表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化、コミカライズ】王子様などいりません! ~脇役の金持ち悪女に転生していたので、今世では贅沢三昧に過ごします~   作者: 別所 燈


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/93

夜会2

「アレックス殿下もたいへんなんだよね、第三王子だから。あちらこちらの派閥を回って気を使わなければならない」


 フィルバートが、去っていくアレックスの背中を見て、わずかに同情したように言う。


「まるで蝙蝠ですわね」

「おいおい、めったなことを言うものではないよ」

 ローザの辛辣な言葉に顔をしかめる。


「はい、それも処世術の一つですものね。でも将来王太子の地位を得てしまえば関係ないのではないですか?」


「アレックス殿下が王太子? ありえないな。うちの後押しがない限り無理だろう。アルノー派の人間は第一王子を推しているからな」

「政治の世界もいろいろ複雑怪奇ですのね」

 ローザは絶対に関わりたくないと思う。


「だからうちは中立派がどう動くか、常に注視していなければならない」


 なるほど、それで中立派の貴族とうまくやり始めたローザは、家族に褒められたのかと納得した。


「しかし、ローザが頭を悩ますことではない。お前はバスボムを売れ」


「そういえば、私は小さなお店を持つのが夢でしたのに。いつの間に大きな野望に変わってしまいました」


(なんだか、純利益が右肩上りないなるのが嬉しくなってきたわ。もしや前世の繰り返しでは? 私、社畜化してる? 人に使われることはないが、金に使われている気がする)


 優雅な貴族令嬢の生活が遠のいていく。

(これではいけないわ!)

 また父の金で、宝飾品やドレスでも爆買いするかとローザは思う。


「ローザ、商売の道というのはそいうものだ。それがクロイツァーの血だ」

 決め顔でフィルバートが言うのきいてげんなりした。

(だからクロイツァー家は、元は建国の騎士で、今は富豪貴族なのに……)


「はあ、何か嫌ですわ。でもお金が増えるのは嬉しいです」


 ローザにとって、お金イコールクロイツァー家の逃走資金であった。


 そこでローザはハタと気づく。


「やはり、私がアレックス殿下と婚約しない方がいいですね。派閥間で摩擦が起こります」


「どう転んでもうちは利益が出るように動く」


 フィルバートが自信満々に言う。その結果がローザの毒殺なのかもしれないのに。ローザはぶるぶると首を振った。


「いえいえ、平和に過ごしましょう。争いごとはいけません」

「何を言っているんだ。命までとられるわけではないし」

 そう言って兄は気楽に笑う。


(いや、それが私だけはとられるんだな)


「はあ、アルノー派の方とお話ししたかったのですが、残念です」


「お前、気づかないのか? 見えない厚い壁があるだろう」


 それはローザも気づいていた。アルノー派とは挨拶こそすれ、つけ入る隙は全く無いのだ。


「ええ、とっても良く見えていますわ。鉄の壁が」


 あとはヘレナとヒュー頼みだ。

 ローザはため息をつくと立ち上がる。


「お兄様。私、バルコニーでちょっと黄昏(たそがれ)て来ます。お兄様は商……ではなく、社交に励んでくださいませ」


「お前はなんてことを言うんだ」

 フィルバートは肩をすくめると、ローザと離れた途端に迫ってくる淑女たちを上手にかわし、紳士の群れの中に消えていった。


 あわよくば、いくつか商談をまとめるつもりなのだろう。

 我が兄ながら、実に商魂たくましい。


 ローザは考えを整理すべく、バルコニーへ向かった。


 一歩バルコニーに足を踏み入れると、素晴らしい眺めが目に飛び込んできた。


 庭園には常夜灯がぽつりぽつりとともり、その先に街の灯が輝いている。


 そのせいか、点々とカップルがいる。

 

 ローザはため息をつきながら、カップルの邪魔をしないように隅の方へ移動した。


 夜風にあたり、頭を冷やす。

「クロイツァー嬢」


 のんびりしているところに突然声をかけられ、ローザは臨戦態勢に入る。


 振り返るとヤツがいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