8 レックスとの邂逅
俺はダスティアホタルを追って、通路を進んでいく。
一本道であったが、ホタルの移動は俺よりも早かった。
レベルも上がって移動速度も上がったんだけど、それでもあっちの方が上だ。
ただ追うだけでは逃げられるのがオチ。
あと、レックスについては放棄しているわけではない。
逆にホタルを追っていたほうが会う可能性だってあるためだ。
なにせ、あちらも冒険者とのかかわりを持っているかもしれないし。
そうこうして走っているうちに俺はフロアへと入っていく。
ホタルもこのフロアにいて、このフロアは俺が戸柱と戦った時のフロアだ。
出来ることならここでホタルも仕留めたいね。
「これで行くか」
俺は呟くとともに剣に魔力を込める。
さらに別の手で空気の粘着化と圧縮、それをできた結晶に紛れさせる。
剣を向ける先はあのホタル。
剣に結晶がまとわりついた時点で、圧縮した空気を開放する。
すると、結晶が飛んで行った。
速さも俺が剣を振って投げ飛ばすよりも早い。
これならばどうだ。
ダスティアホタルはさらに奥の通路へと行く。
しかし、飛ばした結晶の方が速かった。
結果、ホタルに命中して、地面に落下をした。
(やった! 命中よ! これで追撃できれば……!)
そうだな、アムリス。
これで飛ぶことはない。
今すぐに攻撃だ。
俺は剣で突きを放つと共に粘着化もさせて伸ばす。
おそらくは剣の粘着化で伸ばせば事足りるだろう。
もしも逃げるのであれば、その時は改めて結晶精製で伸ばしても間に合う。
ダスティアホタルは前傾姿勢で立ち上がって、羽を動かし始めた。
しかし、もうすでに剣が届く範囲。
よって、ホタルは剣に貫かれていった。
ホタルに光が包まれていき、徐々に消失していく。
<レベルアップ! レベルアップよ!>
これでダスティアホタルも撃破か。
200ポイント入ったわけだな、これで。
王への道に近づいたことになる、っと言っても王に成る予定まではないけど。
一応、稼げそうなところでポイントを稼いでおきたいってところもあるから。
佐波さんも俺についてきているようだし、問題はなさそうだな。
コブラのマトトも一緒にだ。
あとはレベルアップもしたし、ポイントも確認もしたい。
だが、レックスのことも探さないとだ。
そう思って、いたときにだ。
「なんてことだ。これはダスティアホタルも倒されたということでよさそうか?」
奥の通路からある男性が出て、フロアを眺める。
ただ、その男性は人間ではなくライオンのたてがみと顔が成人男性の体に接続されたような姿だ。
ライオンの獣人とも言えるか。
さらに小さい生き物も入ってくる。
大きさはバレーボールくらいか。
「臭いも消えているワン。でも、諦めることはなさそうだワンね。優勝候補と対面できたのは幸運だワン」
獣人の足元で小さい生き物が呟く。
その小さい生き物はベージュの毛を生やした犬であった。
さらに言えばそれは俺が見たこともある犬であり。
「まさか、レックスか? お前が?」
俺からの問いに似た呟き。
あの犬は間違いなく写真で見た犬、レックスで間違いなかった。
しかも、日本語しゃべっているよ、犬なのに。
「そうだワン。でも、君とは初対面で……あ、佐波ちゃんが探しているってことかワン」
「まさか、お前が冒険者ってことでいいのか? しかも、何で冒険者なんかに?」
「レックスは隣のガルガードと契約して冒険者になったのだワン。理由はシンプル、冒険者に成って王に成るためだワン」
まじか。
犬も冒険者に成れるんだな。
レックスだって最初っから喋れるわけではないのに、どうやって意思疎通したんだろ?
