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【書籍化、コミカライズ】王子様などいりません! ~脇役の金持ち悪女に転生していたので、今世では贅沢三昧に過ごします~   作者: 別所 燈


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急展開1

「え? ジリアンと連絡が取れないですって?」


 ここは『ローゼリアン』のバックヤードでローザの執務室である。報告に来たのはヒューだ。


 ちなみにヘレナは現在店で顧客対応中だ。


「小劇場でも聞いてみたのですが、一週間ほど誰とも連絡が取れないそうです」


 ローザは、ジリアンの居場所を定期的に知らせてほしいと、ヒューにお願いしていたのだ。


「どこに身を隠すか知らせろと言ったのに。当てにならない証人ね。追加料金を支払うって言ったのに。お金にがめつく見えたんだけれど、そうでもなかったのね」


 ため息をついた。


「俺にもそう見えました。どこかに金蔓を見つけたのかもしれません」

 ヒューが淡々と語る。


「マーピンもよくそんな人使うわね。それともジリアンはダミーで、本当は別の人物を使っているとか? 私、騙されたのかしら?」


 ローザは一気に脱力した。

 モロー家を疑ったが、違ったのかもしれない。


「それはないと思います。少なくともマーピンはお嬢様には客になってほしいと思っているはずです。金を受け取っておいて嘘の情報を流すとは思えません」


「え? そう? 鼻であしらわれているような気がしたのだけれど」


「そんなことないと思います。でないと情報屋はつとまらないので。俺は他の事情で、ジリアンが消えた気がします。あの女、何かを隠していたのではないでしょうか?」


「ええっと、それはあの時真実をすべて明かしたのではないってこと?」


「それか、お嬢様が訪問したことによって、何かに気づいたのか?」


 ヒューの意見になるほどと思った。だが……。

 

「どのみち、ジリアンと連絡がつかないのではね。はあ、私のお金が……」

 ローザががっくりとうなだれる。


「いえ、お嬢様。無駄にはなっていないと思います。少なくともオリバー商会の情報は本物です」


 ヒューにもヘレナにも、父から聞いたオリバー商会の話はしていた。


「まあ、そうよね。ありがとう、ヒュー」

 ローザは気を取り直した。


「お嬢様、俺は小劇場の周辺でジリアンの聞き込みを続けます。なんだったら、あの女を見つけて連れてきましょう」

 ヒューが強硬手段に走ろうとしている。


「いえいえ、それはだめよ。下手したら監禁よ。そこまでしなくていいわ。別の方法を考えましょう。ジリアンに会えなかったと言って、あの情報ギルドにオリバー商会を調べさせてもいいし」


「それは職業倫理上どうでしょう? マーピンがやるとは思えませんが」


 ヒューらしい答えだ。


「マーピンなら、お金をつめばやってくれる気がするわ。まあ、当てにならないジリアンを追うより、何か他の手を考えましょう」

 ローザはため息を一つつくと再び口を開いた。


「今日はご苦労様。しばらく休憩してから、持ち場に戻ってちょうだい」


 ヒューをねぎらって、特別手当をだそうとローザは考えた。

 すると彼が部屋を出ていくのと入れ違いに、ヘレナが入って来た。


「お嬢様、閣下がお見えです」

 ヘレナの後ろから、イーサンが顔をだす。


「バスボムでしたら、まだお出しできる試作品はそろっておりませんが……」


 なにやら、せわしない一日になりそうだ。


「今日はその話ではないんだ」

 心なし、イーサンの顔色が悪い。

 

 また、アレックス関係で何かあったのだろうか。ローザは上客であるイーサンを執務室に招き入れる。


(そろそろ商談用の応接室を作らなければね。でもその予算を作業場の増築にまわしたいのよね。そうだわ。こういう時こそお父様のお金を使いましょう!)



 ローザが脳内で自己解決していると、ヘレナがいつもどおり、茶と茶菓子を出す。


 バックヤードは狭く雑然としているが、茶と菓子は一級品なのだ。


「実はジリアンのことで話があるのだが……」

「ジリアンですか? ちょうどその話をしていたところなんですよ。実は彼女と連絡が取れなくなってしまって困っているんです」


 ローザは眉尻を下げる。

 

「そのジリアンが遺体で見つかった」

 イーサンは少し憂鬱そうな表情で告げる。


 しばし沈黙の後、ローザは叫んだ。

「え? 何ですって!」


 その瞬間、バタンとバックヤードの扉が開かれた。


「お嬢様、どうなさいました!」

 ヒューが飛び込んできた。


「ごめんなさい! ヒュー、ちょっと驚くようなことを聞いてしまって」

 油断のない目でイーサンを見る。


「ああ、閣下は何でもないのよ。それより、あなたは今休憩中じゃないの?」


「いえ、もう充分です」

 ヒューが言い切る。


「しょうがないわね。ヒューもヘレナも働き過ぎよ。二人ともお茶でも飲んできなさい」


 そう言ってローザが金を渡そうとする。二人は同時に首を振った。


「素晴らしい。使用人たちだね」


「そうなんです。でも彼ら、ちっとも休んでくれなくて。ヘレナは私の専属メイドで、ヒューは護衛騎士のはずなのに、二人も店まで手伝ってくれているんです。ここで、一緒にお茶を飲ませていいですか?」


「ああ、私は構わないよ」


 しかし、ヘレナとヒューは遠慮するので、最終的に執務机から少し離れたところにある木製の丸椅子に腰かけて彼らは休むことになった。


「それでお話の続きなのですが」

 ローザが先を促すと、イーサンが頷いた。






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