第102話 凄いパワーアップしてるぞ!!
スラムに向かうと、ダイオン率いる騎士たちが苦戦している最中だった。
相手はボロボロの衣装を纏っているが、全身が人間の数倍に膨れ上がっているし、肩とか背中からトゲが生えているし、目が4つくらいになって口が耳まで裂けて歯がギザギザに……。
つまり、今回の使徒はクリーチャー系ということだ。
『くけけけけーっ!! 騎士たちがこんなに弱かったとはあーっ! あのお方の力を得た俺は、スラムの冴えないおっさんから最強の生物になったんだーっ! 最底辺のおっさんですが超越者から力をもらったら無敵になりました!~この力で好き放題します! 開幕だぜーっ!!』
「なんだとこのやろーっ!!」
騎士の一人が斬りかかる!
だが、使徒はこれを腕で受け止める。
刃が食い込むが、再生速度が早い。
盛り上がる肉に刃が押し戻され……。
「ば、バカな!! 攻撃が通じない!!」
『くけーっ!! 俺何かやっちゃいましたかねェーッ!!』
「うぐわーっ!!」
強烈に殴られてゴロゴロ転がる騎士!
あれはもしかして死んだのではないか。
「私に任せなさい!」
ここでマリーナ、ずんずんと戦場に歩み出ていく!
「マリーナそんなキャラだっけ?」
「私、ジョナサンと結ばれてから自分を抑えるのはやめたの。ヒール!!」
跪いたマリーナが、騎士の身体に手を当てて回復の魔法を使う。
すると、凹んでいた鎧が時間を戻すようにして元の状態になり、騎士も目をパッと開いた。
「!? お、俺は一体……!? マリーナ様!?」
「私が治しておいたわ。でも、あなたでは使徒相手はきついみたいね。ダイオン、勝てそう?」
「マ、マリーナ姫がジョナサンと!? そ、そんな……! 嘘だ……!」
なんか動揺してる!
そんな心の隙を使徒に突かれて、ダイオンが吹っ飛ぶ。
「ウグワーッ! しまった!」
ダメージは軽いようだが、マリーナが使徒の前に一人残される形に……。
『グヒィーッ!! な、なんていい女だーっ!! 俺のヒロインはっけーん!! 乱暴な騎士から救ったらなでポでゲットだぁーっ!! いただきまぁーっ……』
「さっきからメタなことばっかり言いやがってツアーッ!!」
俺、登場なのだ!
飛び込みざまのダイビングボディアタック!
『ウグワーッ!?』
これをもろに食らった使徒が、地面をバウンドしながら吹っ飛んでいった。
今回は吹っ飛び大会だな!
「無茶をするなよマリーナ。相手はチート主人公気取りの使徒だぞ」
「ジョナサンが守ってくれるんでしょう? わたしは回復魔法において、王国最高の使い手。守ってもらえるなら、王都の全員を癒やしてみせるわ」
マリーナが空に手をかざすと、そこから癒やしの魔法が王国に降り注ぐ。
使徒からダメージを受けていた連中や、なんと建物までもが元に戻っていった。
「マリーナパワーアップしてない?」
「多分、すっごくしてる。ジョナサンはどう?」
「俺はだなあ……」
『お、おのれーっ!! 邪魔をするなー!! 俺は! 俺は人生の噛ませじゃねえーっ! 俺は主人公なんだーっ!!』
飛びかかってくる使徒!
長く伸びた爪で、俺を切り裂こうとする。
だが、俺はこれを真っ向から受け止めつつ、首を傾げるのである。
「ダメージが無い……!! 硬気功も使ってないのにか? お前、今何かしたか?」
『ヒィーッ!! こ、これは……! まさか……まさか俺はモブ……!! 違う! そんな事があるわけない! 俺は今から! 力に覚醒してお前をぶっ倒して……!!』
嵐のように襲い来る攻撃。
だが、鍛え抜かれた俺の体には通用しない。
素人がプロレスラーにパンチするようなものだ。
俺は無造作に手を伸ばし、使徒の頭を掴んだ。
『ウグワーッ!? や、やめっ……』
「おらぁーっ!! ヘッドバット!」
『ウグワーッ!!』
「おらぁーっ!! 連続ヘッドバット!」
『ウグワーッ!!』
「おらぁーっ!! さらに連続ヘッドバット!」
『ウグワーッ!! あ、あ、頭がーっ!!』
頭が砕けかける使徒!
再生が始まらない!
なぜなら、俺の称号、魔人殺しが発動しているのである。
俺と戦う間、お前の不死性はなかったことになる!!
よろよろと後退る使徒に、俺は踏み込んでいく。
「ツアーッ!」
『ウグワーッ!!』
ナックル・パート……つまりパンチである!
執拗にぶっ壊れた頭を狙う!
これはプロレスではない!
今日は喧嘩だーっ!
「なぜなら、お前がマリーナを狙ったからだ! 間男滅殺! めっさーつっ!! ツアーッ!!」
『ウグワーッ!? 俺が、俺が成すすべなく~っ!! こんなヒロイックじゃない攻撃でェーッ!! 超越者様ーっ! は、話が違いますぅぅぅぅ! ウグワーッ!!』
使徒の頭が完全に吹き飛び、それでも喋ってたが巨体が一瞬大きく膨れ上がったかと思うと……。
ババーンと爆散したのだった。
爆発だとしゃらくさい!!
「ツアーッ!!」
俺のチョップが爆風を切り裂く!
なんか、爆発に対する逆位相的な効果を発揮したらしく、スンッと爆風が収まった。
「うーん」
戦ってみて、実感する。
「めちゃくちゃ強くなってる」
「強いわねジョナサン!! さすが、私の男だわ!!」
自分の拳をしげしげと眺める暇もない!
後ろからマリーナに抱きつかれた。
彼女の匂いと柔らかさを感じると、こう、むくむくとだな……。
「ああーっ、ジョナサンがまんざらでもない顔してる~!! で、でも悔しい~! マリーナ姫様は本当にジョナサンをものにしちゃってるし実力もあるから、ボクでは勝てない~! ううーっ!」
ナルがやり場のない感情にじたばた暴れている!
なお、すぐ横ではダイオンも地団駄を踏んでいた。
「なんだ!? なんだあいつの強さは!! 俺と戦ったときとは別人じゃねえか! あんなの、騎士団長の本気と同じかそれ以上……! くそっ、俺は認めねえ! 認めねえぞーっ!!」
気持ちは分かる。
ライバルキャラのはずが、周辺環境のインフレについていけずに置いて行かれるとか、あるあるだもんな。
なお、インフレしたのは俺の強さである。
「呆れた強さですわ……。ジョナサンは今回、相手を殴っただけですわよ。それであの化け物を封殺してしまいましたわ。あの強さ、まさに怪物……!!」
「うーん、ますます種が欲しくなったのう……!!」
女子たちのテンションも否応なく上がったりしているようなのだった。
『ハハハ、これは私が出るまでも無かったですね! 圧倒的ですよ我が軍は!』
おいセレスやめろ、それはフラグじゃないか!?
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