第140話 発見! 今まさにNTRされている少年!
黒須をオカルト研究会……オカ研の宿泊所に送り届けた。
ここの住人、みんな黒須に似てないか?
「皆様~ただいま戻りました……!」
「おおーっ、黒須殿……って、あーっ、男子とともに帰ってこられるとは!」
「ま、まさか大人の階段を登ってしまったので?」
「そのような光景を目にしました……。未知の世界です……! それと、こちらの方はなんと、あの校内を走るマスクマンの御本人……!!」
「な、なんとー!!」
「七不思議のお一人!? な、なんたること~!!」
「いかん、女子が群がってきたぞ! だが全く危うさを感じない……。なんだこいつら……!!」
「私も理解不能ですミノリー。ここは撤退しましょうミノリー」
セレスも危険信号を発している!
先生に見つからぬうちに、この宿泊所を離れたほうが良かろう。
そもそもここは、女子の宿泊所だからな……。
おや……?
それにしては妙にがらんとして静かではないか。
「他の女子たちは皆寝てしまったのか?」
「やや、それはですな」
度の強い丸メガネを掛けた女子が、顎を撫でながら応じてくれた。
何だそのアクションは。
「テニスサークルの女子たちと同じフロアなのですが、半分ほどが戻ってこないのです。こ、これはオカルトの気配……!!」
「彼女たちは男子のところに行ったのでは? ほら、男子はテニサーのOBが来てますから、それに女子たちのきれいどころが呼び出されたような」
なにぃっ。
今まさに、テニサーではなんか乱交の儀みたいなのが行われているのか!
いやいや、別にそんなことはどうでもいい。
同意の上であればNTRではないので、俺の出る幕は無いのだ。
「ではな」
「あっ、城之内くん、明日もご協力よろしくお願いします」
「えっ、明日もやるのか!? 今お前がオカ研のメンバーに俺の正体を明かしたのにまだ!?」
「お願いします……! わ、私はご覧のとおり、何かあったら自力で生還もできない脆弱さゆえ……!!」
拝まれてしまった。
こいつ相手だとどうも調子が出ないな……。
「今までに存在しない、実りの気配が全く見えない女性だからですかねミノリー」
「あの女、世界の法則の外にいない?」
「いますねミノリー」
「これがNPCってやつか……。だが、こういうサブシナリオをやっていると思わぬ伏線があったりするのだ。付き合ってやろうじゃないか。よし、いいぞ」
「ありがたや……!!」
「拝むな拝むな!!」
ということで、合宿中の夜の日課が出来てしまったのだった。
女子宿泊所を出て、仲間たちの待つ部屋へ向かう。
三猿と青菅の情報を確認した後、響が開催する『夏休みの宿題は早めに片付けよう勉強会』に参加せねばならない。
くそっ、どうして宿題なんてものが高校に入ってまであるんだ。
そんな道行く途中、一年生らしき男が不安げにスマホを眺めているのが見えた。
真夜中に、テニスコート近くで、女子宿舎が見える場所に佇んでいるとは……。
ピンと来たぞ!
「おい、そこの一年生」
「う、うわーっ! ごめんなさい!!」
いきなり謝ってきた!
これは確定である。
こういう明らかに頼りなさそうな男は、NTRされるラレ男なのだ!
「謝らなくていい。お前の悩みを当ててやろう。お前はテニス部に彼女がいる。それも……お前の雰囲気からすると上級生で、周囲からは憧れの的になっている女子と密かに付き合っている!!」
「な、な、なぜそれをーっ!?」
そういうのがパターンだからだ。
特に、宿泊所のあちこちに設置されたライトに照らされた彼の顔が、可愛い系であることから俺は確信した。
「一日目の夜に、ここで合流する約束だったんだな? だが、彼女はチャットソフトでの連絡に応じず、ましてや電話にも出ない……!」
「ぼ、僕の心を読んでるんですか……!? あなたは一体……!!」
「俺は……そうだな」
ポケットから覆面を取り出し、被った。
ライトを浴びて銀色に輝くぞ!
「う、うわーっ!! な、七不思議の一つ! 放課後に廊下を走るマスクマン!!」
「いかにも。またの名を……ネトラレブレイカー!! 少年。お前の彼女は今……NTRされているぞ!!」
「な、な、なんだってー!?」
一年生に衝撃走る!!
「な、何を証拠にそんな恐ろしいことを……! 彼女に限って、そんなことありえないですよ!!」
「そうかな? それはお前の願望ではないのか? 聞かせてみろ、お前と彼女の馴れ初めと、そして最近ちょっとだけギクシャクしたりしてて、この合宿をきっかけにして仲直りし、あわよくばひと夏の体験をしたいなと思っている、お前の胸の内を!!」
「ああ~っ!! ぼ、僕の心が読まれている!? こ、この人は一体!? 本当に七不思議の怪異なのか!?」
「怪異呼ばわりされてますよミノリー。ま、大して違いませんもんねミノリー」
「ええいパートナーに向かって怪異とは失礼な女神だ」
NTRが行われている現場があれば、すぐさま乗り込んで制圧したいところだが……。
昼間の情報収集では、男子テニサーとOBがいる場所の見当がついていない。
さらに、向こうから懐中電灯を持った教師が見回りに歩いてくる。
見つかってしまえば、俺はともかく、この一年生がまずいだろう。
「移動するぞ! お前が走っては足手まといだ! ツアーッ!!」
「うわーっ! 僕を抱えてっ!?」
俺は一年生を小脇に抱えると、全力でダッシュした。
「あっ、こらーっ! 外出していい時間は終わってるぞ! 早く宿舎にもどりなさーい!! なんて速度だ! 全く追いつけない!!」
後ろから教師の声が聞こえてくる。
危ないところだった。
さて、今まさにNTRの渦中に陥った少年を連れて、我が宿舎に帰還である。
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