第103話 投げの鬼、セレス!
「剛の拳も柔の拳も全く使う必要がなかった……。プロレス技すらほぼ使わずに使徒を倒すとはなあ」
我ながら、超絶レベルアップに驚愕だ。
それほど、マリーナとの叡智はこのジョナサンの肉体にとって特別なイベントだったのだろう。
「セレス、さっきの使徒でどれくらいのレベルだ?」
『超越者が差し向けてくる尖兵レベルですねえ。ああいうのがゴロゴロ出てくると思いますが、それでも不死の王国の幹部クラスの強さがありますよ』
「ああ、インフェルドンより弱いくらいなのか。道理で」
あの次元の連中相手なら技はいるまい。
それでも、恐らくは俺が戦った黒槍の使徒よりも強かった気がする。
俺はそのレベルなら、容易く蹴散らせるほどの実力を得たわけだ。
『なお、今の私でも鎧袖一触で』
「えーっ!? セレスお前そんな強いの!?」
『豊穣の女神は単一の女神なので役割分担とかしませんからね! 身を守るのもこの腕一つですよ!』
とか言ってたら、他にも使徒がいたらしい。
スラムのあちこちから、使徒が立ち上がってくる。
ボロを被っていた病気の爺さんが、突然ムキムキボディの乱ぐい歯な化け物になって襲いかかってきたり。
酒を飲みながら赤ら顔で座り込んでいたおっさんが、全身真っ赤な巨人になってこちら向かってきたり……。
「あ、いや、これ、超越者が今リアルタイムで使徒を作ってるな!? 素質ありそうなのが全部使徒になるところだ! よし、ここでセレスの力を見せてもらおう」
『いいですとも! ただ、今夜はあれですよ! ナルで実ってくださいね! 約束してくれるならやりましょう……』
「うっ、卑怯なり……! だが仕方あるまい。遅かれ早かれ起こることだ。」
『ははははは! 約束しましたよ! 女神との約束は重いですよーっ!』
中学生くらいの見た目のセレスが、巨人タイプの使徒目掛けてパタパタ走っていく。
いや、これ……。
足を高くあげない、地面を擦るような足さばき……!
パンクラチオンの走りか!?
巨人使徒が『もがーっ!!』と掴みかかった腕が、セレスの振り上げた手と触れた瞬間、ぐるんと背面にねじりあげられた!
あっ、いつの間にかセレスが巨人の背中に立ってる?
バキンッと音がして、巨人の肩が外れた。
『ウグワーッ!?』
苦痛に巨人がのけぞったと思ったら、その足元がふわっと持ち上がった。
空中を土台にした……バックドロップ~っ!?
超加速した反り投げが、巨体を後ろに放り投げる!
その使徒が、赤ら顔の巨人の胴体に突き刺さった!
『ウグワーッ!!』『ウグワーッ!!』
巨人の頭が使徒の胴体をぶち抜き、さらに地面にぶつかって爆散!
まとめて二人片付けただとぉーっ!?
セレスは手をパンパンと払いながら戻って来る。
なんだそのドヤ顔は!
いや、実力だけなら五将軍以上だろこれは。
この状況で、まだ力が戻りきってないのか?
豊穣の女神、恐るべし!
「せ、セレス様強いんだー」
「とんでもない実力ですわよ!? なんですのあれ!?」
「そうか、若造どもは知らなんだな? 豊穣の女神の名はあまり有名でないのじゃが、セレス様は別の二つ名で知られておったのじゃ。戦神の弟子にして幾多の邪神を血祭りにあげた女傑……勝利の女神セレス……!」
な、な、なんだってー!?
驚愕する俺!
なお、セレスはスンッとした。
『実りの邪魔をする者たちを蹴散らしたまでで、そんなものには大した価値はありません。そらそら勇者よ、まだ使徒がいますよ! 頼みました!』
「お、おう」
明らかになるセレスの真実!!
とか驚きながら、使徒たちに向かい合う俺だ。
次々に『もがーっ!!』と使徒が掴みかかってくるのを、力を利用して次々にいなし、空高く放り投げる。
柔拳の技である。
奴らは凄まじい怪力だが、だからこそ自分の力で自らをぶっ飛ばすことになる。
そして落下してくる使徒たち目掛けて、俺は拳を構えた。
「ツアーッ!! 連続! 天空突き!!」
練気、震脚とともに、使徒たちを迎え撃つ!
拳が使徒を捉えると、『ウグワーッ!?』と砕き去る!
次なる拳が使徒を砕き『ウグワーッ!?』さらに連続して放たれる拳が使徒を砕く『ウグワーッ!?』!
放り投げた使徒たちが、落ちてくる順番に砕かれて爆発していく。
落下途中じゃ、回避行動もできないからな。
入れ食いである!
最後の一体を拳で貫いた時には、俺の足元がクレーターのように深くえぐれていた。
使徒を倒すほどの拳撃が、反動で地面を穿つわけだな。
これにて、レイク王国を襲った超越者の手勢は全滅!
「雑兵レベルなら相手にならなくなったな……。というか、超強力な戦力が増えてしまった」
『私は基本的に勇者と一心同体ですから、勇者が実りを得てパワーアップしないと強くなりませんからね! それに、勇者がきちんとやるべきことをやらないと、私のやる気も上がりません!』
「分かった分かった! ちゃんと約束は守るから」
女神と約束するの怖いなあ!
これってつまり契約みたいなもんだからな。
超越者を倒す戦力として、セレスは特級レベルであるのは間違いあるまい……。
うまい感じで使い倒すためにも、そして今までのナルからのアプローチに応える意味でも……。
「では今夜はナルということで……」
「ボ、ボク!? や、や、やったーっ!!」
「くうーっ! 明日は中休みだからね!?」
マリーナの消極的許可をもらいつつ、今夜の実りの約束を取り付けたのだった。
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