉ~サウナでは俺に及ばぬぅ~」
「大した自信だ。お前相手に力押しはあまりにも分が悪い」
俺は立ち上がり、呼吸を正した。
「ならばこそ、この暑さを受け入れ……受け流す。心頭滅却……!! 柔拳の心得……明鏡止水……!」
息をゆっくりと吐く。
上級使徒との戦いは、想いの力のぶつけ合いだ。
つまり、思い込みが強いほうが勝つ!!
明鏡止水の心に達した俺は、なんか涼しくなった。
俺の足元を中心に、涼やかな風が吹き始める。
「なにぃ~!? ありえぬぅ!! サウナに涼風などぉ~!! 熱波! 熱波熱波ぁ~ッ!!」
「熱波受け流し……!!」
やつから受けた熱波を、右手で受け止めながら背中を回らせ、明鏡止水で冷やしてから左手で返す!!
因果応報!
「ウグワーッ!? 生ぬるい風になって直撃ぃ~!?」
怯む使徒。
奴は攻め手を失ったかのように、濡れたタオルを手にしながら俺の周囲をじりじり歩き始めた。
だが、余裕に見えても俺に猶予はない。
熱波で倒れた生徒たちの命が掛かっているのである。
短期決戦という状況に変化なし!
いかに決める?
柔拳のプラシーボ効果で奴を怯ませることに成功はしたが……!
ここから決められる技はあるのか?
思い出せ、柔拳の神の教えを。
暑さを受け流し、熱波を受け流し……。
相手の技を無効化したり、そのまま返すだけでは勝負手にはならない。
だとすると、敵の想像を超える攻撃を放ってこそ、決め手になるのではないか?
「ジョジョぉ……!」
キカザルの声がする。
彼は、ポケットから何かを差し出していた。
これは……乾いたハンカチ……!?
「お、俺の汗を吸う前に……! これで、あいつの汗を……」
「そ、そうか!!」
キカザル、奴の弱点を見抜いたんだな!?
熱波師は、灼熱のサウナで自在に動き回っている。
これは、奴の全身が汗から発する油でコーティングされており、断熱効果を持っているのだ!!
さらに、汗に含まれた油が空気との摩擦を減らし、奴の高い回避力を担保している。
だがこれを、乾いたハンカチで拭ってしまえば……!
「頼むぜジョジョ……!」
ばったりと倒れるキカザル!
お前が見抜いた奴の弱点、確かに突いてみせる!
「お前も仲間とともにサウナに沈めぇ!! 熱波ァ!!」
熱波とともに、必殺の一撃が拳で叩きつけられてくる!
俺はこれをハンカチで受けると……。
つるりと受け流しながら、腕全体の汗と油を拭う!
「な、なにぃーっ!? ウグワーッ!! 腕が! 腕がーっ!!」
今までこいつは、己の作り出すサウナの灼熱を避けながら戦っていたのだ。
すなわち、一人熱の外でチート状態だった。
これで、俺達と同じステージに立つことになるな。
「クソァッ! クソァーッ!! 暑い! 暑すぎるぞこのサウナはァーッ! 水風呂、水風呂ーっ!!」
奴は叫びながら、プールに続く扉を開け放った!
その途端、涼やかな空気が流れ込んでくる!
同時にプール側にはサウナの猛烈な暑さが流れていき、「なんだこの暑さ!?」「ウグワーッ!」「茹で上がっちゃう~!」と悲鳴が聞こえてるんだが。
水泳部員が冷静さを失っている今こそ好機!
俺は汗を失った熱波師の腕を取りながら、プールに向けて跳躍した。
「うおおおおおおおおぁぁぁぁぁぁ! やめろ! やめろぉぉぉぉ!!」
「ツアーッ!! ジャンピング! 逆一本背負い!!」
逃げられないように逆側に腕を固定しながらの一本背負い!
これを跳躍とともに放つ!
使徒は頭からプールとプールの間の通路に落下し……!
「眼の前に水風呂が! 水風呂があるのにぃ~っ!! ウグワーッ!!」
叫びながら、爆発した。
三人目の使徒を撃破!!
間違いなく、この世界に来て最強の敵であった……!
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