1 その頃の佐波
正午にも迫ってきた時間帯。
人によってはもうお昼ご飯を食べている時間帯かもしれない。
住宅が集まっている団地の大きい家、そこで私はいた。
私は佐波代美子、天川君と同じ高校に通う高校三年生。
今は自宅で休んでいるところ。
ダンジョンが出ないか見張りはしているけど、休みも必要だから、こうして休んでいる。
「天川君がああいっていたから気を付けないといけないけど、休める時には休まないと」
天川君が言うにはダンジョンのモンスターの動きが変だということで、気を付けてほしいとのこと。
なので、見張りの時は念入りにしていた。
ただ、この見張りもいつまで続くか分からないから、気を張り詰めすぎないように気を付けている。
ソファーで座ってくつろいでいたところ、私のお父さんが寄ってくる
「休憩というところか、代美子?」
お父さんが声をかけてくる。
冒険者のことをお父さんには少し前に話した。
聞いて驚いた様子を見せたけど、それからはあまり言われなかった。
怒られるかと思っていたのが私の印象だけど、それもなかったのは良かったことかもしれない。
「うん。ちょうど見回りしていたところで家の近くだったから」
ただ、聞きたいことについて言葉に出してみたのだけど、それについては教えてくれなかった。
時期が来たら教えるという話だけど、いつ教えてくれるのかまではいっていない。
もしかすると、そのままはぐらかしてうやむやにするのかも。
聞いてみたい気持ちもあるのよ。
でも、それを聞いたら大事になる予感もして正直聞かない方がいいんじゃっても考えちゃう。
だから、このままの方がいいのかもしれない、そんな気持ちもある。
「代美子がこうして戦う力を身に付けるなんてね……」
「その、私も戦えるようになりたいって思っていたから、天川君に協力してもらって」
私からこう語る。
そこで、窓からの光が急に止んでしまう。
正午近くの時間帯なのに。
「……あれ急に暗くなったな? 予報で曇るって言っていたか?」
「予報では今日は一日天気が崩れないって話だよ」
この時間帯で急な天気の変化。
日常でもたまにはあるけど、それにしてはどこか異質な感じ。
「……これは曇るって表現ではないな。なんと言うか夜になったっていうべきか、陽射しが全くないな」
「そうね。なんだろう……?」
私もお父さんと同じく窓を見る。
ただ天気が崩れたとは言えない、異様な光景だった。
すると、何か変な声が外から聞こえてくる。
「あれは……な、なんでだ!? なんであれが……!?」
窓を見ると、だ。
鳥が飛びまわっていた。
しかも、その大きさは私がよく目にするような大きさでも、見た目でもない。
角も生えていて、大きいのと小さい羽が二対ついていた。
「モンスター……鷹っぽいモンスターだ……」
そのモンスターを見て、私は驚くしかなかった。
夜にしか出ないと言われていたモンスターが正午近くに出ている。
夜のようになれば出てきそうだという理屈は理解できる。
でも、この時間帯に出るなんて予想が出来ない。
お父さんの方を見る。
緊急の事態だ、慌てている様子なのかも。
だけど、その予想に反して、いつも以上に冷静な目でお父さんは見ていた。
「代美子、こんな状況だが……重大な話をする」
「え……? うん」
まさかの展開。
でも、重大な話と言われれば、拒否はできないよね。
人妻を開けてからお父さんは話した。
「実はな、お父さんもかつて冒険者だったんだ」
「そうなの?」
この聞いた話、驚きしかない。
その話を聞いて、何かがつながる気がする。
「今は遠くにいる母さんも冒険者でな、あの時の母さんはとても美人だったんだ。今では面影なんてないけどな」
「そ、そうだったの。お母さんは昔はなんだかんだって言っていたけど」
「で、モンスターと戦っていた時期もあって、二人ともその時に魔法も使っていたんだ。今でも少しは使える」
「もしかして、区間のリーダーになっていたのって、その経験もあってなの?」
今でも魔法を使えるのは意外ね。
冒険者を辞めたら、力もなくなると思っていたから。
特にそういう話も聞いていないけど、私が勝手にそう思っていただけではある。
遠くから轟音がしてきた。
「そうだ。で、代美子が魔法も使えたって聞いた時は驚いたよ。子供にも魔法が受け継がれる場合もあるんだなって」
「魔法が使えたのって、二人とも冒険者だったからなの……」
私がダンジョンで魔法が使えた理由が分かった。
父母とも冒険者であれば、納得できる。
