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【書籍化、コミカライズ】王子様などいりません! ~脇役の金持ち悪女に転生していたので、今世では贅沢三昧に過ごします~   作者: 別所 燈


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仲良くしませんこと?1

 ローザは自分のクロイツァー家の派閥ばかりが集まらない夜会を選んだ。


「おい、ローザ。何を考えているのかは知らないが、どうしてあまりうちの派閥の集まらない夜会を選んだんだ? いくらバスボムの売り上げが好調だといっても、まだこの中で売り込むのは難しいのではないか?」


 エスコートでついて来た、フィルバートの言うとおりである。

 

 会場にいるものの三分の二がクロイツァー家の派閥ではなく、中立派と第一王子を擁立するアルノー公爵家の派閥なのでアウェイ感が半端ではない。


 ちなみに家格はクロイツァー家よりアルノー家の方が高いが、実質的にはクロイツァー家の方が古く、歴史もあり財力もあるのだ。


 しかし、表立ってクロイツァー派とアルノー派の摩擦は今のところはなく、おおむね平和な状態である。


 つまり、ローザが前世を思い出す前のようにアレックスを追い駆け回し婚約者になってしまうと、この均衡は崩れ表立って敵対するようになることも十分にありうるということだ。



 もちろん原作にはそのような描写はない。なぜなら、ローザは第一章で退場する脇役モブだから。


(ほんとモブって情報少ないわね。もしかしたら、アルノー派の誰かに毒殺されたのかも?)


 これに気づいたローザは初めて馬に蹴られてよかったと思った。


 前世の記憶により、社畜根性が目覚め、煽り耐性が付き、彼女は賢くなっていた。


 とりあえず、ローザはアルノー家の派閥の人間を毒殺犯Bグループとした。


 もちろんイーサンもいまだに毒殺犯その一から外せない。そして彼は『ローゼリアン』の太客予定である。


 クロイツァー家は味方も多いが敵もそれなりにいるのだ。


「ローザ様!」


 声に振り返ると、そこにはポピー、ライラ、エマ、ローザの心強い仲間たちが――。


 気付いたときにはローザはいつものぬるま湯で楽しくまったりと談笑していた。


(はっ! これではいつもの夜会と同じじゃない。今日は噂の出所を探りに来たのよ。私はこのぬるま湯から飛び出して生き残るわ!)


 固い決意のもと、ローザは立ち上がり即座に行動を開始した。


「まあ、ローザ様どうなさったの?」


 突然立ち上がったローザに、驚いたようにライラが声をかけてくる。

 その間にローザはターゲットを確認。


「皆さま、ちょっと失礼いたしますわ。ほほほ」


 ローザは微笑みながら、扇子を優雅に扇ぐ。


 皆、ローザが化粧室に立つのかと思い快く見送った。


 しかし、今日のローザは一味違う。彼女は眼を鋭く光らせターゲットをロックオン。


 優雅に獲物の元に向かう。

 

「ジュリエット様! お久しぶりですわね?」

 以前のマウンティングとは逆パターンだ。

 それにマウンティングの勝敗もついている。


「うわっ! ロ、ローザ様、お久しぶりでございます?」

 いきなりのローザの出現にジュリエットは泡を食って令嬢らしからぬ奇声を上げた。それも無理からぬことだろう。


 なめ切っていたローザに前回手ひどくやられたのだ。


 だが、ジュリエットは素早く体勢を立て直し、ローザに向き直る。


「今日は、お話があってお伺いしましたの。ちょっとあちらの軽食コーナーに二人で行きませんこと?」


 ローザは会場の隅を指さす。


「まあ、それは少々強引ではなくて? 私はいま友人たちと……」

 そこで、ジュリエットは取り巻きたちが自分から距離をとっているのに気づく。


 彼女の取り巻きは実に薄情なのだ。


「え? なんですの? ご友人たちがどうかして?」

 ローザがにっこりと微笑み首を傾げる。

 

 その後、ローザは取り巻きから距離を置かれたジュリエットを会場の隅に設置されているテーブルに連行する。


 顔を引きつらせているジュリエットのために、とりあえず給仕から受け取った果実水を渡す。


「まあ、そんなに緊張なさらないで」

 ローザは微笑みながら、果実水を口にする。

「で、私に何の御用ですの?」

 ローザにビビりながらも、ジュリエットは虚勢を張り、果実水に口をつける。


「実はあなたに試してもらいたいものが、あって」

「な、なんですの?」


 ジュリエットは身構える。

 ローザはジュリエットから情報を得るため、袖の下を準備してきたのだ。


「プレゼントです」

「は?」

 ローザがテーブルの上にラッピングした箱を出す。

「これは新作のバスボムですの」


「な、なんで、どうして私に?」


 ジュリエットの目が大きく見開かれる。

 ちょっと前まではライバルだったが、こうしてみると結構反応が素直だ。


 隠し事が苦手なタイプだろう。


 だから、ローザにも正面からぶつかって来たのだ。よって、そんな正直である彼女が噂のおおもとであるわけがない。


 そもそもイプス家は日和見の中立派で、クロイツァー家と対立しているわけでなかった。


「仲直りのしるしですわ。私たちよく考えてみたら、いがみ合う必要がないのでは?」

「……」


 ジュリエットが疑り深い眼差しをローザに向けてくる。

 ローザはもう一押しすることにした。


「第一、私は最近殿方がいらっしゃる夜会や茶会には出ておりませんし、アレックス殿下のことも追いかけておりませんから」


 単刀直入なローザの言葉にジュリエットは目を見開いた。


 これでご納得いただけただろうか?


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