第122話 おびき寄せろ、三人の不良!
「サングラスに、マスクに、ヘッドホン……この三人組が不良のリーダー格か」
「ほ、本当にやるのかい、城之内くん!」
昼休みのことだ。
早速行動に移した俺を、心配げに響と赤佐が追ってくる。
うむ、赤佐は一緒に行動していたほうが、NTRされる心配も少なかろう。
響から聞き出した、不良のリーダー三人を探す俺なのだ。
「学園を探ろうとするやつを、力で黙らせる。そしてそれをヒロインに見せつけ、ヒロインが身を委ねることを条件に主人公を解放、そこからのNTR……!! 王道の流れだ。つまり、奴らは最も容易く発見できる間男であると言えよう」
「何を言ってるんだか分からないよ城之内くん!! いや、でも君が凄くやる気だってことだけは分かる」
「あっくん、彼を信じましょう。だって彼って凄く強いでしょ」
「そ、それはそうだけど……」
「勇者よ! あの軟弱男子の連れている女子が、勇者に対して感情を向けてきていますよミノリー」
「なにっ、それはまずい! 俺が間男になってしまう! 同時に行動するのは危険だな……。かと言って、放置するのも危ない。よし、放課後はすぐに帰らせよう」
そういうことになった。
赤佐真美奈を担当していた間男は滅ぼした。
当分、彼女が狙われることはあるまい。
「さて……惣菜パン争奪戦か……。いわゆるお約束というやつだな……」
「城之内くん、パン派なのかい?」
「ああ。どうやら本人は食費を半分にして、残りを小遣いとして本を買っていたようだが……俺は全て食費にする! ツアーッ!!」
人混みの中に飛び込む!
「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」
立ちふさがるパン派の男たちを柔拳の受け流しでかき分け、俺はコロッケパンとマヨソーセージパンをゲットした。
こういうのでいいんだ、こういうので。
飲み物は牛乳で良かろう。
「パルメディアよりも食事が貧相ではありませんか? ミノリー」
「あそこがおかしかったんだよ。異常に食生活が豊かだっただろ。食事の度にファンタジーとは何かを考える羽目になってたんだぞ」
響と赤佐を連れて、学園の中庭へ向かう。
その間も、俺は周囲に目を配っている。
サングラスに、マスクに、ヘッドホン……。
装着してなければ特徴が無いってことじゃないのか?
では、これだけいる生徒の中から見つけるのは難しいだろう。
こちらから発見するのではなく、奴らに見つけさせることが肝要ではないか。
俺はわざと声を張り上げ、響に話しかけた。
「なあ。この学園は狂っていると思わないか!!」
「ど、どうしたんだい城之内くん!?」
「せっかく彼女を作ってもNTRされてしまうなんて、そんなのは誰かの企みがあるに違いない! 俺はそいつを見つけ出して、この学園の歪みを正そうと思うんだ!!」
「じょ、城之内くん……!? こ、声、声が大きいよ……!」
周囲の道行く生徒たちや教師も、俺をチラチラ見ている。
どうだ?
ここに不良どもの手の者がいるのではないか。
昼休みに声を上げておけば、俺の噂は放課後には広まる。
そこで、奴らが接触してくる……!
俺はそう読んでいた。
「パルメディアよりも頭を使ってますね勇者よミノリー」
「そりゃあ、あっちはフラグ管理だけでいけたからな。こちらは現実の学生生活に近いシステムで動いてる。しかも俺は運命に巻き込まれる主人公ではなく、傍観者のモブだ。こちらから積極的に物語に絡んでいかねば、黒幕には辿り着けまい」
「今回も最初からやる気ですね勇者よ! 私もこの姿でできる限り手伝いますよミノリー」
「なんだろう。虚空に話しかけている城之内くんが凄く怖いオーラを発している……!!」
響、中途半端に首を突っ込んだら本当に死ねるからな!
さて、楽しく談笑するフリをしつつ、中庭の中央でガツガツ惣菜パンを食った。
視線を感じるな。
目立つことを言った俺に、この学園の歪みを司る何者かが注目しているようだ。
赤佐も居心地が悪そうだ。
彼女は人の視線に敏感になっているようだな。
「気をつけてください、城之内くん……! なんだかとっても……よくないものを感じるから……!」
ってことは、目的の相手を惹きつけることに成功したということである。
よしよし、順調!