轟音が近づいてくるような感じがする。
モンスターの声も騒がしくなってきた方だが、その轟音は異様に耳につく。
お父さんは窓から離れていった。
「こんな状況で話に付き合わせてごめんよ。でも、きっと……この機を逃せば話はできないかもしれない。この話はダンジョンの騒動が収まってから話すつもりだったんだけど」
「その……ありがとう。でも、お父さん何をするの?」
移動してしゃがんだお父さんは床の一部を取り外すと、そこから武器を取り出して、伸ばす。
武器は槍のようで、伸ばした長さは5Mはあると思う。
「冒険者の時の武器はないけど、こういう時のために戦える武器は用意しているんだ。ちょくちょく慣らしで使っていたから、なまりもないからな」
「それは分かったけど……それで何を?」
「すごい音が聞こえるだろ? お父さんはこの音を冒険者の時も聞いたことがある。聞いて以降、冒険者を止めることになるのも話しておくか」
「え? それって……なんだか嫌な予感がするの」
私は素直に感情を言葉にする。
お父さんは覚悟を決めていたかのようだ。
だからこそ、こんな状況が嫌だった。
轟音がさらに近づいてくる。
うちに近づいてきたのが、誤魔化せないくらいに。
「ベルガラグナと言われる個体がうちへと向かっているようだな。だが、心配いらない。お父さんがあいつを倒してくるから、代美子は逃げろ」
「だ、だったら私も……」
「心配するな、代美子! お父さんはな、女のために命を貼って100%生還しているんだ! お母さんの時にもこういうことをやって生還しているから心配いらないぞ!」
「そ、そんな……」
お父さんは私に向かって自信に満ちた笑顔で答えるも、私は困惑するしかない。
「行くんだ、代美子。ここ以外の安全な場所があるはずだから、そこへと……それか天川君の所へ」
お父さんはこう告げた。
正直言えば、お父さんと共に戦いたい。
でも、それはきっと間違った選択。
私が離れてお父さんも助かる道はあると思っていたから。
その道を掴むために私は離れるべきだと決意をした。
「……分かった。お父さんも絶対に安全な場所で、また会おうね」
「ああ、必ず……」
そう言うと、お父さんは家の玄関へと向かう。
私も玄関へと向かって靴を履く。
これから戦闘するかもしれないけど、戦闘に使うものはすべてアイテムボックスに入っている。
準備自体は出来ていた。
外に出る準備も出来て、玄関のドアへとお父さんと一緒に向かう。
無意識にお父さんの手へと手を伸ばして握っていた。
握ったのは何年ぶりなのかな。
私も手は大きくなったけど、やっぱりお父さんの手は大きいってのが分かる。
お父さんも私の手をのけることなく、そのまま外の道へと歩いて行った。
そして、私は見た。
数多くのモンスターを。
更には黒く四足歩行のモンスターも
それは家のブロックや庭の木々を簡単に踏みつぶして、近づいていた。
情報は全く聞いていない。
でも、はっきりとわかる、あのモンスターだと。
「あれが、ベルガラグナ……あっ……」
私が呟くと同時にベルガラグナは視線を向けていた。
牛のような角の生えた黒いモンスターで、大きさは一軒家よりもでかい。
それが私へと狙いを定めていたような気がした。
「ベルガラグナ! あの時とは違う奴のようだが、また会うとはな!」
お父さんはそう言って、すぐにベルガラグナへ一跳びをした。
飛んだ後に武器を振ってモンスターへと斬撃を当てる。
ベルガラグナは角でお父さんの斬撃を弾いた。
あのモンスターはお父さんだけで倒すといった。
この場で留まるわけにはいかない。
私は家に面する道を走ってここから離れた。
「お父さん……また、絶対に、会おうね……」
振り返らずにただ真正面を見て、私は走った。
そしてアイテムボックスを出して、装備品を取り出す。
ここからはモンスターとの戦闘があってもおかしくない。
その戦闘があったときは私の力で何とかしないといけないから。
*佐波さんのステータス
名前:佐波代美子
種族:人間
LV:15
職業:冒険者
所属:エルドシールダー
撃破ポイント:0
耐久力:1600
魔法力:1800
攻撃力:1200
防御力:1000
機動力:1600
技術力:1100
魔法威力:1600
スキル、魔法欄
・ウィンドサイス:LV5
・ウィンドボール:LV3
・ウィンドラッシュ:LV1
・武器化:LV2
・ダンジョン解析:LV3
・両者HP公開:LV2
・スキル回収




