第127話 生徒指導室の心理戦(物理)だ!
翌日。
俺は生徒指導室に呼ばれていた。
なるほど、二年生の生徒指導係の教師がこいつか。
入田正宗。
まだ若い男で、整髪料でしっかり髪を固め、スーツもビシッと着こなした清潔感のある男だ。
顔つきは冷静沈着そうで、黒縁の眼鏡を掛けている。
こう見えて、男子からは鬼の生活指導と恐れられ、女子には隠れファンがいるという噂だが……。
「城之内。お前がなぜ呼ばれたか分かっているな?」
「無論」
俺は部屋のソファに腰掛け、両膝の上に置いた手を組み合わせて頷いた。
「あの覆面を被った女子トイレ侵入犯、お前だろう。一体なぜあんな事をした? ハラスメント行為は大いに内申点を下げることになるぞ。分かっているんだろうな?」
「ほう……あれが俺だとどう断定した?」
「お前、その言葉遣いは……! クラスで覆面をかぶって他の生徒に暴力を加えたのを一部の生徒が目撃している!」
「ああ、そちらか。お前が今、SNSに痴態を流させて楽しんでいる女子生徒のスマホから、俺の声が漏れ聞こえ、これと授業中に確認した俺の声紋を照合した結果、あれが俺だと断定したのかと思ったが?」
「な、なにっ!? いや、普通に覆面……」
入田が目を見開き、二の句を告げなくなる。
図星だったか!!
そう。
三猿を使って暴いた、第二の間男の正体。
その疑惑が最も高いのが、この入田だった。
青菅の友達以上恋人未満であった男は些細な理由で生徒指導室に呼ばれ、スマホを没収された。
そこから二人の情報を取り出したのであろう。
この五年間、かの間男は女子の弱みを握って言うことを聞かせ、結果的にカップルは破局している。
生徒指導担当であれば、彼らの個人情報にも手出しができる。
納得の正体である。
キカザルの噂、ミザルのネットストーキング、イワザルが野球好きの教師から行った裏取りによって、間男の正体が入田であることはほぼ確定している。
最後の証拠を掴むため、俺は奴にカマかけを行ったというわけだ。
「破壊したあの玩具からは指紋が取れてな。それを今のお前の指紋と照合してもいい」
「ば、バカな! あれは俺の手は触れていない! 指紋など取れるはずが……」
「馬脚を現したな! 貴様が青菅希美を嵌め、裏SNSにて五年間に渡って女子生徒のあられもない叡智な写真を流出したのだという証拠は、こちらも掴んでいるのだ!!」
青ざめて立ち上がる入田!
どうやら攻守逆転のようだな!!
俺をただの覆面好きな生徒だと思って生徒指導室に入れたのが貴様の敗因だ!!
「お、お前ーっ!! な、内申書は覚悟しておくことだな!? お前の親を呼び、糾弾してやる! そうだ! お前は退学だ! お前のような不良行為を働く生徒を、学園は許してはおかない!!」
「いいとも。だが……貴様に次があるかな!?」
俺はポケットから取り出した覆面を被る!
「な、なにぃーっ!!」
「ツアーッ!!」
先制の崩拳!!
不良相手に放つと死ぬかもしれない威力の一撃なのだが、間男ならば問題なかろう!
死ぬが良い。
「ぬうおおおおおーっ!!」
「むーっ! 腕をクロスして俺の崩拳をガードできるとは……。ゴムを殴ったような感覚……さては人間の間男ではないな? 黒幕によって力を授けられ、使徒と化しているとみえる」
「ただの中段突きがまるでトラックの衝突のような威力を発揮するだと!? ありえない……! お前は……お前はまさか……!! 若い同志であった府城が突然連絡を途絶し、あいつの標的であった娘が自由になった。それはまさか、まさか……!!」
「使徒は生かしておかぬものでな!! ツアーッ!! 密着からの寸勁……浸透!!」
「ウグワーッ!? ま、守りが効かぬーっ!!」
今度こそ、ゴムが弾き飛ばされたような勢いで吹っ飛ぶ入田。
壁面の本棚が粉砕され、本が飛び散る。
ゴムの如き守り、弱点は浸透勁か!!
だが、自由に吹っ飛べるようならば衝撃を殺されてしまう。
ここは一時的に休戦状態を作り出し、対策を練るか!
「クソーッ!! 俺が外に出てお前の暴力を訴えれば、お前は終わりだぞ城之内!! この世界はこんな暴力が許されるようにできてない!」
「その通りだ!! ただし、対象は間男を除くのだ! ツアーッ!!」
俺のニールキックが入田に炸裂した。
「ウグワーッ!!」
窓ガラスを破って吹っ飛んでいく入田!
このまま地面に落下すれば、常人なら立ち上がれないほどのダメージを受けることだろう!
だが!
奴は中庭に叩きつけられながら、バウンドしてすっくと立ち上がった。
俺を睨みつけて、学外へと逃げていく。
外部から俺をネットなどを使って攻撃するつもりだろう。
だが……奴の言葉は全て、録音済みだ。
これを男子裏SNSに流す……。
これははまさに、知略を尽くした頭脳戦!!
頭脳と頭脳をぶつけ合うフェイズが一段落したら、肉弾戦だ。
覆面をしまって生徒指導室を出てくると、三猿が出迎えてくれた。
「ジョジョ! 無事だったのか!?」
「先輩でよ、入田をボコそうとしたら逆にボコボコにされて再起不能にされた奴がいんだよ」
「あいつ、理由のわからない技をつかうらしいぜ。それをどうやってやったんだ……!?」
「動揺を誘い、動揺している隙に致命的な打撃を連続で叩き込んだ。なお、致命打は与えられなかったが奴の体質のヒントを掴んだので、これから対策を練り上げる」
おおおおお、とどよめく三猿。
「さ、流石だぜジョジョ……」
「俺達にできないことをさらっとやってみせる」
「痺れるぜ……憧れるぜ……」
「まあ待て。まだ終わっていない。奴の反撃が始まるだろう。だが、それは奴が明日を迎えられればの話だ。強いフラストレーションを受けた間男である入田は、ストレス解消を目論んで新たな行動に出る。今、裏SNSは入田の言葉の録音で話題が持ちきりになっているからな。これを塗り替える意味でも、叡智なことを青菅に要求するだろう。つまり……入田自身が出てくることになる」
「そこまで読んでるのか……!?」
「底知れねえ男だ」
「野球で言えばピッチャーとバッターの二刀流だぜ」
生徒指導室を舞台にした心理戦は、俺が勝利を収めた。
次は拳を使った戦いである。
「今夜、入田を仕留めるぞ。全員、早急に情報収集してくれ! 奴が行きそうなお気に入りNTRスポットを探すんだ! そこに必ず、奴は来る!!」
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