第139話 オカルト女と夜の探索だ!
「なにっ!! ときめき学園オカルト部だと!?」
「フ、フヒヒ……ま、まだ同好会なんですけどね。私達も合宿に来ていたんです……。あなた、新応援団の団長の城之内くんですよね……? 私、オカルト研究会の黒須聖美と言います……。よ、よろしくお願いしますね」
メカクレ女子の黒須は、前髪の間から熱視線を送ってきて、なんか俺の手をぎゅっと握ってくるのだが!?
「おいセレス、これはどういうフラグだ……!?」
「あれえ!? 全然実りの気配ではありませんよミノリー!?」
セレスも混乱している!
積極的なアプローチに見えるが、どうやらこれは違うぞ!
「ふ、ふふふふ、捕まえました……! 私、見てたんですよ……! あなた、廊下を走る謎のマスクマンの正体ですよね……? 廊下でマスクを被った城之内くんが、なんだかすごい技を使って保健室の扉を突き破ってました……! 私、城之内くんの秘密を知っているんですぅ……!!」
「なっ、なにぃーっ!!」
俺に走る衝撃!
誰も知らぬ秘密を知ってしまったようだな。
「黒須、何が狙いだ……!?」
「ふふふふふ……。オカルト研究会が合宿でやることと言ったら……決まっていますからねえ」
「それはまさか……!」
「そう……!! 夜の、オカルト探索ですよぉ……! 城之内くん、手伝ってください……!!」
くそー、引っ込み思案っぽい外見なのに凄くグイグイ来るぞ!
「ふふふふふふ……! 七不思議の一つである城之内くんと、一緒に行動しちゃう……! 合宿に来て良かったぁ……!」
そう言えば俺が七不思議になっている話があった!
それでテンションが上がっているのか!
「いいだろう。だが、俺からも条件がある。こいつを手伝ったら、オカルト研究会も応援団の活動をフォローしてもらいたい」
「分かったわ……。だ、誰かと約束するの初めてかも知れない……」
即座に返答した!
では交渉成立である。
応援団の合宿内容である、基礎体力の向上を終え、夕食も終わり……。
自由時間となった。
消灯時間までは何をやってもいいのだ。
そう、何をやっても!
学生たちは、夏休みで学外で夏の夜という、開放的にならなければおかしい条件が多重になった中、羽目を外してしまうことであろう!
その中にNTRが潜んではいまいか!?
俺はこれを調査するのである。
まあ、オカルト探索とやらを手伝うついでなのだが。
「そもそも黒須にはNTRの気配がない……。というか相手すらいないではないか。うーむ」
「たまには勇者もNTR爆砕の思考から離れてゆったりしてもいいのではないですかミノリー」
それもそうか。
今は詳しい調査を、三猿と青菅がやってくれているしな。
俺はほどほどにオカルト探索を手伝いつつ、ついででNTRがいたら爆砕かな~というそんなノリでよかろう。
「勇者は指導者の立場なのですから、どーんと構えて仲間が情報を持ってくるのを待つといいのですミノリー。今回はパルメディアと違って、自ら考えて動いてくれる仲間がいるのですよミノリー」
「確かに……。パルメディアは仲間はいたが基本ワンマンだったからな……!」
待ち合わせ場所に先に来ていた黒須が、セレスと喋っている俺を見てわなわなと震える。
「はっ……!? じょ、城之内くん……! 一体何と会話しているのですか!? 見えないところと喋っている……。ま、ま、まさか背後霊と会話を……?」
「あ、悪い悪い。こいつは俺の相棒のセレスだ」
「ミノリー」
肩の上に突如チンチラが現れたので、黒須は腰を抜かさんばかりに驚いた。
「あひぃ~」
「オカルト研究会がチンチラ出現程度で腰を抜かしてどうするんだ」
「い、いえ、心の準備が無かったので……。ふ、ふ、ふひひひひ、やはり城之内くんはオカルトに愛された人……! あなたを選んだ私の目は正しかった……! じゃあ、行きましょう……。そしてあの……」
「なんだ?」
「セレスさんにちょっと、触らせてもらっても……?」
ということで。
黒須がセレスをもふもふナデナデしつつ、俺達は夜のテニスコートなどを練り歩いているのである。
「ああ、なんという素晴らしい手触り……。心が洗われます……」
「ミノリー」
「それはいいんだが、オカルトはいいのか? 俺は俺で、テニサーを調査したいところだったから助かるが……」
見た感じ、テニスコートには動きがない。
テニサーの連中は宿舎に籠もって、何かやっているのではないか。
「……城之内くん、このテニスコートには夜な夜な、全国選抜高校テニス大会優勝を目指して練習に励みながら、夢破れて命を絶った女性の霊が出るそうなんです」
「なんと、ここがオカルトポイントだったのか! 分からないものだな……」
「フ、フ、フ、実はそうなんです。何か変化があるはずです……。目で見えるものも、耳で聞こえるものも、逃してはいけません……!」
俺と黒須で、そろりそろりとテニスコートを歩く。
本当に霊とやらがいるのか……?
だとしたら、どこにいるのか。
むっ!?
コートの後ろにある茂みが動いているではないか。
風などない。
だというのに、ガサガサと茂みが揺れ続けている。
「声が……声が聞こえます、城之内くん……!」
「いきなり大当たりというわけか。黒須、持ってるな」
「ふ、ふふふふふふ……」
不敵に笑う黒須とともに、茂みに近づく。
確かにこれは、女の声。
霊になったという女は、茂みの中にいるのか……!!
「いやー、これは違いますねミノリー」
セレスがなんか言っているが、気にせずに覗き込んだ。
そうしたら……。
テニス部の男女が、茂みで叡智に励んでいるではないか。
「あーっ、昼間にみんなが練習していたコートを見ながらするのってやっぱり燃えるーっ!」
「ぐおおお、も、もう限界です先輩……!」
「だめよ! もうちょっと頑張って! 私ももうすぐなんだから!」
これは、先輩女子が後輩男子を誘い、夏の夜の逢瀬を楽しんでいるやつではないか。
「あひぃー」
蚊が鳴くような声を出して、へたりこむ黒須。
「黒須、これは外れだ。カップルを邪魔しない内に去るぞ」
「じょ、じょ、城之内くんは平気……なんですか……!? こんな……こんな……外でなんて……ひぃ~」
「NTRじゃなかったからな。何の問題もない。今夜はこれで終わりか? よし、何故か黒須の腰が抜けているようだから、背負って宿舎まで連れて行ってやるからな……」
今のところは、合宿は平和なようだ。
NTRは人の目を盗み、密かに進行するものである。
少し歩き回った程度では、尻尾を掴むことが難しいな……。
「ああ~、七不思議の一つにおんぶされています……!」
背中でもぞもぞするのはやめるのだ黒須。
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