こうして時間が過ぎ、放課後へ。
高校の授業、俺が現役の頃よりも難しくなってない?
学園もの世界とは言え、授業フェイズがガチっていうのは聞いてないぞ!
まあいい……。
「響、赤佐、あとで勉強教えてね……!!」
「うん、もちろんだよ!」
「任せて下さい!」
二人は俺にとって生命線となった!
キャッキャと盛り上がっていたら、入口がざわつく。
「えーとさ、そこの城之内っての? ちょっと顔貸してくんね?」
ガラの悪そうな男たちが数人、覗き込んでいるではないか。
明らかにカタギの雰囲気ではない。
クラスの誰もが怯えた表情をする中、俺は立ち上がった。
「思ったよりも早かったな。よし、俺を連れて行くがいい」
どんどんと突き進んでいく俺。
これを見て、不良みたいな連中が一瞬だけ怯んだ。
基本的に、こういうゲームの不良連中というものは、相手が怯えているものだと想定して行動を組み立てている。
そういったルーチンで相手を呑んでかかる前提なので、いきなりこっちが丸呑みにすると混乱してしまうのだ。
では、そんな彼らが想定外の状況になり、フリーズしてしまったらどうするか?
それは……キレるのである!
感情の出力を、優位に立って笑うか、怒るか、卑屈になるかの三種類しか持っていないのだ!
なので彼らは、こめかみに青筋を浮かべ、、背景に「!?」を浮かべて怒鳴った。
「んだぁてめぇ!? 舐めてんじゃねえぞぉ!!」「そんななりで内心ブルってんじゃねえのかぁ!?」「やっちまうぞオラァ!!」
「なんだ? ここでやるつもりだったのか? いいだろう。歩けるのが一人残ってれば問題ない。かかってこい。胸を貸してやる」
俺は奴らを手の甲を下にして招いた。
これが連中のストッパーを粉々にし、冷静さを消し飛ばしたようだ。
不良たちは目を血走らせながら、教室の中に入ってくる。
女子たちの悲鳴!
男子が慌てて教室の外に逃げ出していく。
そして俺は懐に用意していたマスクを……被る!!
ネトラレブレイカーモード!!
「来いやぁ!!!!!!!」
「えっ!?!?!?!」「ウワーッマスク!?!?!?」「なになになに!?」
不良たちが怯んだ!
なんだ?
まさか相手が一瞬で覆面を被り、戦闘モードになって自分たちの数倍の声量で圧倒してくるとは思ってもいなかったのか!?
笑い、卑屈、怒りの三感情では処理できない状況になってしまったようだな!!
だが、お前らが怯んでも、俺の中で戦いのゴングは鳴らされているのだ!
俺は手四つの状態になるべく、じりじりと寄っていく。
「こ、このっ! 来るな!!」
殴りつけてこようとする不良ども!
怯えからの反射行動か?
プロレスのマナーを知らん男だ。
俺は奴らをしつけてやることにした。
「うおおーっ!!」「舐めやがってーっ!!」「ぶっ殺してやるぁあぁーっ!!」
「戦場に比べればおままごとだが、お前らは精一杯やってるんだものな。技を一つでも覚えて帰るんだぞ。そーれ、これがフライングメイヤーだぞー!」
「ウグワーッ!!」
「不良が壁際まで放り投げられた!!」
「これが鉄山靠(手加減)だぞ」
「不良が壁をぶち抜いて廊下の向こうまで吹っ飛んだぞ!」
「ウグワーッ!?」
一瞬で仲間二人を粉砕され、呆然とする残り一人。
「そしてこれが……」
「あわわわわ……勘弁して下さい」
「ツアーッ! ナックルパート! あえて頭蓋骨の硬いところに殴ってダメージを抑えてあげる心遣い!!」
「ウグワーッ!?」
「不良の髪の生え際から血がーっ!!」
ってことで、不良たちは完全に戦意を喪失した。
こいつら、コンビネーションがバラバラだ。
三人が息を合わせて掛かってくれば、多少は勝負になっただろうにな……。
「では、案内してもらおうか」
「な、なんだよ……。お前は一体なんなんだよ……」
血まみれの不良が怯える。
「ネトラレブレイカーだ」
俺は奴に答えてやるのだった。
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