第14話 仲間をレベルアップさせよ!
「俺が道を切り開いた! ついてこい!」
「は、はいぃ! 私、全く戦闘力がないんでよろしくお願いしますー!」
「魔法医だもんなあ。おっと!」
「素手で飛び出してくるとは馬鹿なやつ! 死ねえ!! ウワーッ!! 攻撃を腕で受け止めた!?」
「防御スキルを取得しておいた甲斐があった。ツアーッ!」
「ウグワーッ!!」
地獄突きで山賊一人を無力化!
チエリを引き連れて、夜の村を走る。
辺りには松明を持った影が幾つか。
どれも山賊だと考えて間違いないだろう。
「闇の中、格闘戦だとやはり間合いが狭いな……。チエリを守りきれなそうな気がする」
「ひい、はあ、ま、待ってくださあい!」
バタバタとチエリが追いかけてくる。
運動しなれていない感が半端ない!
彼女は、失敗の確率が半々な回復魔法一つしか使えない、いわゆる落ちこぼれの魔法医見習いだ。
だが。
そんな落ちこぼれなことある?
「チエリ、こっちだ! 物陰でちょっと作戦会議をするぞ!」
「はっ、はいぃ! えっ、物陰に!? ジョナサンさん、それはもしかして……」
「ノーノー! エッチな意味合いはない。あまり叫ぶと見つかるからな。こっちだこっち」
「はいぃ……」
一緒に家の影に隠れる俺とチエリである。
ここで何をするかと言うと……。
「セレス、俺たちはパーティになってる?」
『パーティというのは不明ですが……ステータス画面にチエリが追加されていますよ』
「ほんとに!?」
「うわっ、誰だかわからない人の声が聞こえます!!」
俺とパーティを組むと、豊穣の女神セレスの声が聞こえるようになるようだ。
「いい声だろ? 紹介しよう。セレスだ」
『女神ですよ。崇めてもいいのですよ』
「ひぃー、ま、まさか伝説に謳われていた女神セレス様!? ははーっ」
そんな茶番を行いつつ……俺はチエリのステータスを見る。
ふむふむ、レベルは7。
スキル欄には、ヒーリング(偽)とある。
なるほど、ランダムで行使に失敗するヒーリングか。
必死に魔法医の修行をしても、これしか身につかなかったのはおかしい。
訓練や勉強は、少しずつだが経験点が入っているわけだからな。
レベルだって7だ。
スキルポイントが溜まっているはず……。
「12ポイント溜まってるじゃないか!」
「えっえっ!? なんですか!?」
「本人にはスキルポイントが自覚できないのか。これ、レベルアップした時に自分の適性とマッチしていると、偶然そのスキルを覚えるとかそういうシステムみたいだな……」
チエリの習得できるスキルをチェックする。
なるほど、魔法医の適性がある。
彼女は単純に、ヒールを自動習得できないタイプだっただけなのだ。
俺はポイントを割り振って、魔法医スキルを取得させた。
チエリがヒールを覚えた。
魔法医スキルを2にアップ。
チエリがキュアを覚えた。
「チエリ、戦闘力があったら戦ってみたいとか思う?」
「も、もし可能だったら、身を守る位は……」
「よし。では魔法医補助を上げて、ショックを獲得。チエリ、ちょっとここにある桶に手を当ててみて」
「は、はい?」
「ショック、と発音」
「しょ、ショック!」
その瞬間、チエリの手のひらから衝撃が放たれて、桶が吹っ飛んだ。
「あひーっ」
「やっぱり。これ、心臓が止まった相手にショックを与えてマッサージする魔法なんだが、健康な相手には衝撃を加えることで攻撃に転用できる」
直接戦闘力としては強くないが、見たところ魔力の消費も少なく、接触さえできれば鎧越しだろうが相手の腕だろうが、そこを伝って本体に衝撃を加えられる。
「な、なんですかこれー!」
「訓練の途中で心臓が止まっちゃう騎士見たことない? そいつの心臓に直接ショックを加えて動かす魔法。だけど、応用すると攻撃にも使えるっぽいな。チエリ、山賊に触れたらショックって唱えてみ。本来はこれ、言葉だけだと発動せず、使う意志が無いとダメなやつだから」
「は、はい! なんでしょう……なんだか突然、私の中に魔法の力が溢れ出してきたような……」
『それはもう、勇者があなたを仲間と認めましたからね。感謝するのですよチエリ。あなたの中に眠っていた才能を、彼が引き出したのです。あなたがこれまでやって来た努力は無駄ではなかったのです』
「な、なんですってー! わ、わ、私の努力が……無駄じゃなかった……!」
わなわな震えるチエリなのだった。
なお、そんな風に衝撃を受けたり感激したりしている暇はない。
「ここにいたぞ!!」
山賊が俺達を見つけ、詰めかけてくる。
「チエリ! 俺は基本的に敵を一人ずつしか相手にできない! 自分の身は最低限、自分で守るんだ!」
「は、はいぃ!!」
「ぐへへへ、こんな小娘に何ができるんだよ……」
武器を装備していないチエリに、舐めきった様子で山賊が掴みかかってくる。
チエリはあえて肩を掴まれ、山賊の胸に手を当てて……。
「ショック!」
「ウグワーッ!!」
山賊はビクビクビクンッ!とのけぞり痙攣すると、地面に倒れてのたうち回った。
「な、なにぃーっ!?」
虚を突かれる山賊!
そこに俺が抜いた刃が滑り込む。
「ファルコンスラッシュ!」
「ウグワーッ!!」
顔面を切り裂かれて、山賊がその場にうずくまった。
「ジョナサンさん、剣も使えるんですか!?」
「俺は騎士だから、本来は剣がメインのはずなんだよ」
効率が悪くて、いまいちスキルポイントを振ってないけどな!
そしてそこへ……。
「ドルァーッ!!」
農家の杭打ち用ハンマーが振り回され、山賊の一人が「ウグワーッ!!」と吹っ飛んでいった。
ダイオンが駆けつけてくる。
ハンマーに槍、農作業用フォークを装備して、ハリネズミのような武装っぷりだ。
「悪い! 遅くなった! だが、俺が来たからには反撃開始だぞ!」
ツヤツヤしているな、ダイオン!
賢者モードになったようで、きれいなダイオンになっている。
よし、ジダチ隊で山賊を全滅させるのだ!
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