第147話 三年生を連れて体育館へ!
ボートの底でぐったり横たわっているのは、あられもない姿の三年女子であった。
我に返ったようで、上体をゆっくり起こすと呆然とする。
「悪い夢を見てたみたい……。なーんでわたし、あんな男にハマってたんだろう……」
「NTRゲームに登場する女性は誰もがチョロインになる。あんたもまた例外じゃなかったわけだ」
俺がチャプチャプと水面を歩いてきたので、彼女が目を見開いた。
「みっ、水の上を歩いてる!」
「軽気功のやり方を完全に思い出したんだ。いや、そんな事はどうでもいい。あんた、夏の合宿に全てを賭けてるんだろ。もうすぐ大会だろうが」
「そ、そうだった!!」
「どうでもよくないと思うなあ……」
「水に浮くなんてオカルトですぅ……」
こうして、2つのボートを連結し、運河を伝って合宿所へ!
合宿所にも、ボートを停められる場所があるのだ。
そしてここで担当している人が、モーターボートで手漕ぎボートを牽引して湖に戻っていく。
「あんたは早く自分の部屋に戻って、着替えろ! まだ部活はやってるんだぞ!」
「わ、分かってる! ああもう! 時間は貴重だってのに、なんでわたしそれを浪費なんか……! 取り戻さなくっちゃ! なんか水上を歩く変な人に説教されるし、厄日だ~!!」
彼女は自分に割り当てられた部屋に駆け込んでいった。
これで安心。
その後すぐに、青菅のスマホに大北から感謝の連絡が届いたそうだ。
三年生は厚木先生に叱られたものの、心を入れ替えて練習に励んでいるらしい。
「ほえー、ジョジョって面倒見いいんだねえ」
「アフターケアまでやって、それでNTRブレイク完遂なんだ。よし、俺達は昼飯を食ったら、キカザルを連れて水泳部に行くぞ!」
NTRブレイカーズは止まらない!
青少年の家の食堂で、全員集まっての昼飯となる。
冷やし中華だ。
何故か、オカ研の部員二名もいて、黒須が「湖上に立つマスクマン! 新たなるオカルト!!」「なんですとー!」「黒須氏その証拠写真は」「バッチリ動画で撮影しましたあ」「でかした!」「えらーい!」なんて盛り上がっている。
なんだこいつらは……!
「様子を見ていましたがやっぱり様子がおかしい面々ですねミノリー」
「セレスが大人しいと思ったら、黒須を観察していたのか……」
「はい、セレスちゃん。食堂の方にお願いして、チンチラも食べられるお野菜を用意してもらいましたよ」
「ミノリー」
またセレスが赤佐に餌付けされている。
「テニス部と女子バレー部で、もう二人もやっつけたのかよ」
「ジョジョパねえー。ただ、水泳部はまたちょっと難しいぜ。あそこのコーチはセクハラをしてくるが、実力は確からしくてな」
キカザルが飯を食いながら語り始める。
過去に幾度も大会出場に導いた、名物コーチがあのセクハラ男らしい。
つまり、水泳部はセクハラを受け入れて結果を出すか、それともセクハラ男を追い出して大会に出る実力を失うかの二択に追い込まれていると。
なるほどな……。
間男が優秀なコーチであるというパターンがあるのだな。
「勇者も情状酌量をするのですかミノリー」
「場合によってはな。俺は今、ネトラレブレイカーであると同時に学園の生徒でもある。まずは水泳部に潜む間男が、どれだけ凶悪なのかを調べてからでも良かろう。食後は案内頼むぞキカザル!」
「任せろ! バッチリ調べてきたからよ! 部外者進入禁止のプールだが、入り込む経路は確保しているぜ!」
キカザル、頼れる男である。
午後の戦いに向けて、冷やし中華を大いに食べた。
おかわり可能だったのでおかわりもした。
エネルギー充填完了!
「それで城之内くん。君が見た感じ、この合宿にはどれくらい敵が潜んでいそうなんだい?」
「響はそこが気になるか。そうだな……。2つから3つの部活につき、一体の間男がいると見ている。男女テニス部、男女バレー部、そして水泳部……。野球部はいなさそうだな」
「い、いるかも知れないから俺は調査するぞ!」
イワザルが必死だな……!!
お前、2日間ずっと野球部の練習見学してるだろ。
まあいい。
「テニサーにいた間男は、シャチの能力を持っていた。地面を海に見立てて潜り、自在に動き回るようだったな。だが、その力を生かし切る前に仕留めた。女子バレー部に出現した間男は、蛇拳の使い手だった。蛇拳というのはな、全身の動きを蛇に見立て、そのしなりや遠心力、あるいは素早い突きによって変幻自在の攻撃を行う拳法だ」
先程の戦いを思い返す。
湖の上に俺を誘い込み、行動範囲を奪っての遠距離攻撃。
その狙いだけは完璧だったな。
奴の計算外は、俺が軽気功を完全に思い出し、水上を動けるようになったことだったがな。
食事を終え、食後の麦茶を飲みつつ考える。
「水泳部の間男……。果たしてどんな相手か……」
「ジョジョってなんていうか、生き急いでいるみたいなペースで戦ってるじゃん? 今日は半休にしちゃってもよくない?」
「それはならんぞ青菅。お前を助けた時だって、まさしくギリギリの戦いだった。NTRを爆砕することは、常に時間との勝負なのだ……」
「そう言いながら麦茶をおかわりしてる……」
「ヤカンで煮出した麦茶らしい。美味しい」
戦士の休息だ。
あと30分だけ……。
英気を養い、午後の戦いに備えるのである。
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