第120話 表向きは平穏だな……!?
私立ときめき学園高等学校。
政令指定都市であるK県Y市にある学校で、海が見えるところにある。
名門と言っていい高校だったが、近頃の少子化により、AO入試を実行。
学力ばかりでなく、家柄パワーで様々な経験をした学生などを受け入れ、生徒数を保っている。
だが、その頃から急激に校内の(性的)治安は悪化したらしい。
表向きは品行方正な名門高校なのだが……。
「臭う、臭うぞ。間男どもの汚らしい臭いだ」
「ミノリ~」
「あまり鳴き声をあげると気付かれるからな。セレスは姿を消しているのだ」
「そもそも私が謎の動物に変身してしまっているのが納得いかないんですよね。ミノリ~」
「恐らく、この世界にやって来れるのは俺一人だけだったんだろう。だがセレスは俺とある種一心同体だったようなところがあるので、特別枠としてここにやって来れたと思う」
「なるほど~。ケチケチしないで私を招いてくれれば良かったのに! ミノリ~」
おっと、隣を歩いていた生徒が不思議そうな顔をした。
マスコットのキュートボイスが聞こえたら、気になって仕方ないよな。
今、このチンチラに似た生き物は姿を消して、俺の肩の上にくっついている。
この世界でも、セレスの定位置はここだな。
「城之内くーん!」
「響か。赤佐も一緒か」
「はい。昨日はありがとうございました、城之内くん」
「気にするな。たまたまこの世界に降り立った直後、屋根の上を駆け回りながらパトロールしていたらお前がNTRされている場面に遭遇しただけだ。俺がやって来るのがあと数ヶ月早ければ、彼女の貞操も救えたが……」
「何を言っているか分からないけど、真美奈がいつもの彼女に戻っただけで本当に良かったよ! 実は僕、あのあと真美奈に告白してついに恋人同士に……」
「なにっ!? 新たなフラグが立つぞ……!!」
「城之内くんがなんで怖い顔をしているか分かりませんけど、それにしても驚きました……。武くんが……まさか人間じゃなかったなんて」
赤佐真美奈がまだショックが覚めぬといった様子で呟いた。
そう!
俺が連続パワーボムで仕留めた、この世界のファースト間男、府城武。
前振りもなく、いきなり螳螂拳を使ってきてバトルモードになったが、高校生とは思えぬ強さだった。
まあ、パルメディアを駆け抜けてきた俺にとっては児戯に等しいが。
一発目のパワーボムで死ななかったので、おかしいな? と思ったら案の定使徒だった。
今後は辻パワーボムを習慣化した方がいいかも知れない。
「僕、城之内くんが何か恐ろしいことを考えてることだけは分かるよ……!!」
「なにっ!? 顔に出ていたか!?」
「城之内くん、まさかこんな謎めいた恐ろしい人だなんて知らなかったよ……」
元の城之内の人格は知らない。
だが、俺がこの肉体に宿った以上、俺はネトラレブレイカーとなったのである。
あらゆるNTRを爆砕するという意志一つを武器に、超越者によって侵食された異世界、パルメディアを救った俺。
元の世界でぬくぬくと、そしてなんかセレスに叡智なことを教えてもらいつつ暮らしていたのだが……。
そう、あれは昨日の朝のことだ。
生徒昇降口に入りながら、俺はポワンポワンポワンと回想する。
※
「ええい、どんなルートを通ってもNTRされてしまうではないか!」
「勇者よ、私と実った後でもさらにゲームを遊べるのはどうなっているのですか? 物足りなかったのですか? でしたら私は幾らでも実れますが?」
「いいかセレス。叡智が食事としよう。それに対して叡智ゲームはおやつなのだ。人は食事のみでは心が乾いてしまう……。そこに叡智ゲームを挟むことで、食生活はより豊かになるのだ」
「私が来る前の勇者はおやつしか食べてなかったのですか? それはそれで不健康なような」
「ええい、論破するんじゃない!! 完全論破したら俺の立つ瀬がなくなるだろうが!! かーっ!」
「勇者は私が来る前は失業後の引きこもりだったそうではありませんか。今は再就職もしていますし、私も完全に勇者の家では新妻として迎えられていますし、今が良ければそれでいいのですよ」
「豊穣の女神が新妻に……。いいのか……?」
「いいのです。それはそうと、勇者はどんなゲームをしていたのですか?」
「ああ、これはな……」
俺はセーブした後、タイトル画面へ戻った。
これは、超越者が紹介してくれた、彼に等しい存在が作って同人ダウンロード販売サイトに登録されている叡智ゲーム。
NTRれ青春! ときめき学園 という、学園NTRものだ。
俺はこれを大いに堪能し、今は賢者モードになったので展開に対して怒っていたのだ。
ゲームとしては素晴らしい。
じっくりとヒロインに愛着を持たせた上で、そこから決定的にNTRさせる。
一片の救いもないNTRだ。
さらに、学内で知り合う様々な魅力あるヒロインたち。
彼女たちとのエピソードも大変面白く、プレイヤーに愛着を持たせるに十分。
そして徹底的にNTRさせる!!
容赦などない!
すごい……すごいゲームだ……!!
異世界NTRパルメディアと違い、食生活とか戦記ものとかに浮気することなく、学園青春NTRものをやりきった傑作だ。
手放しで褒めていい。
俺はこの作品に☆5評価をつけ、さらにレビューも投稿して褒めた。
そこまでした俺だからこそ、賢者モードとなって怒るのだ。
「何をやってもNTRされてしまうのだ! いや、それはいい! そう言うゲームだからだ! だが、この怒りは俺のものである!」
「難儀な人ですねー」
素っ裸のセレスが、呑気な口調で言った後、俺の部屋のミニ冷蔵庫からジュースを取り出してごくごく飲んだ。
これは、叡智の後でドリンクが必要であるというセレスの主張により、設置されたものだ。
昨夜も叡智をしたのだが、本日は休日ということで、セレスはさっきまで眠っていたのである。
俺は早起きし、朝飯を食い、早速叡智ゲームを遊んで堪能し、賢者となり、そこで様々なルートを遊んでみてどうやってもNTRされることを確認した。
「ではどうしますか勇者よ? またこの世界に挑み、世界を救いますか?」
「救うとは言っても、ゲームではないか」
「いいえ、超越者に等しい存在が作り上げたゲームということは、現実の写し身です。このような事が行われている世界が存在していますから、勇者の介入によって救うこともできるでしょう」
「ほんと!?」
「ほんとですほんと。あの超越者が紹介したっていうことは、ここを勇者の手でいかに攻略するか見せて欲しいという意味でもあると思いますから……ほらここ」
セレスが身を乗り出して、俺のゲームパッドをいじる。
裸なので色々触れるのだが!?
「ここに変なセーブデータがあるでしょう? 文字化けしてるやつです」
「セレスもすっかりこのゲーム用語に詳しくなったなあ」
「一番接している相手が勇者だからですよ? それで、これをロードすると……」
「ほうほう」
ポチッと、セレスが決定ボタンを押す。
そうしたら、俺たちの視界がぐるぐると回転した。
うおーっ!
こ、これはーっ!!
次の瞬間。
俺は、明かりの消えた部屋の中にいた。
俺の自室とは違う。
なぜならミニ冷蔵庫と、愛用のゲーミングPCがない。
オールインワン型のPCだ。
俺はこういう拡張性のないPCは使わないからな……。
「これはどうやら……俺は新たな異世界に降り立ってしまったようだな」
現状を把握し、すぐさま状況を受け入れる俺なのだった。
どんと来い、新たな戦いよ!
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