第129話 第二の間男! 夜の公園の決戦!
「来ましたよミノリー」
セレスの声が合図だった。
暗くなった公園は、街灯だけが頼りである。
一寸先は闇のような状況の中、懐中電灯を持った何者かがやって来る。
荒い息遣いだ。
ぺたぺたと石畳の上を歩く音。
まるで裸足じゃないか。
文明社会で、外を歩くには似つかわしくない。
つまり……ご本人様到着というわけだ。
「そら、歩け歩け。本当に、犬を躾けなくちゃ行けないから大変だなあ。お前のそのいい格好を彼が見たら、なんて言うだろうなあ……」
「や、やめてください先生……!」
「先生じゃない、御主人様だろうが! それに、犬は口を利かないだろうが!」
ぴしゃっと叩く音。
「きゃうんっ!! わんわんっ!」
女の声が、悲鳴を噛み殺しながら必死に犬の鳴き真似をする。
……というのが近づいてきたので、三猿がもじもじし始めた。
「なんだか凄くえっちじゃないか?」
「いいのかこれ? いいのか? 現実か? AVじゃないのか?」
「俺等が喧嘩ばっかしてる間に、世の中はこんなに進んでたんだ……」
「何をショック受けてるんだ。俺は行くぞ」
黄金の覆面を被り、俺は草むらの中から立ち上がろうとする。
すると、ミザルが俺を止めた。
「待てよジョジョ。ここは俺達にやらせろ。入田だろ? 前々からあいつ気に入らなかったんだ。男にばかり厳しくて、女には色目を使いやがって……!」
「ミザルは入学時、ちょっといいなーって思ってた女子が入田のことかっこいいーって言ってたのを聞いてグレたんだ」
キカザルが語る、ミザルの悲しき過去!
「そっかー、じゃあ行ってきていいよ。だが、これだけは守れ。防御を固めろ。さもないと死ぬぞ。あいつは人間とは違う」
きょとんとする三猿。
だが、俺の言うことが冗談ではないというのは分かったのだろう。
頷くと、
「おらあーっ!!」
「AVじゃねえんだぞーっ!!」
「ウワーッ!! 裸の女子が首輪だけつけて四つん這いで歩いてる!!」
と飛び出していった!
即座に裸の青菅に目を取られて戦闘不能になったな!?
「なあんだ貴様らはーっ!! 俺は今、気が立ってるんだ! ちょうどいい! 憂さ晴らしさせてもらう! ホアアーッ!!」
夜の公園に響き渡る怪鳥音!!
「せ、先生やめてーっ!!」
青菅の叫びも虚しく、街灯が照らし出すシルエットが複雑怪奇な動きをし、三猿を打ちのめす!
ムチのようにしなる腕が、足が、不良どもに何もさせずに叩き潰すのだ!
「ウグワーッ!? なんだこりゃーっ!?」
「ぱ、パンチが通じねえ! ゴムみたいだ! ウグワーッ!!」
「バットが通じねえーっ!! ウグワーッ!!」
つまりゴム人間的な能力で、攻撃を吸収、無効化してしまうわけだな。
俺が生徒指導室で浴びせた浸透勁でも、仕留められないはずだ。
ムチのように伸ばし、しならせた腕で三猿を弾き飛ばした入田が、ニヤニヤ笑っている。
なるほど。
生半可な打撃では奴に通じまい。
では、生半可ではない打撃を通じさせるしか無い。
俺はゆっくりと光の中に歩み出た。
「なんだぁ? 今日は邪魔者が多いなあ。俺とこいつの蜜月を見せつける相手がいるのは嬉しいが……なっ!?」
光に照らし出される、黄金のマスク!!
そしてブレザー制服姿の俺!
「お前っ、お前は、城之内!? どうしてここが!? さっきの雑魚どももお前がけしかけたのか!?」
「俺の同志が、敵の強さをイマイチ分かっていないんでな。体験してもらったところだ」
「随分と余裕だな……! ここは学園ではない。俺は真の力を隠しておく必要も無いんだぞ! いいか? 俺にはお前の拳法は通じない!! 俺を、府城と同じようにできると思ったら大間違いだ!」
入田の意識が完全に俺に向く。
その間、セレスが「ミノリー!」とチョロチョローっと走った。
青菅の首輪に繋がったリードを持って、
「こっちですよミノリー」
「えっ!? 喋るチンチラ!?」
「なにっ!? 伏兵!? ホアァーッ!!」
伸びる拳がセレスに叩きつけられる!
