第108話 挟撃だ!
ナルが帰ってきた。
どうやらチエリと再会を喜び合っていたら、時間を食ってしまったらしい。
「チエリすっごくたくましくなってた! 使徒は一体倒したって!」
「なにっ!? すごい」
俺は感心してしまった。
尖兵クラスとは言え、超越者の使徒を単身で倒すとは!
やるなあ。
きっと柔拳の神が彼女のところにも訪れ、新たな技を授けたんだろうな。
そしてどうやら、使徒率いるならず者の軍勢は、俺達が次々に使徒を撃破したことで警戒した超越者から、待ての指示を受けていたらしい。
戦力がガンガン削られて、焦ったんだろう。
状況を見て指示を出すつもりだったのだろうが……。
魔導ワゴンの爆速な走行力を計算に入れていなかったようだな!
俺たちの到着に気づき、慌てたように、軍勢が動き出す。
遅い!
「よし、魔導ワゴン突撃ーっ!!」
「任せるのじゃーっ! うおーっ!」
魔導ワゴン、マニュアル操作だったか。
ネイアが実に楽しそうに運転している。
魔導ワゴンが猛烈な速度で向かってきたので、ならず者の軍勢がワーッと散開して迎え撃つ体勢に……いや、ならず者の寄せ集めなのでめちゃくちゃな動きになってる!
戦場に響き渡る爆音!
迎え撃とうと一部がこちらに振り向くが……。
「蹴散らしますわ!!」
サンルーフが展開し、そこから身を乗り出したヴェローナ。
俺が肩車してるのだ!
彼女は両手に銃を構えて、目についた兵士たちを片っ端から撃ち倒していく。
『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』
「流石にヴェローナは強いな」
「きゃっ! 太ももの辺りでぺちゃくちゃ喋らないで下さいな! 息が掛かってますわ!」
気にしなくていいのに。
というかミニスカみたいな姿で俺に肩車されるのはどうなの?
気を取り直して、銃弾の雨が降り注ぐ。
『なっ、なんだーっ!? 反逆者どもには魔法の使い手がいないんじゃなかったのかー!? あのお方が判断を誤るはずが……!!』
使徒っぽいのがいた!
軍勢の戦闘にいる、中華甲冑っぽい大男だ。
こいつはなかなか強そうだな。
だが、超越者から受け取った情報が間違っていたらしい。
そうだよな。
ネイアが魔法を使うまでもなく、俺がぶん殴って戦ってたからな。
「わし、魔法使いなんじゃが!?」
今は運転手だからね。
「魔法などなくても、私の銃はそれを凌駕しますもの」
ヴェローナは余裕。
彼女の強さもずっと秘めてきたからな……!
ここに来て本領発揮というわけだ。
「なあヴェローナ」
「なんですの? 今忙しいのですけど!」
「余ってる長銃、マリーナに使わせていい?」
「は!? ああ、いえ、構いませんけれど。そもそもマリーナは銃が使えましたの?」
「使えるわよ! 任せて!」
自信満々のマリーナである。
ヴェローナの背中に装備していた長銃をナルが取り外し、マリーナに手渡す。
「お姫様がんばれー!!」
「ありがとう! 狩猟で鍛えた腕を見せてやるわよ!」
マリーナもサンルーフから身を乗り出すつもりらしかったので、俺が腕で支えた。
うおーっ!
忙しい!
そして腕にズシンと来る肉厚!
重量感!
うーん、マリーナいい体をしている!!
前方と左右をヴェローナが。
後方をマリーナが担当!
長銃が火を吹く!
射撃スキルがマックスまで上がったマリーナは、この反動を完全にコントロールだ。
長銃の大威力が、一撃で複数人のならず者を吹き飛ばす!
『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』
強い強い!
「やりますわね! 魔人用にチューンされた銃を使いこなすなんて……人間としては最高レベルの技量ですわね!」
「ええ! 鍛えてるもの! でも、なんだか自分でも強すぎる気がするわ……」
俺がスキルを上げてやったからな!
ここで、使徒が標的をこちらに変えた。
赤い中華風甲冑は、実に目立つな。
奴は巨大な鉾を抜き放ち、
『のけ、貴様ら!! ははは! 鉄の馬とは面白い! だがこの程度の質量なら俺の鉾で吹き飛ばしてくれよう!!』
回転する鉾の先端が地面を削り、空を切り、ぶおんぶおん唸る!
ヴェローナの射撃を受けながらも、これが武器でカンカンと弾かれた。
やるなあ!
嵐のように振り回す鉾は、迂闊に近寄ったならず者を一瞬で粉微塵にしたぞ。
『ウグワーッ!?』
『バカが!! のけと言っただろうが! さあ行くぞ!!』
「まずいのじゃジョナサン! 魔導ワゴンはあの攻撃に耐えられん! 地を割るほどの攻撃など、人の域を超えておる!! じゃが! わしは運転しているので魔法が使えぬ! スピードが出すぎて方向転換もできぬ!」
「だったら、俺が方向転換だ! 肩車してるヴェローナと、腕で支えてるマリーナを……俺が回転して方向スイッチ!!」
「私が敵の方を向くってわけ!」
『なぁにぃーっ!? だがでかい銃だろうがこの俺には……』
「そこっ!!」
マリーナは一瞬で照準を合わせ、射撃した。
放たれた弾丸が飛び、使徒に迫る。
『なんのこれしき……なにっ!?』
小銃と比較して、あまりにも速度が早い。
そして狙いが正確。
どうやらマリーナは使徒の動きを見切っていたらしい。
やつの鉾が追いつくよりも速く、弾丸は使徒の防御圏内を突破した。
加速した弾丸が、使徒の兜を叩き割り、脳天に突き刺さり……貫通!
『ウグワァァァァァーッ!? 俺が! 俺が銃ごときに……!!』
この世界、銃よりも肉弾戦の方が強めだが、強い銃使いが戦えばやっぱり肉弾戦より強かったりするんだよな。
使徒はそのまま力なくぶっ倒れ……るところを走ってきた魔導ワゴンでスパーンと跳ね飛ばされた。
『ウグワーッ!!!!!!!!!!』
くるくる回りながら飛んでいくな……!
そして空中で爆発した。
ならず者連中はこれを見て仰天。
『ボスがやられた!?』『こ、こりゃあだめだあ!』『ボスについていけば女が手に入るって聞いたのに!』『嘘じゃねえかよー!!』
逃げ惑うならず者を襲うヴェローナの射撃!
ついには、敵軍は半分まで数を減らし……。
散り散りに走り去ってしまうのだった。
「ふう……。数だけは多いですわね。それにしてもマリーナ、やりますわね?」
「ええ! 知らないうちに私もパワーアップしてたみたい! ヴェローナが使ってない時に別の銃も使えるから、サポートは任せてよね!」
なんだか、女子たちの間に友情が芽生えたようなのだった。
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