2 レックスのスキルの確認
俺はアムリスと共に家を出てから、佐波さんの家へと向かった。
場所も分かる上にそこまで時間がかからないので、難なく着く。
以前、佐波さんを送ったこともあるからね。
佐波さんにも会うことが出来て、話し合いをしたいと伝えるとそれも了承してくれた。
俺は幸前とも連絡を取って、午後に俺の家に集まるという話を付けた。
彼も午後からなら問題ないとも言っていたので、都合がよかったよ。
それから佐波さんも三木島とスマホで連絡を取ってくれて、来てくれる約束になった。
レックスの方も佐波さんの案内でたどり着けて、集まる約束も取り付ける。
ちなみに、飼い主の方はレックスのこともガルガードのこともすんなり受け入れていたようだ。
割と飼い主は適応力の高さが垣間見えたよ。
あと、佐波さんのスマホの電話番号も確保して、連絡は通じるようにしておいた。
これで間接的にだが、俺の仲間と連絡が可能になったわけだ。
で、あとやることはミュサの命令の確立、ステータスや魔法、スキルの確認だ。
レックスを倒したことで俺のLVは109まで上がり、撃破ポイントは860ポイントとなる。
内訳はこうだ。
・戸柱を撃破した時点で、470ポイント
・+20ポイントはジャバウォック撃破
・+200ポイントはダスティアホタル撃破
・+170ポイントはレックス撃破
優勝候補とホタルを倒したことでかなりの力が付いたという訳だ。
ここまでくると他の冒険者も簡単に倒せるかもしれないが、油断はしないようにしたい。
そしてレックスから回収したスキルの確認だ。
そのスキルには嗅覚強化や対人言語強化や獣人化のスキルもあった。
場所についてはちょうど空き地があったので、そこで試す。
レックスに聞けば分かるかもしれないが、使って初めて分かるかもこともあると思って、そこは敢えて聞かなかった。
一つ分かることだが、スキルの一つ対人言語強化、これは流石に俺には無意味。
でも、モンスターにスキルコピーをすれば話せるようになるのかもしれない。
これはダンジョンに入ってから改めて試そう。
また、獣人化のスキルも試してみた。
念じてみると、俺は獣人のようになる。
レックスが変わった人型の姿と全く同じく。
これは武器がなくなったときにはこれで行けそうだ。
あと、獣王変化のスキルは四足歩行の角の生えたライオンへと変化した。
最後にレックスとの一騎打ちでやった姿と同じだ。
四足歩行は慣れないので、おそらく使う機会はないかもしれない。
だが、追い詰められたときの奥の手としてはもしかするといいかも。
そして今は命令の確立も終えて、魔法のスキルを試していたところだ。
「強化魔法を念じただけで使えるスキルがあるのもいいな、これは便利だ」
赤い光に包まれて、俺は呟く。
今試していたのは回収したフレイムパワーという魔法。
普通は唱える時間と言葉が必要だが、強化魔法無詠唱化のスキルをレックスから回収できて、手軽に使えるようになっている。
「照日、やっぱり嗅覚も今までと違うの?」
アムリスからの問い。
「ああ、以前とは分かる臭いが違う。土や草の匂いもかぎ分けられるし、遠くの匂いも分かる」
「なんだか犬に近づいたみたいね」
「まあ、言われると否定できないな。レックスは基本的な嗅覚からこのスキルでさらに強化されているから。もしかすると、臭いで次に動きそうな体の部分が分かっていたのかもな」
動きの予知は汗からなのか、それとも動きそのものの臭いなのか。
どちらにしろ嗅覚強化で動きの予知が出来ていたことには違いない。
俺にそこまでやることは無理そうだってのは分かる。
詳しくは機会があったらレックスに聞いてみよう。
「で、後は見回りに行くの、天川君?」
佐波さんからの確認。
彼女も俺と一緒に見ていた。
「まあ、そうだな。他の強化魔法も確認できたし、他のスキルも」
