第117話 決着!!
『ドーンッ!!』
超越者の手から、周囲を歪めながら歪曲された空間が迫る!
これに囚われれば、俺は無限の中に閉じ込められるであろう。
だが、ここで生きてくるのが柔拳の極みだ。
「ツアーッ! う・け・な・が・しっ!!」
歪曲空間を指先でそっとなぞりながら、するりと受け流す。
その気になれば直系数キロの隕石だろうと受け流す、柔拳究極の受けだ!
『なにぃっ!?』
圧縮された空間をそらしたところで、超越者と俺の腕が触れ合う。
ここでやつの腕を絡め……!
「アームホイップ!」
柔拳からプロレスへの流れるような変化!
絡めた腕を起点に、超越者の体を投げ飛ばす!
『やりおる!! 神の技を持ち得ぬ只人の到達点としては、瞠目に値する!!』
着地と同時、大地に膝を付けた超越者に「ツアーッ!!」とシャイニングウィザードを放つ!
超越者はこれを空間を展開して受け止めるが、俺はこれを足場にしてふわっと飛び上がった。
『あえて神の域に達さず、人のままで俺様と渡り合うか!!』
「当然だ! 神が叡智ゲームをプレイするか? 人でなければ叡智なゲームを判断はできない!! 古今東西、好色な神は直接手を出して修羅場になった! 人は叡智ゲームを生み出し、誰も傷つけぬ叡智を楽しんだ! これが神ですら及ばぬ人の高みだ!!」
『哲学だと!? 戦いの場に哲学を持ち込むか!!』
超越者が空間をたわませながら、弾丸として次々に放ってくる。
どれを受けても、拘束されてしまうことになる。
覚えてて良かった柔拳!
空中でこれらを流れるように受け流しつつ、足は必殺のニードロップを形作り、超越者に炸裂!
「ツアーッ!!」
『ウグワーッ!! 小惑星を砕くほどの打撃!! 人の身でここまで練り上げるならば、神となる方が容易かっただろう! なぜだ! なぜお前は人であることにこだわる!?』
「人であればこそ、お前のNTRゲームの良さを判断することができる!! あれは至高だった! ☆5つ!!」
『高評価レビューありがとうございます!! ドドドンッ!!』
多重に重なった空間が、俺を退ける!
しまった!
囚われたか!!
『ならばこそ、限られた人の時間は己の享楽のために用いれば良いものを! 待っていれば、俺様は幾らでもこの世界をアップデートするだろう! 至高のNTRをお前は堪能できる……!!』
空間を貫き、超越者の腕が、足が飛んでくる!
逃げられぬようにしてから仕留めに来る。
これがこの恐るべき侵略者の真の攻撃なのだ!
やつの圧縮空間において、回避や受け流しは許されない。
全てがやつの攻撃に変化するからだ。
それ故に、ここでは硬気功で耐える!
数々の打撃を受け止めつつ、反撃の時を待つ……!
「次回作は……」
『ぬっ?』
「次回作は作らないのか!?」
『ぬぬうーっ!!』
攻撃が止まった!
「至高と言えど、一つの作品を延々とこね回していては世界が広がらない!! お前は……あのNTRゲー世界を追求する腕を、精神を、ただの一作で終わらせる気か!! 俺は既に賢者モードではない! 至高の次回作を求める、一人のファンでもあるのだ!!」
『お、お前は……!!』
空間が揺らいでいる。
超越者が動揺しているのだ。
俺は裂帛の気合を拳に込めて……。
「ツアーッ!!」
突いた!!
型も何もあったものではない。
だが、剛拳の極みは我が肉体にあり!
柔拳の極みは我が肉体にあり!
プロレスの極みは我が肉体にあり!
崩拳・合気・ナックルパート!
愛の拳が、空間を撃ち抜く!
