第136話 合宿に行くぞ!
終業式が終わり……。
「うおおおおおおおお」
「夏休みだあああああああ」
「去年までの無気力で甲子園を家でぼーっと見るだけの夏休みじゃねええええええ」
三猿が飛び出していく!
この世界の夏は、なんというか明らかに昨今の日本の暑さとは違う。
最高気温30度くらいで、朝や夕方は二十度半ばまで下がる過ごしやすい夏だ。
スマホはあるが、時代的には1990年代の気候であろう……。
「今日も暑いねえ……。半日で帰れるのはホント嬉しいけど……。城之内くん、全然暑くなさそうだね?」
帰り道の途中、隣に並んだ響が不思議そうである。
赤佐なんか暑くて暑くて、胸元をパタパタやっている。
男をそうとは知らず誘惑する仕草だ。
「俺はもっと凄まじい夏を知っているからな……」
最高気温40度になる現実世界の夏だ。
あんなもんがこっちになくて本当に良かった。
青春を楽しめる余地がある暑さってのは本当に大事なのだ。
さて、一旦家に帰った俺達。
明日の合宿の打ち合わせのため、響の家に集まることになる。
「なんと明日は、厚木先生が運転するマイクロバスを僕らが貸切して、合宿する青少年の家まで向かうんだ」
「なんだって。ゴージャス過ぎる……」
なんでも、ときめき学園はスポーツの名門校でもあるらしい。
幾つもの部活がインターハイやらの高校生全国大会に出場しており、昨年はバスケットボールが全国優勝を果たした。
校長は我が世の春を叫び、このトロフィーを後生大事に校長室に飾っているらしい。
なるほどなあ……。
それで、部活動関係のフォローが手厚いのか。
なお、そのために生徒を通わせている父兄には、夏季合宿の協力金みたいなのが求められるらしい。
で、取られるなら子供を参加させよう! ということで……。
この合宿、実質林間学校みたいな感じで、外部の夏期講習に通ってる者を除いた、多くの生徒が集まっているのだ!!
こんな超大規模な合宿見たことがないぞ!
「文化部も合宿があるのだろうか」
「あるぞ! それを見越して、学園でも近隣の民宿を貸切にしてあるんだ」
厚木先生が説明してくれた後、マイクロバス内部に設置されているディスプレイから映像をスタートさせた。
あっ、これは合宿のしおりを読み上げる動画ではないか。
放送部の可愛い女子が、綺麗な声でしおりを読み上げている。
あれほどの美貌……。
恐らくはNTRの毒牙が迫っていることだろう。
「ジョジョったら黄瀬さんに見入ってる! ああいう子が好きなの?」
「ばっか青菅! ジョジョは真面目だから、合宿のしおりを一言一句聞き逃さないようにしてるんだよ!」
「そうだぞ! ジョジョは今まで女っ気が全然ねえからな……」
「モテるのに、女なんかに目もくれずネトラレとか言うのを叩き潰してるんだ!」
「ふーん……? 年頃の男子はエッチに興味がある方が健全だと思うけどなー。ね、真美奈?」
「わっ、私に振らないで下さい!」
「あれっ!? 黄瀬さんの動画が終わったら、明らかにこれは……」
こ、これは!!
選曲画面!?
厚木先生が運転しながら、ミラー越しににやりと笑った。
「一曲歌って行こうじゃないか!!」
「し、車内カラオケだーっ!!」
こうして俺達は、大いに歌った。
響と赤佐が照れながら、男女で一緒に歌うボカロ曲などをやり、ミザルがちょっと古いロック、キカザルがHIPHOP、イワザルがプロ野球応援歌、青菅は流行りのアニソン。
そして俺は……。
「なんだこの曲!?」
「知らない曲だ!」
「だけどなんか熱い曲だぞ!」
「フフフ……まさかこの曲が入っているとはな。超越者め、味な真似をしてくれる」
「何回か聞きましたねミノリー」
そう!
流れ始める勇ましい歌は、叡智系同人RPG異世界NTRパルメディアの挿入歌、『幾多のNTRを経て戦士は戦いの中折れぬ』である!
戦いの中と中折れでダブルミーニングなんだよな。だれうま。
何故かこれだけ男臭い歌で、しかもボーカルが男なんだよな……。
超越者の趣味だったんだろう。
これを俺はしっかりと歌い上げた。
NTRに通ずるものを持った、響や赤佐、青菅や厚木先生には大いに受けた。
三猿がきょとーんとしていた。
「しかしあの歌が入っていたということは、この世界はやはり超越者に連なる何者かが作り上げた世界で間違いのだなあ。確証を得てしまった」
「この合宿とやらはターニングポイントになりそうですねミノリー」
まったくだ。
幾つものイベントが並行で発生する可能性がある。
テストと言うNTR禁止の期間を経たからこそ、抑圧されていた間男たちは大いにハッスルする可能性がある。
休む暇などないぞ……!
三猿にも、情報収集のために大いに活躍してもらう必要があるだろう。
手始めに、放送部の黄瀬という女だが……。
「黄瀬、いいな。応援団の応援に合わせて、選手の名を読み上げて欲しい……」
厚木先生がぶつぶつ言っている。
応援団が復活し、自分も問題ごとから解放された今、欲が出てきているのだろう。
いいことだいいことだ、と俺が頷いていると……。
横合いをもう一台のマイクロバスが抜けていった。
そこには男子ラグビー部の生徒たちが乗っており……。
「美夜子先生ーっ!」「先生ラブッスー!」「今日もきれーッスー!!」
なんだなんだ!?
厚木先生にラブコールを送るむくつけき男どもの姿が!!
「スケベ男どもー! 散れ、散れーっ!」
青菅が窓から吠えるが、むきむきラガーマンたちは「うるせー小娘ー!!」「俺達はタッパとケツがデカい女しか相手にしないんだよ!」「もう数パウンド増量して来やがれ!!」「やせっぽちは去れー!!」
青菅が一蹴された!
唖然とする青菅。
すぐに真っ赤になって怒った。
「むきーっ!! く、く、く、悔しい~っ!!」
「うむ。あいつら……危険だな。厚木先生のフラグは蹴散らしたと思ったが……。人妻にして美人熱血体育教師……! これほどの属性山盛りのヒロインを、世間が放って置くはずはなかった。黄瀬の身辺調査と、厚木先生の防衛。二本立てで行くか……!!」
「な、なんだかわかんないけどジョジョが燃えてる~っ! あの男どもぶっ飛ばせるならなんでも協力するからね!」
こうして暑く熱い、ときめき学園夏の合宿がスタートするのである!
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