第142話 いざ殴り込みの三人だ!
俺と一年生で出撃だ! と思っていたら、小原くんが帰ってきたぞ。
彼女をNTRされて凹んでいる友人を励ましてきたらしい。
「その覆面……!! ジョジョ、まさか出るのか!? 今日の今日で!?」
「そうだ……!! いきなり間男を発見し、この一年生の年上彼女もまた今NTRされつつあるのだ!」
「な、なんてこった! 許せねえ! 俺にも覆面をくれ!!」
ということで……。
一年生には俺の最初の覆面、小原くんには黄金の覆面、俺は銀色の覆面を纏い、第十六宿舎へ突撃したのだった。
三猿と響は、先生が回ってきても怪しまれないようにするために残ってもらったぞ。
というか、女子たちが多い俺たちの宿舎に、他の間男が襲ってこないとも限らない。
奴らは防壁として残しておく意味もあるのだ。
「俺達も行きたいところだけどよ!」
「ジョジョが戦ってる相手の強さとか異常さはこの体でよーく分かってるぜ!」
「気をつけろよ一年! 小原くん! あいつらやべえぜ!!」
使徒と戦った三猿は体で覚えたからな。
だが、一般テニサーOBなら一年生と小原くんに任せられよう!
では、出撃!
「ときめき学園NTRブレイカーズ、ゴーッ!!」
※
放送部の仕事を終え、宿舎に向かって帰る途中の黄瀬翔子、
彼女は見た。
宿舎の上を飛翔しながら駆け抜ける、3つの覆面を!
「ひーっ、お、お、おばけ!?」
具体的には、銀色に輝くマスクが他の二人のマスクを抱え上げ、宿舎の屋上を跳び渡っているところだ。
まさしく怪異!
人間業とは思えない!
「こわあ! こわあーっ!! でもでも、夜のラジオで語るネタができちゃった! これ、盛り上がるぞぉー!」
恐怖半分、ワクワク半分。
黄瀬翔子はスキップで宿舎に帰っていくのだった。
そして、宿舎の上を掛けるマスクマンは、新たなときめき学園の怪異として知れ渡ることになる……!
※
第十六宿舎……。
隣室から、とうとう始まった乱痴気騒ぎの音が聞こえてくる。
彼はテニス部部長という立場でありながら、毎年の合宿で行われるこのイベントが嫌いだった。
いや、優れた実力を持ち、丁寧に指導をしてくれるOBの来訪はありがたい。
だが……あまりにも、代償が大き過ぎるではないか……!
女子マネージャーは、女子テニス部は、彼らに捧げる生贄のために存在しているようなものだ。
今回も、直に女子たちを選んで回ったOBが、生贄を名指しした。
その中には、今年入学した一年生とカップルになっていた彼女も入っていたのだが……。
「冗談じゃない……! 彼女たちは、OBに喰われるために入部したんじゃないぞ! みんな希望に満ちて、スポーツ強豪校のときめき学園のために、テニスでもっと上に行くために入部したんだ……! だけど、この合宿を経験しないと、次の大会で結果を残すことが難しい……! くそっ、くそーっ! どうして……どうしてこうなってしまっているんだ!!」
部長も、乱痴気騒ぎに興味が無いわけではない。
彼もまた、高校二年の普通の男子だからだ。
三年生が引退する今、部長として指名され、今その責任を負っている。
強くなるため。
ときめき学園テニス部の強さを保つため、己の代で凋落させないため……。
「だってこれ、絶対に何らかの法に反してる……! いやだ……! こんなのが明るみに出て、俺の責任になって、それで将来潰されたくない……! なのに外堀を埋められてて、この乱交パーティを開かなくちゃいけなくなっていた……! なんか怪しい薬とか、未成年なのに酒とか出回ってるし! あああああああ! 俺は! 俺はただ、テニスがしたかっただけなのに!!」
部長の悲劇は、テニス部において彼一人が強固に良識を持ち、部全体が何者かによる暗示によって狂気に陥る中、正気を保つ事ができたことであろう。
部長は飲み過ぎを理由に飲み会の場を立ち去り、今は部屋に籠もっている。
当然、未成年でありスポーツマンたるもの、一滴も呑んではいない。
「誰か……! 誰か、助けてくれ……! たすけてぇーっ!」
男子高校生の切実な叫びが、夜の合宿所に響き渡る……!
誰も彼の声は聞こえず、応えてくれるものもまた無い……はずであった。
「お前は正気なようだな」
声がした。
「ひっ!?」
窓の向こうの真っ暗な雑木林。
その前に、銀色のマスクマンが立っていた。
「第十六宿舎にて、乱交パーティによるNTRが進行している。間違いないな?」
「ひぃーっ、あ、あ、あんたは誰だ!? おばけなのか!?」
「答えろ。お前達テニス部は、ヤリサー化した大学テニサーのOBたちを迎え、NTR乱パをやっているんだな!?」
「そ……そうだ! そうなんだ! 俺はそんなのやりたくなかったんだ! なのに、毎年の伝統だからと開催させられた……! 俺は断れない! 断ったら、何もかも責任を押し付けられて潰される! そんなの嫌だ! だけど今の犯罪みたいな状況も嫌なんだ! 俺は……俺はただ、テニスがしたかっただけなのにぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「いいだろう。お前の願いを叶えてやる。全ての禍根は断ち切る! あとはお前次第だ! 行くぞ!!」
銀色の仮面が駆け寄ってくる!
ムキムキの黄金覆面と、小柄な黒い覆面も一緒だ。
不審者……いや、もうここまで来たら怪異である!!
「宴会場確認! 突っ込むぞ! ツアーッ!!」
銀の覆面が跳躍した!
回転しながらのフライングボディアタックが、障子で仕切られた宴会場に飛び込んでいく!
炸裂音!
銀の覆面のフライングボディアタックに巻き込まれて「ウグワーッ!?」と叫ぶ男たちの声!
始まってしまった!
「何が始まった!? 新しい祭りか!? 俺も想像もできない、何か違う祭りがか!? 俺が……俺が呼び込んでしまった……!! 助けてーっ!! 誰か、助けてくれーっ!!」
テニス部部長の声は、今度こそ誰も聞くものなどなく、闇夜に響き渡るのだった。
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