第143話 宴会場の決戦!!
夏の宴会場は無防備である。
暑気を逃すために、本来なら張られているはずの鎧戸が開け放たれているからだ。
お陰で、俺がフライングボディアタックで真横に突進し、障子のみの障壁を破壊し、その向こうで乱痴気騒ぎに興じていた男どもを五人ばかりなぎ倒すことができる!
「うおらーっ!!」
向こうでは小原くんが突っ込んできて、OB一人をふっ飛ばしていた。
流石ラガーマン。
なお、一年生は棒を振り回して「うわあーっ!」とか言っているが弱々しいので、逆にテニサー連中に囲まれてピンチだ。
「行け、セレス! パンクラチオンだ!」
「ミノリー」
俺の肩から実体化したセレスが、ぴょーんとテニサーの人垣に突っ込んだ!
あっという間に形勢が逆転する。
一年生が呆然とする間に、テニサー連中が「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」と放り投げられ、外の地面に落下していく。
投げられた時を想定した鍛え方をしてないので、一度落下すると戦闘不能である。
なんということだろうか!
もっと鍛えてもらいたい。
さて、宴会場では既に料理などは片付けられており、雑多に酒やら怪しいおくすりなどが並ぶ中、素っ裸のおっさんやOBやテニス部員が、やっぱり素っ裸の女子たちを囲んで叡智なことをやっていたようである。
そこに突如俺がツアーッ!と殴り込みを掛けたので、ちょっとしたパニック状態だ。
おくすりで頭がおめでたくなっているテニス部員が殴りかかってくる!
俺はこいつを地獄突きで撃破!
「おげえええ!!」
テニス部員が喉を抑えてのたうち回る。
おくすりなど使って、格闘戦ができるわけあるまい!
OBたちも「何だお前!」「夏の暑い最中に銀色のギラギラした覆面つけやがって!」「なんで体はワイシャツとスラックスなんだよ!?」とか言いながら襲ってくるのだが……。
「ツアーッ! ツアッツアッツアッツアッツアーッ!!」
俺の嵐のようなチョップ連打で、「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」となぎ倒される!
見たところ、鍛えてもいない素人しかいないではないか。
恐らくこの状況を仕組んだ使徒は……雑魚どもの中に身を潜めている。
俺は油断をしない。
周囲で怯えた顔をするテニス部員たちはスルー。
OB連中をじろりと見ると、彼らも必死にそっぽを向いた。
なお、裸の女子たちは完全に我に返り、慌てて部屋の外に逃げ出していく。
いいぞいいぞ。
「あーあ、すっかり台無しじゃないか」
酒焼けした声がした。
OBたちの後ろから、のっそりと一人の中年男が現れる。
「坂又さん!」「そうだ、坂又さんがいればこんな暴漢、恐るるに足らずだ!」「シャチの坂又さんがいれば!」
「おうおう。俺に任せろ。お前らは女どもを捕まえて連れてこい。夜はまだ長いんだぞ? それと、どこかの部屋で震えてるあの腰抜け部長も連れてこい。男にしてやれ。それがときめき学園テニス部の伝統ってもんだ! がっはっはっはっは!!」
体格のいい中年男は、笑うとまるで牙のように見えるギザギザの歯をしている。
こいつも乱交パーティに興じていたようで、素っ裸なのだが……。
なるほど、腹は出ているが、全身の肉の付き方が違う。
これはテニスではない。
もっと別の何かでつけた筋肉であろう。
「おい、変態よ。俺は坂又。第十六期のときめき学園テニス部部長よ。今はな、桜の代紋を背負って仕事をしててなあ。それがどういう事か分かるか?」
「ツアーッ! 死ね、使徒!!」
「なにぃーっ!?」
凄みを効かせ、己が警察関係者であることをほのめかして相手に精神攻撃を行い、その上で叩き潰そうとでも考えたのだろう!
だが!
お前が口上を初めたということは、ファーストアタックの機会を放り投げたということ!
迂闊な男め死ぬがよい!!
飛びかかった俺のドロップキックを、坂又は必死の形相で腕をクロスさせて受け止める!
だが、流石に受けきれずによろけた。
「てめえーっ!! 人の話をちゃんと聞けやぁーっ!!」
足元のビール瓶を蹴り上げてくる。
これは、俺が着地ざまに放ったチョップで切断!
