第15話 山賊壊滅! 敵軍の付け入る隙は与えん!
「うおおおおソニックブーム!」
「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」
高速で剣をスイングさせて、切っ先で衝撃波を発生、周囲に叩きつける剣技だ。
俺はファルコンスラッシュとこれしか剣技が使えない。
ついでに言うなら、格闘の技も技ではない。
現実世界で見たことがあるプロレス技を、それっぽく繰り出しているだけだ。
きちんと格闘技を身につけるためには、師匠について学ばねばならないのだ!
格闘スキルを上げる過程で、これの技を獲得するための専用スキルポイントも得られているはずだからね。
『なるほど、そう言うふうになっているんですねえ。私女神ですけど、全然知りませんでした』
「そうだな。そもそもこの世界の人間が、自分たちを動かしているシステムを知らない。それは当たり前なのかも知れないが、俺がジョナサンという男の肉体を使って、この世界の可能性みたいなのを引き出すだけでかなり強くなれる。みんな才能を遊ばせているのだ」
「なんで戦っている最中に余裕でお喋りできるんですか!? あっ! ジョナサンさんが腕で山賊の攻撃を弾いた!」
「それはなチエリ。後ろはダイオンが大暴れして支えているし、怪我をしてもチエリが回復してくれるから安心できるからだ」
「私が回復魔法を使えるようにしてくれたことは感謝してますけどー! そもそもジョナサンさん、怪我しないじゃないですかー! あっ、今度は頭でトマホークを受け止めた!」
「山賊ども、スキルの使い方が全然ダメなんだ! こいつら、ただ武器を振り回してるだけでてんで弱い! だからどこででも攻撃を受け止められる! 防御スキルを上げておいたからな!」
長物を振り回して暴れるダイオンが山賊を蹴散らし、俺は群がる山賊の攻撃を片っ端から受けつつ、回避できない距離からのソニックブームを叩き込む。
「ウグワーッ!!」
「やっぱり、攻撃の威力だと素手よりもソニックブームだな。きちんとした技を覚えないと、素手は間に合せになっちまう。序盤をくぐり抜けるためには必須だったとはいえ、早く師匠を見つけないと死にスキルだぜ!」
「本当に何を言ってるか分からないんですけど! 後で絶対、詳しく聞きますからね!」
『魔法医見習いの娘、かなり勇者に馴れ馴れしくなっていますねえ』
「親しみを持ってもらえたならいいんじゃないか? そもそも彼女も原作のサブヒロインだから、初期から俺への好感度は高めに設定されていてだな」
『私も勇者の話、良く分かってないんですからね?』
ついにダイオンが最後の一人を叩き伏せ、俺も眼の前の山賊を蹴飛ばして意識をなくさせて、勝負はついたのだった。
「ふひーっ、ふひーっ、実戦、きびしい~!」
チエリがバテている。
消費の少ないショックとは言え、連発すると疲れるよな。
しかも相手に触れる必要があるから、ギリギリの緊張感の中で戦い続けてたわけだし。
村人たちがわあわあと出てきて、倒れている山賊たちにトドメを刺している。
殺伐とした世界だな……!
えっ、身ぐるみ剥いで使えるものは使うの?
生かしておけば復讐される可能性もあるし、何より生きている限り飯を食う。
いいことは何も無いというわけだ。
「ありがとうございます騎士様がた!」
「なんのなんの! 村の娘に良くしてもらったからな! そのほんのお返しといったところだ!」
ジダチ隊のリーダー面をしたダイオンが、村人たちとやり取りしてくれている。
ありがたい、任せておこう。
俺は別に手柄を立てたいわけでも、誰かに感謝されたいわけでもないからだ。
身軽な方がいい。
『勇者よ、彼はパーティではないようですよ』
「おう。あいつは独自に成長するNPC扱いだ。そもそも寝取り男の一人だからな。同じように戦っているようでも、こちらのコマンドを受け付けない。勝手に戦い、勝手にレベルアップする。ルートによっては敵にもなるしな」
ダイオンのスキルは、見たところ近接武器であれば何でも使えるものだろう。
武器を振り回し、その威力を上げるもののようだが……。
それに攻撃と攻撃の間に隙が無かった。
連続ヒットさせる類の技か。
この間、素手であいつの初撃を止めたのは正解だったな。
「ジョナサンさん、まるで敵を見るみたいな目をダイオンさんに向けてますけど」
「騎士としてのライバルみたいなものだからな。いびつなスキル成長をしている俺だから、他のやつのスキル構成は常に気にしておかねばならない」
「また難しいことを……! ジョナサンさん、そのスキルというのはなんなのですか? それに、あなたが私から力を引き出して、今までまともに使えなかった回復魔法を、自在に使えるようにしてくれた。これはどういうことなんですか?」
「スキルっていうのは、その人間が持つ可能性みたいなものかな。勉強したり訓練することで、スキルの種みたいなものがその人間の中に生まれる。それに対して的確にスキルポイントを振ってやると芽吹いて、新たな能力として身につくわけだ」
「な……なるほど……! お師匠様からも聞いたことがない、独特な理論です……!」
魔法医の先生ですら、スキルの存在にはたどり着いていないか。
むしろこういうのは、常在戦場の戦士とかそう言うののほうが詳しいかも知れない。
「今回の山賊との戦いで、少しレベルアップしてるな……。あっ、チエリも2レベル上がってる。どれどれ……? チエリ、何か獲得したいスキルは無いか? ええと、チエリが今後取得可能なスキルは、運動と知識……。戦闘力につながる感じじゃないな」
「あひー! わ、私の知らない私が剥き出しにされているみたいなー!?」
「運動は身体能力の強化、知識は相手の行動や能力から、様々な情報を得られるやつ」
『勇者がもう、自分の喋りたいことしか喋ってませんね』
「あひー、で、では……運動と知識どっちもってできます……?」
「2ポイント分のスキルポイントだからな。できるぞ! では両方に割り振って、運動能力強化と、目星判定能力を獲得だ」
「あっ、疲れがスーッと引きました! 体がなんだか軽い……! それに、今まで聞いていたジョナサンさんのお話が、頭の中でちょっと結びつきます! なんていうか、この世界の知識じゃないみたいな……」
「いいぞいいぞ。RPGは仲間を成長させるのも醍醐味なんだ。こうやって育成していると、チエリを絶対NTRされないようにしないといけないと思えてくるな……! 俺が守ってやるからな……!」
「それってなんか、愛の告白みたいじゃないですか!?」
チエリがちょっと赤くなるのだった。
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