その先に……超越者の顔面があった。
『ウグワーッ!!』
まともにナックルパートを喰らい、超越者がよろめいた。
「ツアーッ!! ナックルパート!!」
『ウグワーッ!! ダメージ以上に……効く……!! 俺様は……俺様はハングリーさを失っていたというのか!!』
もはやこの場において、俺と超越者の戦いには誰も手出しできない。
いや、セレスがいるんだが、なんか俺と超越者が言葉で戦い始めたので静観している。
『私、全然意味が分からないんですけど!!』
俺は足腰が心もとなくなった超越者の背後に回り、両手をフルネルソンに固定。
そして……全身のバネを使って、反り投げの体勢に持ち込む!
「震脚……! 発剄! 浸透勁! ドラゴンスープレックス!!」
両腕がフルネルソンで極められているため、受け身を許さぬ必殺のスープレックスだ!
『ぐおおおおお!! ドドドドド……』
空間をこねあげる超越者。
無限の空間を呼び出して、攻撃を相殺しようというのだ!
だが、ここで俺の称号が光り輝く。
「無限殺し発動! 空間による相殺を……許さん! お前の次回作を……やらせろーーーーーーーっ!! ツアーッ!!」
『ウグワーッ!!』
超越者の頭頂は、見事大地へと突き刺さったのだった!
拘束を解くと、やつは大の字になって倒れる。
周囲では、どうにか立ち上がった仲間たちが戦況を見守っていた。
『やったのか……!?』
グーテンが呟く。
そいつはフラグだ。
だが、今回においては本当にやった。
超越者は起き上がってこない。
倒れたままだ。
やつの目は空を見ていた。
『俺様は……逃げていたのか……。一つの作品の完成に満足し、これ以上の作品を期待されることを恐れ、ひたすらアップデートすることで己を騙していた……』
「あんたの制作者としてのセンスを俺は信じてる。何年だって待つ。また、夢中にさせる最高のゲームを作ってくれ」
俺は手を差し出した。
超越者が信じられないようなものを見る目を向けてくる。
『俺様と……和解しようと言うのか』
「新しいゲームを生み出すがいい。その世界が煮詰まった頃、また俺が破壊してやる」
『させるか……!!』
超越者が笑った。
『次こそは至高の中の至高。俺様の新たなる挑戦を見守るがいい、グッドプレイヤーめ……!!』
やつの手が伸び、俺の手を掴んだ。
善悪を超克したシェイクハンドだ。
これによって、パルメディアを覆っていた侵略の魔の手は消えた。
超越者の姿が薄れ始める。
「お前……消えるのか……?」
『この世界の俺様は敗れた。お前の勝ちだ、プレイヤー。だが、次は分からぬぞ。お前が全面降伏するような世界を、俺様は作って見せてやる。震えて待て。進捗は支援サイトで随時公開するので、サブスクリプションしてくれると嬉しい』
「あ、分かった。あとでアドレス送って。俺のメールアドレスこれだから」
超越者が俺のメールアドレスを端末にぱかぱかと打ち込み、俺もそれを確認した。
よし、間違いない。
お互いにサムズアップする。
『さらばだ、プレイヤーよ! そしてパルメディアよ!! 俺様に抗うほどの気概があれば、この世界は次なる侵略者とも戦えよう! せいぜい備えるがいい! ははははは! わははははははははは!!』
哄笑とともに、超越者は消滅した。
宇宙船もまた消える。
この世界から退去したのだ。
完全勝利である。
もう二度と、あいつはパルメディアを侵略することはない。
「勝った……のか……?」
デクストンが呟いた。
「やった! あの野郎、やりやがったぜ!!」
ダイオンが吠える。
「やってしまった……! 彼は本当に成し遂げてしまった」
ジョンは感動しているみたいだ。
「ジョナサン!」
マリーナの声がした。
振り返ると彼女がいる。
チエリが、ナルが、ヴェローナが、アルシェがいる。
愛すべきヒロインたちがそこにいた。
ジョナサンの帰る場所は、そこにあった。
これにて、異世界NTRパルメディアの世界はハッピーエンドだ。
俺が宿ったジョナサンは、ゲームクリア時と全く同じ最後の台詞を口にしたのだった。
「帰ろう。みんなのところへ……!!」
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