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12 王への決意

 幸前とフェリアからの大技を受けて黒い煙がヴェルナの周りに漂っていた。

 状況は確認できないが動きもないため、倒したとみてよさそうだ。

 油断はまだできないが、不意を突いての攻撃もないだろう。


 狐燐さんも時間が経ってこの場からいなくなっていた。


「わたくしの援護もいらないとは……まあ、最後に大技を決めることも出来たのでよしとしますわ」


 フェリアからの呟き。

 結果的に援護せずにこっちで済んでしまったのは悪い気持ちだ。


「悪かったよ。せっかく援護してくれるって言うのに無駄になったのは」


 俺からの謝罪。


「いえ、いいと思いますわよ。援護してもどうしようもないという状況よりはずっといいことですわ」


 フェリアもあまり気にしている様子がないようなので、それは何よりだ。

 そんな会話をしていると、煙が晴れていく。


 するとだ。


「まだだ、私は倒れるわけにはいかない……倒れてしまえば、あの国のみんなはただの悪党としてかたずけられてしまう……」


 ヴェルナはふらつきながらこちらに歩み寄っていた。

 人間の姿に戻っていたが、それでも光に包まれることもない。


 タフネスがすごい。


「あれを受けても立ち上がれるなんて……」


 俺はその姿に驚愕の言葉を出した。

 執念というか、背負うものがすごいのか。


「まだ、まだ戦いは終わっていない!」


 ヴェルナは手を向けると、地に落ちていた円盤の一枚が俺へと向かっていく。


「な! 避けて! 当たったらどうなるか!?」


 フェリアからの指示。

 確かに避けた方が無難だろう。


 だが、俺は敢えてそれに従わずに、立ち止まる。

 円盤が俺へと届く。

 一秒もせずに俺へと当たるだろう。


 しかし、その円盤を俺は手でつかんで、攻撃を受け止めた。

 円盤は俺へと向かおうとするも、俺の握った手の力がそれを許さない。

 握っている間も力は働いていた。

 しかし、次第に向かう力は弱くなっていき、ただの無害な円盤へと変わる。


「最後の力だったんだろうな。これ以外にできなければ、もう本当に戦闘能力がなくなったということだけど?」


「くう……」


 ヴェルナはそう言うと何もする様子を見せない。

 俺の推測通り、立ち上がることはできるが、もう戦闘する力は残っていないようだ。

 何か攻撃手段があればただ黙っているはずがないから。


 これで目の前の少女はただの人間だとも言えた。


「後はお前を倒せば、このダンジョンもクリアだし、危機も去るという訳だ」


「……」


 悪あがきとしてヴェルナはにらみつける。

 俺は円盤を横に投げてから、そちらの方へと向かう。


「でもさ、一ついいか?」


「何だ?」


 ヴェルナの確認の後に、俺は立ち止まった。


「俺はちゃんと話し合えば、お前たちが悪いことをしないと思っているんだよ。少なくとも悪いことをしないといけない理由があるんだし」


「……まあ、否定しない」


「という訳だしさ。お前がこれ以上悪いことをしないって約束できれば、俺はこれ以上争う必要はないと考えている」


「何!?」


 ヴェルナは驚く。

 俺が剣を振れば、確かに手っ取り早く片付く。

 でも、それでは彼女の意思だって踏みつぶすようなものだ。


 だからこそ、俺はこの提案をした。


「どうする? 考えてほしい」


「……私は、いや私だけでなく配下の皆もだ。悪事から足を洗えるならばそれが一番だ。だが、その道は少なくともペンダントを壊さなければ……」


「そこは話し合ってみないか? 王族のアムリスもいるし、話を通せば妥協してくれるかもしれないぞ。俺からも話を持ち掛ければ少しは有利にもなるはずだし」


「何!? 本当か」


 流石に形見の大事なペンダントを壊せなんてことはひどい話だ。

 なので、俺とアムリスで交渉すればそこはうまくいくと考えている。


 その話をしていると俺の中からアムリスが出てきた。


「まあ、そうよね……ペンダントを壊さないといけないなんておかしいし、私から話を付けられるかもしれない。でも、話の落としどころが見つかって交渉成立しても、今までやってきた悪いことをすぐに洗い落とせるわけでは」


 アムリスの話も分かることは分かる。

 一言だけで今までやった悪いことを許せなんて虫が良すぎる話だ。

 それについても俺は考えていた。


「それもそうだよな。でも、俺は決めたこともあるんだ」


「何?」


「俺が王に成って、ヴェルナたちの面倒を見ればいいんだよ」


「え! 王に成るの!」


 アムリスは嬉しそうに確認の言葉を出す。

 この話で嬉しそうに反応するのは意外だ。

 てっきり、不安になるのかと思ったが。


「ああ、俺もふわふわとした決意はあったけど、ようやく形になってきた。やっぱり、必要なのに光に照らされてない人っていっぱいいると思うんだよ。その人を助けたい気持ちがあるんだ」


「本当なのね!?」


「ああ、少なくとも俺と戦ったヴェルナの配下はそこまで悪くはないと思うんだ。だから、始めは償いをしてから俺の配下にって手はずなら、それはそれでいいと思うんだよ」


 今まで戦ってきたヴェルナの配下は訳があって戦っていたようなそぶりを見せていた。

 この判断をしたのはそれが理由だ。

 イグルティルってのもいたような気がするが、それはおそらく大丈夫だと信じたい。


 俺が王に成れなかったらその時はその時だ。

 アムリスの世界に行って、重要な地位について、それから面倒を見ることにすれば問題はないはず。


「その、すまない……面倒を見てもらえるなんて。あと、ダンジョンのアイテムは全て譲ろう」


 ヴェルナは床に膝と手を付けて、頭を下げる。


「いいんだよ。ほっとけないってのもあるからさ」


 俺からの言葉。

 こちらとしても、光に当てて救いたい気持ちがあるから、やはりこういうことはしておきたい。

 ダンジョンのアイテムは幸前と半々がいい。

 内訳も考えておきたいところだ。


 しかし、ヴェルナはどうすればいいのか。

 ダンジョンのリーダーなので、このまま放置というのも問題があるはずだ。

 放置して誰かに倒されるというのも避けたいこと。

 場合によっては契約をした方がいいのかもしれない。


 と、ここで、指輪が光り始める。

 指輪からも声が響いてきて、その声は狐燐さんからだ。


「すいません、今大丈夫でしょうか? 照日君」


「ああ、なんだい? 狐燐さん」


 狐燐さんから用件があるのは意外だ。


「あの、ハルトさんという男性のことです。私、見覚えがあります」


「え? なんだって!? 狐燐さんが見たって言うことは……え? まさか!?」


 狐燐さんが見たという人間であれば、当てはまるのはあの生き物しかない。

 あのアムリスから離れた力である、生命を得た生き物。


「はい、あの男性がトルーハさんです。別れるときに男性の姿になったので、間違いありません」


 狐燐さんからの声。

 彼女が言うのであれば間違いないであろう。

 まさか、そのトルーハにすでにあっていたとは思いもしなかった。

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