そこから坂又の足めがけてカニバサミである!
転倒したらグランドで絞め殺す!!
「ぬうおわぁっ!? こいつっ! 狂ってやがる!!」
坂又は叫びながら跳躍して回避し、なんと人間離れした動きて天井に張り付いた。
「やはり……お前、人間じゃないな? 俺の攻撃をこうも受け流すとは」
「てめえ、俺の正体を暴くために攻撃をしてたってのか!! 普通の人間だったらどうするつもりだったんだ!」
「死ねば普通の人間、死ななければ使徒!!」
「狂人かよ!? そうか! てめえが清居や入田をやった、あのお方が言ってた異分子か!! そうかそうか……!!」
坂又の目がギラギラ輝く。
「それじゃあ、手加減できねえなあ。ここにいるガキどもは後で暗示を強化しときゃあいいだろ。その中から、俺の後継者になる使徒も出てくるだろうからなあ」
坂又の体がパンプアップしてるぞ。
膨れ上がっていく。
「俺がどうしてシャチの坂又って呼ばれてるかだがぁ……シャチってのはなぁ。地上だろうが家の中だろうが泳げるんだよ!!」
畳の上に飛び込む坂又!
床を突き破り、地面に潜り込む!
「ほう、なるほど! やはり使徒は人間をやめてるな!」
俺は低く低く身構える。
どこから来る?
「う、うわあーっ!!」
「小原くん!」
小原くんが地面に引きずり込まれていくところである!
使徒め、弱いものを狙ったな!?
なお、他にもテニサーの連中が引きずり込まれて「ウグワーッ」って叫んでたりする。
「ツアーッ! 縮地移動!」
軽気功のちょっと先まで取り戻したぞ!
屋内なら一瞬で到着!
小原くんの体が全て地中に没した瞬間、俺は震脚で地面を踏み抜いた。
「ツアーッ!!」
「ウグワーッ!!」
叫びながら飛び出してきたのは坂又だ!
俺の真下にいたな?
そして小原くんがぽいっと投げ捨てられる。
再び地中に没する坂又!
今度狙うのは一年生か!
だが、そっちには実りの化身がいる……。
「ミノリー!」
「ウグワーッ!! な、なんだこいつはーっ!! 何の情報もないぞーっ!!」
やはりな!
与し易いと見て襲いかかったが、地中から出現した瞬間にセレスに引っこ抜かれた!
そいつの見た目はチンチラだが、今はゴリラ+αのパワーを持つぞ!
空中に放り投げられた坂又は、再び地面に潜るべく空をばたばたと手足で掻く!
「だが! お前が地上に降り立つことはぁーっ!! もう二度となぁーいっ!! ツアーッ!!」
俺は地面を踏みしめて跳躍した!
ロケットの如き勢いで飛来するこれは!
狙撃型シャイニングウィザード!!
超長距離の超高速飛び膝蹴りが、空中の坂又の頭をぶち抜いた!
「ウグワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!? 馬鹿な! そんな馬鹿な! 馬鹿なあああああああああ!!」
叫びとともに、坂又は爆発した。
その爆発すらも、坂又を貫通したシャイニングウィザートが穿つ!
ふっ飛ばされたのは素っ裸のテニサーOBたちばかり!
テニス部部員たちはもうみんな、事態があまりに衝撃的すぎて失神している。
振り返った俺に、「ミノリー」と言いながらセレスが駆け寄ってきた。
また定位置の肩の上に戻る。
俺の眼の前では、マスクを脱ぎ捨てた一年生と、全裸のカワイイテニス部女子が抱き合っているところだった。
良かった良かった。
NTRは爆砕されたのだ。
僅かに残る、意識があるOBたちを俺はぐるりと見回した。
「坂又の後を追いたくないならば、乱痴気騒ぎは今夜で終わりにしておくのだな……。テニス部は乱パではなく、テニスをやれ!!」
「は、はい!!」「信じられねえ……人間を超えた坂又さんが……」「あの化物オヤジを一方的に叩き潰した……」「何者なんだこいつ……」
「ネトラレブレイカーだ! よし、帰るぞ!」
俺はぶっ倒れている小坂くんを拾うと、そのまま夜の合宿所に駆け出していくのだった。
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