だが、チンチラの見た目なだけで、中身はパンクラチオン無双の実りの化身である。
チンチラのちっちゃい手が、ゴムの拳をペチっと叩き落とした。
「なにぃーっ!?」
衝撃だろう衝撃だろう。
そいつ、ゴリラみたいなパワーしてるからな。
今みたいな伸びるだけのテレフォンパンチは通じないぞ。
俺もまた、入田がセレスに気を取られている間に間合いに入り込んでいる。
まだこの肉体を乗りこなしきれていないから、縮地までは使えないが……軽気功で相手の気を呑み、間合いを操ることはできるようになってきたぞ。
現実世界で社会人をやっていた時に、勘が随分鈍ったな。
こういう強者との戦いを繰り返して取り戻していかねばな。
「くっ! 離れろ!!」
ムチのようにしなる、横殴りの打撃!
鞭打という、痛みを与えることに特化した一撃だ!
俺はこれの超高速になる先端を、劈掛掌で叩き落とす!
これもまた、肉体そのものをムチとして振り下ろす攻撃だ!
超常の力を用いてムチのようになった攻撃と、技術と鍛錬の粋を詰め込んでムチとなった攻撃のぶつかり合い!!
結果、パァンッ!!という破裂音とともに入田の攻撃が弾け飛んだ。
「ウグワーッ!?」
伸び切った腕を弾かれて、のけぞる入田!
そこに既に俺が飛び込んでいるのだ!
「ツアーッ!! ゴムをも断つ……モンゴリアンチョップ!!」
両肩に打撃を叩き込み、ゴムの肉体をひしゃげさせる!
「ウグワーッ!! だ、だが! 俺に打撃など!!」
「ツアーッ!! モンゴリアンチョップ! ツアーッ!! モンゴリアンチョップ! ツアーッ!! モンゴリアンチョップ!!」
「ウグワワワワーッ!? き、貴様ーッ!! まさか、ゴムを伸ばし続けることで疲労させて千切る気か!? 正気ではない! やめろ! やめろーっ!!」
必死に暴れる入田! だが!
連続モンゴリアンチョップの圧力でひしゃげた肉体が、言うことを聞かない!
「に、人間の形じゃねえ!」
「化物だ!!」
三猿、お分かりいただけただろうか。
こういうのを相手にしなければならないので、素人が戦いを挑むのは危険なのだぞ。
俺もまた、人間の力だけでこの化物を倒さねばならない。
これはなかなか大変なのだ!
暴れる入田の手足が公園の石畳を穿ち、木々を薙ぎ払い、遊具をひしゃげさせる!
俺の体にも何発も当たる!
だが、それはモンゴリアンチョップを止める理由にはならないのだ!
生半可でない打撃というものを教えてやろう!
敵が死ぬまで続けるのが生半可ではない打撃だ!!
「ツアーッ!! 何回目か分からないモンゴリアンチョップ! 死ねーっ!!」
「ウグワーッ! や、や、やめろーっ!! 俺が、俺がどうしてこんなところでーっ!! 無敵の力を授かったのに! 生徒指導は割と真面目にやったりもしてたのに! ちょっと可愛い女子生徒をつまみ食いして、承認欲求を満たすために裏SNSで調教の様子を流しまくってただけなのに! なぜーっ!!」
「全部ギルティだツアーッ!!」
マシンガンチョップが入田を襲う!
ゴムの体が打撃を吸収する前に、ひたすら超高速のチョップが叩き込まれるのである!
たまーに浸透勁の乗ったモンゴリアンチョップを混ぜ込んである。
「ウグワアアアアアアアアッ!!」
ついに、入田のゴムボディが衝撃吸収の限界を迎えた。
一瞬で大きく膨張したかと思ったら……パーンッ!! と音を立てて破裂、粉々になってしまったのだった。
二人目の間男、撃破だ!
思った以上に人間辞めてたな。
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