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【書籍化、コミカライズ】王子様などいりません! ~脇役の金持ち悪女に転生していたので、今世では贅沢三昧に過ごします~   作者: 別所 燈


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イーサン効果

 

 イーサンとの婚約効果はすごかった。一部の令嬢たちからは反感を買ったがそれは平常運転で、反対派閥はおおむね好意的だった。


 なぜなら反対派が、これでクロイツァー家が王族に食いこむ心配がないと判断したからだ。


 ローザはこれを密かに「イーサン効果」と呼びほくほくとしていた。


 そして今、ローザとイーサンは王都一人気のカフェにいる。


 混みあったカフェの中で二人は注目の的だ。


「こんなに人が集まるところに来る必要ありました?」

 ローザが首をほぼ九十度に傾げ、疑問を口にする。


「あるに決まっているだろう。婚約したというのに全く会わなかったら、それこそ問題だ。今後は、たまに人が集まるところに出て、注目を浴びて帰ることにしよう」

 イーサンはしっかり計画を立てていた。


「なるほど、デートをしていたという既成事実を作るわけですね」

 偽装婚約もなかなか難しいものだとローザは思う。


「そういうことだ。ではこれから、君のドレスを買いに行こう」

「え? 私の買いものに付き合ってくださるのですか?」

 ローザが驚くとイーサンが首を振る。


「違う。近く王宮で夜会が開かれる。その時のためにドレスを買っておくんだ。私が君に贈らなければ、意味がないだろう」


 この国では、大きな夜会があるときは婚約者にドレスを贈る習慣がある。面倒くさいとローザは思う。


「さすがにそこは省きましょう。私は自分で好きなものを買います」

「そういうわけにはいかない」

 きっぱりと言ったローザだったが、イーサンに即座に却下された。ローザは紅茶を一口飲むと、ため息をつく。


「あまり派手に動くと婚約を円満解消するときにまた話題になりますよ」


「どのみち話題になるだろう。ではドレスを買いに向かおうか。ああ、先に言っておくが、店のドレスを買い占めるのはなしだ。オーダーメイドで二、三着くらいか」


 いきなりローザの大好きな成金買いが封印されてしまった。


 今ではローザの「ここからここまで」は語り草になっていて、王都で知らない貴族はいない。


『なぜオーダーメイドにしない?』『名門貴族令嬢が成金買い?』と摩訶不思議に噂されている。


「はあ、婚約って窮屈なんですね」


「君がかわっているんだろ。期間限定なんだ少しの間我慢してくれ」

 こんな会話をしている間も、二人は笑顔をたたえていた。


 仲良しアピールである。


 ローザが洋ナシのタルトを食べ終えるとイーサンが言った。


「では、これから買い物に行こうか」


 イーサンといるとどうしても注目を浴びるのでローザは仕方なく、笑顔で立ち上がった。


 エスコートされて、ローザはグリフィス家の馬車に乗る。


「君、笑顔が所々硬いよ。顔が引きつった時はせめて扇子で口元を隠してくれ」

 向かい側に座るイーサンに、早速ダメ出しをくらった。


「閣下は完璧主義なのですね」

「イーサンだ。クロイツァー嬢」

「わかりました。イーサン様」

「よろしく、ローザ」


(面倒だわ。でも面倒くさいのは閣下も一緒よね。女性たちから逃げ回るより、こっちの方がましってことかしら。そういえば、私もこっちの方が殿下に求婚されるより、ずっと楽だわ)


 毒殺の危機が遠ざかってほっとしていると言うのもあるが、ローザはイーサンに対してアレックスほど気を使っていないことに気が付いた。


 なんだったら、デートの途中に商売の話もできる。



 ◇


 イーサンとデートをした次の日は、仕事がたまっていて大忙しだ。


 まずは母の手伝いで使用人の教育を手伝う。立派な使用人ひとり育てるのに、どれだけ大変かを経験した。


 というかその教育係の使用人が辞めてしまったから、このような事態になっているのだが。


 そのあと、ローザは店の様子を見に行く。


 店は以前にもまして活気に満ちていた。


 ローザがいなくても大丈夫そうだ。いよいよローゼリアン二号店が見えてきた気がする。ヘレナあっての話だが。


 そのヘレナがバックヤードの前に仁王立ちしていた。


「お嬢様、私はお嬢様の侍女でございます!」


「ははは、ごめんね。ヘレナ、つい忙しくて、あなたに店を任せてしまって」


 ローザは取りあえず、ヘレナの追及を笑ってごまかす。

 確かに彼女には悪いことをした。


「お嬢様、私はその間に売り子を育てておりました」


「確かに店の子たちの動きが違うわね。店も活気があっていいかも。あなた店長に向いているじゃない! 人を使うのも上手だし」


 ローザはストレートに本音を口にした。


「それは違います。お嬢様、私は店長にうってつけの素晴らしい人材を見つけたのです」

 ヘレナが力強く言う。

 

「え? 素晴らしい人材って?」


「もちろん、お嬢様が雇った売り子の中からです」


 売り子はローザが面接しているので、わかっているし、だいたい見当もつく。


「ええっと、アンを店長代理に仕立てたいのかしら?」


 ローザの言葉にヘレナが力強く頷く。


 どうやらヘレナは侍女の立場を取り戻すべく、ローザの元に直談判にやってきたようだ。


(ヘレナは大切な侍女だから、そんな心配しなくても大丈夫よ?)



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