第111話 不死王の使い、来る!
『あーしが来たわよ!!』
「なんだなんだ!? ウワーッ!! チェンソー背負ったツギハギフェイスのゴスロリ!!」
ガイヴァンを使者が訪れたと言うので、気になって見に行ったらこんなことになっていたのだ。
これ、五将軍のゾンビーネだな?
『あんたがジョナサン? ふーん、マッチョじゃん』
「ゾンビーネだな? おいセレス、ヒロイン判定」
『ありませんねー。ジョンとくっついたカイと同じ扱いですねー。こいつ、グーテンと実ってますよ』
「なにぃ」
『はぁーっ!? いきなり何失礼なこと言ってんのこの女……って、ゲゲェーッ!! こいつ女神じゃん!? まだこの世界にいたわけ!?』
ざざっと後退するゾンビーネなのだった。
そうかそうか。
グーテンは彼女を超越者から取り戻したんだったな。
ゾンビーネも元気なようで何よりである。
五将軍である以上、インフェルドンに匹敵する最強格の使徒になる予定であった。
だが、これはグーテンの献身により破られた。
超越者はジリ貧であろう。
「まあまあ。セレスは実りに関係しないものに興味を抱かないから無視していいぞ……。でゾンビーネは何しに来たんだ?」
『ふふん、あーしが来たってことはぁー、同盟者の実力を確かめに来たに決まってんじゃん! ヴェローナを預けるに足る男かどうか、あーしが確かめてきてやるってグーテン様に言ったのよ!』
「ははーんそういう」
『グーテン様は納得してるみたいだけど、あーしは納得しないね! さあ勝負勝負!! あーしに力を見せてみろやー!』
「うーん、俺はこう、尊敬できるところのある女性には打撃は加えないんだよなあ」
グーテンが認め、五将軍に数えられるほどの魔人。
しかも圧倒的な力がありながら、ガイヴァンの正面から正々堂々やって来る性格。
何気に不死の王国には人格者が多いなーと思ってたけど、彼女もそのたぐいだろう。
「ではここは、昨夜の実りで超パワーアップしたチエリがお相手をする……。ナル、いるんだろ? チエリ連れてきて!」
「わわっ! バレてた!? 分かったー!」
何も無いところに突然ナルが現れたので、ゾンビーネが驚愕する。
そしてナルが消えたので、再び驚愕ゾンビーネ。
『ななななな!? あーし、このアクセで魔力を察知できるんだけど! 何の魔力も感じなかったのに、あいつ無から出てきて無に消えたんだけど!?』
「あれは盗賊スキルと運動スキルを極めた結果なので、純粋な技術の到達点なんだ」
考えてみたら、魔法的な手段で感知できず、常人では認識もできない領域の隠密と超絶高速移動。
チートなのでは?
なお、ナルはチエリどころかヴェローナまで連れてきたのだった。
「あら、ゾンビーネ様。戻られたのですわね」
『やほーヴェローナ。グーテン様があんたのこと気にしてたわよ。ねえあんた、このままジョナサンとアレなの? 人と魔人の架け橋になる感じ? あのお高く止まってたあんたがねえ……』
「そっ、それっ、不死の王国でも既定路線になってますの!? わ、私に逃げ場がありませんわーっ!!」
頭を抱えるヴェローナなのだった。
今夜だからな!
「あのーう。私が呼ばれたのはどうして……」
おずおず挙手するチエリ。
「おおそうだった! チエリ! この五将軍のゾンビーネと手合わせてしてくれ! 俺の次に前衛戦闘が強いのはチエリだからな」
「五将軍!? 最上位の魔人じゃないですかあ! そ、そんなー! 私はあくまで一介の新人魔法医で……」
いいからいいから。
ゾンビーネもチエリを見て、ちょっと背筋が伸びた。
よわよわな雰囲気や物言いと違って、醸し出すオーラは達人のそれだからね。
既に格闘スキルはマックスまで上げてあるぞ!
さらに、チエリは魔法医レベルが上ったことで、全ての攻撃と接触が魔力を纏うようになっている。
つまり魔人に攻撃が通じるのだ!
「ということで、女神を除いてうちで最強なので彼女と戦って確認してくれ」
『分かったわよ。その女神とやったら殺し合いになるし、人間相手がちょうどいんじゃない? じゃあ、やるわよぉ!』
チェンソーを投げ捨てるゾンビーネ!
あわわ、とか言いながらも体はスイーっと柔拳の構えになるチエリ。
「ファイッ!」
戦いの様子を見学するのである。
おおっ、ゾンビーネが武器を使わないスタイルは、アメリカンプロレススタイルだな!?
あれのディーヴァってやつが戦う、魅せ重視の格闘だ。
これは俺と噛み合うなー。
だが他人の女と組んず解れつするのはなー。
実質NTRだしなー。
雑念をもりもり脳内で展開しつつ、女の戦いを眺めるのだった。
ゾンビーネの組み付きをいなし、関節を決めるチエリ。
だがゾンビーネはこれを、自らぐるりと回転して外す。
ゾンビっぽいキャラなのに関節を外すとか腕を分離するとかしないで、ちゃんと体の動きで返すんだ!?
ゾンビーネの打撃、打撃、打撃!
これをいなし、いなし、受け流すチエリ!
打撃の終わり際に懐に誘い込んで、姿勢を崩した!
と思ったら、ゾンビーネが打撃を打てない超至近距離からのチェーンパンチだ!
二、三発受けて、ゾンビーネがガイヴァン入口の門まで押し込まれた!
逃げ場なし!
だが、ここを強引に前進してチェーンパンチの加速する余裕すら奪い、攻撃を留めるゾンビーネ!
うーん、膠着状態!
魔人の力と、魔法医の技が炸裂する……!
「すげえいい勝負だ」
「チエリ、あんなに強かったんですのね……!!」
「俺と叡智なことをして、潜在能力が解放されたんだ。具体的にはかなりレベルアップした」
「そんなことがありえますの……!? つ、つまり、ジョナサンとまぐわえば私も……?」
「強くなるなあ」
『パワーアップですよ! 実りとはパワーです!』
力強く断言するセレスを見て、ふと俺は思うのだった。
出会ったばかりのセレスはもっと知的だったような……!
この女神、力を取り戻すほどにおバカになって行っている……!!
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