第115話 降りてこい超越者!
俺の言葉が届いたのか、空に一条の光みたいなものが走ったかと思ったら……。
空が真っ二つに割れた!
そこには宇宙が見えている。
で、宇宙に浮かぶ巨大な球体。
宇宙船かな?
あれが超越者の住まいと見た!
そりゃあそうだ。
この世界を侵略しようというのに、生身で宇宙にプカプカ浮いているわけには行くまい。
腰を据えてじっくりと世界に手出しをしていくなら、拠点がほしいよな。
宇宙船はかなり大きいみたいだから、あれの中でアクティビティなんかを充実させ、コツコツと侵略を進めていたに違いない。
そりゃあ、そんなのんびりモードだったところに俺のRTAじみた攻略がやって来たら面食らうだろう。
そして超越者、まだまだ自分が降りてくるつもりはないらしい。
宇宙船の腹が開いて、そこから角の生えた肉食獣みたいな巨大な怪物が降りてくる。
『ついにモンスターを出してきましたね。現地の人間を改造して使うのをやめたようです』
「あれってもしかして、超越者の世界の生き物だったり?」
『それを改造して強化したものでしょう! ですが私が担当しますから安心ですよ! よーしこーい!』
一見してワンピース姿の普通の女の子みたいなセレスが、ベヒモスめいたでかいモンスターと相対するのは不安がある。
だが、こいつの中身は勝利の女神セレスなのだ。
『ぶもぉぉぉぉ!!』
「突進ですか? 見た目通りですねー! その角は掴んでくれって言ってますよねー? ほいさー!」
『ぶもおおおおおお!!』
『ウッソでしょ。バケモンじゃん』
ゾンビーネがこの光景を見て呆然としている。
セレスがモンスターの角を掴んで、抱え上げたからね。
インフェルドンすら言葉が出ていない。
「おっしゃいきますよーっ! 女神式! パイルドライバー!」
一瞬だけ、モンスターを抱えあげたセレスがむちゃくちゃな高さまでジャンプした。
そして加速しながらの落下!
地面に直撃したモンスターは、角がへし折れ、頭がひしゃげ、全体重と落下の勢いを受けた背骨がボッキボキに折れた!
死んだ!
『こら超越者ー!! 雑魚出してきても勝負になりませんからねーっ!! 出てこーい! 勝負しろー!』
「そうだぞー! 出てこい超越者ー! 俺達と勝負だー!!」
わあわあ騒ぐセレスと俺。
超越者の宇宙船が、ぐらぐら動いたかと思ったら、真っ赤に染まった。
怒った?
怒ったな?
そして落下してくる宇宙船!
「セレス!」
『足場ですよ勇者よ!』
「よっしゃー!! 迎撃のーっ! フライングクロスチョップ!!」
真っ向からぶつかりあう、俺と宇宙船。
一瞬だけ拮抗した後、宇宙船はエンジンを吹かし始めた。
おおおっ!
俺を押してくる!
だが、俺はプロレスだけの男ではない。
柔拳の技で、宇宙船の押し込みをいなし……相手の勢いを利用して真横にぶん投げる!
猛スピードでぶっ飛んだ宇宙船が、帝国脇の地面に激突した。
着弾の衝撃が周囲に広がる。
俺は空を蹴り、宇宙船目掛けて飛翔した。
ここで放つのは、剛拳の極意!
「神速っ! 鉄山靠!!」
インパクトの瞬間に反転して背中を当て、破壊力を宇宙船の中に通した!
巨大な球体が一瞬、ボコボコと泡立つように膨れ上がり……。
その直後に爆発した。
『ウグワーッ!! なんだ! なんだとーっ!!』
吠える声が聞こえる。
爆風が何者かの一撃で薙ぎ払われる。
そこには、緑色の肌をした宇宙人みたいなやつが立っていた。
つるんとした頭部に、瞳孔のない金色の目が輝いている。
首から下は筋骨隆々で、黒いボディスーツに包まれていた。
腕と足は銀色のグローブとブーツを装着している。
「出たな! 超越者!」
『お前が……お前が、この俺様の全計画を狂わせた存在か!! 力を失った女神に、情けでゲームのチャンスをやったのが何もかも間違いだった!! まさかお前のような馬鹿げた存在を呼び出すとは!!』
『いやあー、最後のチャンスでしたからね。見事掴みましたよー。大当たりの勇者を!』
「そういうことだ。なんやかんやあって、今この場で俺は最強の状態に仕上がった。そしてセレスも完全体になった。このタッグで今からお前を叩き潰そうというわけだ」
『教えろ! なぜだ! なぜ俺様の世界を拒む!! 男にとっては夢のような世界だぞ!? 力さえあれば女を抱き放題だ! 俺は全てが男にとって都合が良くなるように世界をデザインし、俺好みの食事が世界各地で行えるように調整した。さらに植生もいじり、食材の調達を容易にし、技術発展もいい感じで快適な生活ができるようにしたのだ! そしてこの成果を発表すべく、同人ゲーム販売サイトに登録した……』
「な、な、なにぃーっ!!」
俺、衝撃を受ける!!
「ま、まさか……異世界NTRパルメディアを作ったのは……お前だったのか!!」
『なっ……!? ま、まさかその口ぶり……。お前、俺様が作ったこの世界のシミュレーターを体験して来たのか!?』
「休日ぶっ通しで遊んでコンプリートした……」
『おお……おおお……!! どうだった?』
「使えた」
『ありがたい……!!』
超越者が凄くいい笑顔になった。
そうかー、こいつが作者だったかー。
この世界が、俺の知る異世界NTRパルメディアと色々違っていた理由は、きっと現実世界で修正パッチを当てて改善を続けているんだろう。
いけすかない邪悪な侵略者だと思ったが、信頼できるクリエイターだった!
俺と超越者は歩み寄り、固い握手を交わした。
「最高の体験だった! しばらく賢者モードが解けぬほどに! その賢者モードが、ここまでこの世界を攻略させる原動力となったのだ」
『なるほどな。俺様をここまで追い詰めたのは、俺様自身のゲームの完成度とそれを愛してくれた素晴らしいプレイヤーだったということか! まさに因果よな……!』
握手をしながら睨み合う!
「やるか?」
『やるか』
そういうことになった。
いざ、最終決戦!
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