表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化、コミカライズ】王子様などいりません! ~脇役の金持ち悪女に転生していたので、今世では贅沢三昧に過ごします~   作者: 別所 燈


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/93

口喧嘩?

 名前はトマス・ベッカー。自分は伯爵の隠し子でエレンの異母兄だという。


 本来庶子である自分は後を継げないが、伯爵家の財産を分けてくれるといわれたから協力したと白状する。


 ローザはその話を聞いて、デイビスに憤りを覚えた。


 もちろん、己の欲望のために、ローザを亡き者にしようとしたトマスの所業も許せない。


「俺は破産寸前だったんだ。貧しさに耐えられなくて、だから仕方なく……」


 そう語り肩を落とすトマスを見ていると、少し気の毒にもなるが、イーサンがいなければ死んでいたと思うと恐ろしい。


(怖いわ! お金って人を狂わせるのね) 


 そういえば、前世ローザもお金を得るため、人生を切り売りし、社畜となっていた。


 ローザは金の恐ろしさに、改めてぶるりと震える。


 するとローザの肩を包み込むように、温かく大きな手が置かれた。イーサンだ。


 彼を見上げると、ローザをいたわるような視線を向けてくる。


 イーサンは何かを勘違いしている気がしたが、ローザはとりあえず取調官とトマスのやり取りを注視した。


 その後のトマスの話によると、薬はデイビスから直接受け取ったと話した。


「もしも、ローザ・クロイツァー嬢の暗殺に失敗したら、オリバー商会へ逃げ込めと父から言われたんです」


 デイビスみたいな屑を父と呼んでいることに驚いた。


「しかし、オリバー商会から門前払いを食らったということか」


 取調官の言葉にトマスが驚きをあらわにする。


「なぜ、知っているのですか?」


「最初からお前が犯人だとわかっている。わかっていて、泳がせたんだ」


 それを聞いたトマスはがっくりとうなだれる。


「俺は頼る当てがなくて、父の元へ来たんだ。それなのに、あの人は俺を家から追い出そうとした。だから俺をかくまわない気なら、全部役人にばらしてやると言ったんだ。そうしたら、納戸に隠れるようにと」


「そうか、モロー伯爵はお前が誰だかわからないと言っていたぞ」


 取調官の言葉にトマスは憤る。


「信じられない。俺があいつの息子だって証拠はいくらでもある」


(多分証拠なんて出さなくても……モロー伯爵に似ているわ。特に目元とか。なんで私、気が付かなかったのかしら)


 しかし、隠し子がいるなど思いもよらなかった。


「それにしても、モロー伯爵はひどい人ですね。オリバー商会に見限られて自分の息子まで利用するだなんて」


 ローザはセンスをぱっと開いて口元を隠し、イーサンにささやく。


「まだ裏付けは済んでいないから、トマスの話がどこまで本当かはわからないよ」


 ローザはイーサンの慎重な言葉にいったん頷くと、再び口を開いた。



「でも、こうなるとエレン様はどうなってしまうのでしょう?」


 イーサンはそれには首を振っただけだった。


 トマスがおちたところで、サロンにデイビスとエレンが呼ばれた。


 エレンは顔面蒼白で、ローザの顔を見てひどく驚いた様子だ。


「なぜ、部外者であるローザ様がこの場にいるのです?」


 泣きそうな顔で騒ぎ立てるエレンに、ローザはカチンときた。


「部外者じゃないわ。私は、今回は被害者なのよ」


 胸を張って被害者面をするローザを、イーサンも止めなかった。


 エレンは悲しそうに取調官に縋りつく。


「お願いです。家の恥をローザ様に見られるのは嫌なんです」


 しかし、取調官はそれをあっさりと突っぱねた。


「クロイツァー嬢は大事な証人でもあるからそうはいかない」


(でもこれって、私がエレン様に恨まれる流れでは?)


 難しいところではあるが、ローザはなんとしても真相を知りたい。


 漫画の中では恐らく語られていなかったローザ・クロイツァーが殺された理由はなんだったのだろう。


 たとえ、エレンに恨まれたとしても、彼女は心の優しく忍耐強いヒロインのはずなので、ローザを殺したりしない、ならば犯人はデイビスだと勝手に結論付ける。


 一方、デイビスは、ローザよりイーサンを見て驚いたようだった。


 しかし、何かを言うことはなく、指示されるままにソファに座る。


 ローザは固唾をのんで二人の様子を見守った。


 だいたいローザはアレックスではなく、イーサンと婚約している。


 ならば、ローザを殺して、デイビスにいったい何の得があるのか、それが知りたい。


 追及を逃れられないと悟ったのか。デイビスはとんでもないこと口走る。


「計画を立てたのはエレンだ」


 これにはローザも度肝を抜かれた。


「ひどいわ、お父様がオリバー商会を使って、計画をたてたのではないですか。私が、アレックス様と婚姻しなければ、うちは終わってしまうからとおっしゃって……」


 同情を誘うように、涙ながらにエレンが語る。


「とんでもなく屑な父親ね」


 ローザは小声でぼそりと隣のイーサンにつぶやいた。


「まあ、成り行きをみてみよう」


 感情を高ぶらせるローザとは違い、イーサンは妙に落ち着き払っている。


「この国の王子と婚姻するから、その伝手で、貴族への販売ルートが開くとオリバー商会を味方につけたものの、いつまでも婚約できなくて見限られたというわけか」


 取調官の言葉にエレンは頷く。


「なぜか、アレックス様はローザ様に執着なさっていて」


 エレンがちらりとローザを見る。

 どうやら、ローザにあてつけて言っているようだ。


「私はきちんとお断りしたわ! それに今はイーサン様と婚約しているの」


 ついつい口を挟む。


「でも、ローザ様が、アレックス様に何かを言い含めたのではないですか?」


「はあ? 全く付き合いもないし、殿下とはお話しすることもないのだけれど?」


 エレンの言っていることがさっぱりわからなくて、ローザは思いっきり首を傾げる。


「だって、おかしいじゃないですか? それならば、なぜアレックス様は私と婚約してくださらないのです? アレックス様はグリフィス閣下が、王位を狙ってローザ様と婚約したとおっしゃっていました」


 エレンの言葉にローザはぎょっとして、隣のイーサンを見上げる。


「え? 閣下、そうだったんですか?」


「なんで君が言いくるめられているんだ。そんなはずはないだろう? 君だって、私の日常は知っているはずだ」


 イーサンが意外にも少し傷ついたような顔をする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