「翼人化ってスキルは便利だったね。あれで羽を生やして飛べそうだから」
「ああ、動ける範囲が広がるし、ダンジョン内の移動も便利そうだ」
翼人化は俺が佐波さんにスキルコピーをして試してもらった。
確認を手伝いたいということで、試しにやってみたら佐波さんから翼が生えたのだ。
それで飛ぶことが可能になったと確認した。
ちなみに俺は牛人化だ。
こちらは牛の顔に近くなって、骨格も力強くなっていった。
モンスターで言うミノタウロスが近いだろうか。
人間状態の時よりも強い力が出せそうなのは分かる。
「スキルの確認はもう大丈夫なの?」
「まあ、他にも確認はしたいのはあるけど……爆発しそうなスキルや魔法もあるから、それは今できそうにないな」
まだ確認はしたいが、いかにも爆発しそうな戸柱のスキルや、レックスから回収した魔法もある。
それをここでやると周辺の住民を驚かせる。
だから、それは後回しにしたい。
やるとすれば、ダンジョンの中でクリアしてからか。
「後の予定は見回りなの?」
「だな、レックスも近くにいるから、俺は少し遠くに行ってみようかと思う」
レックスがいるからこそ、遠くに行ける。
少なくとも、俺一人だけでは遠くの方へ行くということもできない。
俺がいない間に身近な人がモンスターに襲われるということは避けたいから。
いくらモンスターが昼に出ないと言っても噂程度だ。
とここで、スマホが鳴る。
音は俺でなく、佐波さんからのスマホだ。
「あ、ちょっと待ってね。スマホが鳴っているから……」
「ああ、いいよ」
佐波さんがスマホを取り出して、応答する。
「……え? 大学でおかしなことが起こっているの? 西堂さんのお姉さんの大学で?」
「ん? まさかこれってモンスター絡みか?」
ダンジョンが現代に出ている状況でおかしなことと言えば、やはりモンスターが第一に浮かぶ。
モンスターが何かしていそうだ。
「男子がいなくなっているのね、分かった。ねえ、どうする? もしかして、これダンジョンが出来た可能性って……」
「あるな、ゴブリンの時もさらわれた人がいるからな」
佐波さんだってゴブリンにさらわれた被害者だ。
モンスターが男子をさらって、ということも思い浮かぶ。
「じゃあ、行くってことでいいの? ちょっと大学まで遠いけど」
「ああ、行くよ」
「分かった、そう伝えるから。でさ、私もダンジョンに同行してもいい?」
予想外の提案。
流石にダンジョンに連れて行くのはまだ早い。
戦闘技術だって佐波さんはまだ身についてないだろうし。
「え? なんでそうする必要が?」
「実はガルガードさんから聞いたんだけどさ、モンスターの戦いだと一緒のフロアにいた冒険者も同じように経験値が入ってレベルアップもするんだって」
「そうなの?」
「例えば天川君と私が同じフロアにいれば、モンスターを倒して同じ経験値が入るみたい。私が何もしなくても」
「そうなんだ……佐波さんを強くするんだったら、連れて行った方がいいんだな」
そういうメリットもあったのか。
戦いやすくするってためだたら、連れていくほかない。
LVが少しでも上がっていたほうが佐波さんもモンスターと戦いやすいし。
でも、危ない目に逢わせるのは変わりないんだよな。
やっぱり危ないところに連れて行くのはまだ俺に抵抗はある。
「その……いいかな?」
佐波さんの願い、それに俺は戸惑った。
その戸惑いを終えて俺はこう解答する。
「……分かった。ただ、戦闘に参加はしなくていいから。攻撃が来たら避けたり防ぐことだけ考えればいいから」
「本当!? ありがとう! 迷惑はかけないから!」
佐波さんは頭を下げて、礼を言う。
こうして俺は佐波さんと共にその大学へと向かった。
天川の細かいステータスは設定集に置いていますので、気になる人はそちらを確認ください。




