第118話 かくして世界は救われて
最後の台詞を吐いたら、なんだか俺の体がふわふわと浮き上がる感覚。
「なんだなんだ」
まるで地に足がついていないような……。
そうしたら、セレスも宙に浮かびながら微笑むのだ。
『言ったではありませんか。超越者を倒したら、勇者は元の世界に戻れると』
「そう言えば……。最初の目標だった、マリーナとよろしくやるというのは達成したし、なんかとてもいい目を見てしまったしな……。あいつらにお別れが言えないのは残念だが」
騎士団や不死の王国の仲間たちが集まってくる。
彼らは、俺が離れた後のジョナサンに声を掛け、何かお喋りを始めた。
ふと、ジョナサンが俺を見上げた。
「行くのか……!」
「おう。俺は元の世界に戻るぞ。……っていうか、俺が抜けても自意識を保っていられるお前ってなんなんだよ」
ジョナサンは笑った。
「俺は、この周回のジョナサンだ。あんたとともに成長し、そして世界を救う英雄にまで達した俺だ」
そうだったのか!
何度も世界をやり直していたジョナサンはジョンとして切り離され、この肉体オリジナルのジョナサンだけが残ったのだ。
なるほど、こいつは俺とともにパルメディアを駆け抜けた男だ。
何もかも任せておいて問題あるまい。
俺の体は、パルメディアを離れていく。
高く高く空に上がっていき、冒険してきた世界の全域が見えるようになった。
レイク王国から始まり、城塞都市プロマス、花の都ガイヴァン、冒険者の都市国家ポンドール。そして帝国。
一つの小さめな大陸の中に収まった全世界。
海をはるか隔てた場所に、幾つもの大陸がある。
パルメディアは、あの世界の外にも広がっているのだ。
いつか、そこを舞台にしたゲームを遊んでみたいものだ……。
そう思っていると、俺は霧の中に突っ込んだ。
何も見えない。
意識も曖昧になっていくような……。
というところで、ガタンっと椅子から転げ落ちた。
「ウグワーッ!!」
床の上でのたうち回る俺。
腰を!
腰を打った!
ベッドに手を掛けて立ち上がると、周囲の光景が変わっていることに気付いた。
「俺の部屋じゃん!」
振り向くと、PCが起動している。
そこには、異世界NTRパルメディアの最後のシーン。
果てしない大空だけが映されており、そこには……。
『Thank you for your playing!』
と出ている。
これ、超越者が打った言葉なんだよな。
あいつは侵略者だが、プレイヤーに対する感謝の気持を持っている男だった。
カチッとマウスの左クリックをすると、画面が変わった。
『パルメディアは救われました! 勇者よ、感謝します!』
こいつはセレスの言葉かな?
そう言えばあいつとは、ずっと一緒だったもんな。
自分の中には、もうあの賑やかな女神の気配はない。
「いたらいたでうるさかったが、いなくなったらいなくなったで、ちょっと寂しいもんだな……」
俺らしくもなく、しみじみとしてしまった。
俺は部屋を出ると、大きく伸びをした。
見慣れているはずの自宅がとても懐かしい。
この弛緩した空気も、下の階で母親が見ているであろうテレビの音も、パルメディアにはなかったものだ。
「英雄も、元の世界に戻ればただの人……と。あー、なんか腹が減ったなあ。母さん、なんか食べるもの……」
「はいはい! お母様の代わりに私が用意しましょう! こっちの食べ物は美味しいですねえ!」
聞き慣れた声がしたと思ったら、母親のお下がりのセーターを着た小麦色の肌の女が、おせんべいを皿に用意してくれるところだった。
テレビを見ていた母親が振り返り、ニヤリとする。
「あんた、いつまでもモテないまんま、ずっとエッチなゲームばかりやってると思ってたら! いつの間にこんなかわいい彼女作ったんだい? それでセレスさん、息子とはどこで知り合ったの?」
「ふふふ、ここではない、遠い世界です。私から声を掛けたんですよ。それに、勇者とは深い絆で繋がれているんです。私と勇者は、一心同体ですし」
「えっ、じゃあ、まさかもう……!」
「惜しいですお母様! 実りはまだです! ですけど、全ての障害が無くなった今、私は今からでも勇者と実れます!!」
「ああ~、孫の顔が見られそう~」
「おい。……おい!?」
そこにいた女は、セレスだった。
エルフの耳ではなくなっているが、間違いなくずっと旅をともにした、実りの化身だ。
彼女は座布団に腰を下ろすと、俺を手招いた。
隣に座れとな?
まあいいけど。
「なんでお前がいるんだよ」
「私、言ったじゃないですか。勇者の世界を見に行きますよって」
「パルメディアはいいの?」
「元から私、豊穣を与えすぎたって言うので他の神々から封印されてたわけですし」
ずっと眠ってたってそういうことか。
「こちらの世界では、私の権能はかなり弱まってるみたいですけど……。食べ物も美味しいですし、平和な感じですし。なんとかなるんじゃないですか?」
セレスはおせんべいを齧ると、渋いお茶をずずずーっとすすった。
「あ、勇者にもお茶を淹れますね! おせんべいも食べて食べて! ちょっとお腹が膨れたら……お母様がお夕飯用意して下さるまで……私と実りましょう!」
「な、なにぃーっ!」
「だって勇者、まだ自分の体では実ってないでしょう?」
そうだった!
童貞卒業したのはジョナサンボディだった。
母親がニヤニヤしながら俺を見ている。
くそーっ、なんだその嬉しそうな顔は!!
バリバリとせんべいを食べた俺は、茶をふうふうやりつつすすり……。
「行きましょうか!」
「はっ、よろしくお願いします」
再び二階へと戻るのだった。
世界を救ったオマケに、女神が俺のこれからをちょっとマシにしてくれる予感がする。
「さあ勇者よ! パルメディアが救われたお祝いに二人で大いに実りましょう!」
「うわーっ、階段の途中で素っ裸になるな!?」
こうして俺は大いにセレスと叡智をすることができ……。
体力つけなくちゃなー!!
としみじみ思うことになるのだった。
~異世界NTRパルメディアの章 終わり~
とある支援サイトの感想に対する返信。
『お楽しみいただきありがとうございます! 次回作も必ず作りますので、お楽しみに! それと……俺様以外にも、数多くのオーバーロードが様々な世界を切り取っては箱庭にしている。例えば……』
返信が書き込んだリンクの先には、発売したばかりの新作同人ゲームがある。
『果たして、超常の力を制限され、法によって縛られた世界の中でお前がどれだけ戦えるかな? 俺様は楽しみに見せてもらうつもりだ。さて、どう出る? ネトラレブレイカーよ!』
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