(照日、あの獣人のガルガード、優勝候補の一人よ。しかも元エルドシールダーの剣術指南役で、技術も戦闘力も相当だから)
ここで優勝候補と対面か。
というか入ってきたときの話から、戦闘する予感は避けられない気もする。
ダスティアホタルをあちらも追っていたような言葉だから。
「ねえ、レックス君。飼い主さんも心配しているよ。帰ってあげて」
ここで、佐波さんからの提案が声になって響く。
「うーん、それも分かっているワン。寂しい顔をしているのは分かっているけど、レックスはそれでも王に成らないといけないワン」
「え? どうしてそこまでこだわわるの?」
「レックスが王に成ることは飼い主のためでもあるワン。だから歩む道は誰にも邪魔させないんだワン。例え佐波ちゃんでも」
「レックス君……」
佐波さんは残念がった。
レックスの方は王への道を下りるつもりはないらしい。
顔に迷いもないから意志はかなり堅いと見える。
「そんなわけで、レックスは友人君に決闘を申し込むワン。これで勝てばダスティアホタルもついでにレックスが倒したことになるワン」
予想通りの展開だ。
ダスティアホタルだけでなく俺を倒せば、一気に王への道は近づくだろうし。
更には俺のこともある程度知っているから、情報の面では俺が不利だろう。
あと、いまさら決闘を止めろなんて、そんな言葉も通じないだろうな。
意志はかなり堅いのは見えるから。
で、その言葉を聞いて、メイルオンさんがどこからともなくワープしてくる。
「では、決闘の宣言を聞きまして、エルドシールダー所属の私、メイルオンがジャッジを務めさせていただきます」
メイルオンさんの宣言。
その後に佐波さんはフロアの入り口へと歩を進める。
「俺も準備できている。始めて構わない」
俺は戦闘姿勢を整えて告げる。
ガルガードはアイテムボックスから大きな両手剣を取り出した。
長さは成人男性くらいはあるだろうか。
対してレックスは特に何もしない。
あの状態で戦う気か。
「では、私、メイルオンがレックスと天川照日の戦闘を見届けます。戦闘開始」
メイルオンさんからの言葉。
それを幕切りになってお互いが動き出す。
「まずはこれだ。両者HP公開」
俺からの宣言。
するとレックスの頭にはLV80と耐久力10000/10000の表記が出てくる。
俺よりもLVが高いな。
苦戦は免れないくらいだ。
「レックスの方がLVが高いワンね。でも、それで気を緩められないのも分かっているワンよ!」
先に動いたのはレックスだ。
犬だけあって、移動は俺よりも早い。
ダスティアホタルと比べると劣るだろうが、速さの差はおそらく大きくないと見える。
走ってから相手は俺に向けて跳躍。
跳躍した後では向かう方向は一直線。
方向転換もこれではできやしない。
が、その速さもかなり早く、俺から遠くで攻撃できることは少ない。
もたもたしていれば攻撃されるくらいに。
粘着空気砲も間に合わないかもしれない。
なので、俺は剣で防御をすることにした。
しかしだ。
レックスの体が突如光る。
その光は俺と同じくらいに大きくなって、人型になっていく。
腕の部分も出来てきて、その先も鋭利にとがっていく。
「なっ……!」
俺から驚きが漏れる。
光の覆いが取れると、レックスは獣人のようになっていた。
鋭利なイメージの犬の顔にベージュの体表と体毛。
そして、手の先には鋭い爪があって、それを俺に突き立てようとした。
防御しないと。
しかし、俺は突きの方へと剣を合わせるが、相手の爪はそれをかいくぐっていく。
「隙ありだワン!」
レックスは長く伸びた爪で俺の胴へと突いた。
俺はかわせずだ。
「うがっ! く……!」
胴が貫かれて、俺から声を漏らす。
普通だったら防げたはずだったが、相手の動作は早い。
その上に何故か防御する位置もあらかじめ分かっていたような動きだった。
突きの後から確認して、相手が軌道を変えたわけではない。
防御する前からすでに分かっていたような突きであった。
「どうしたワン? レックスの動きが捕らえられなかったワンか?」
声と共に俺の膝を蹴って、レックスは俺から距離をとる。
俺はよろめきつつ、戦闘の姿勢はそのまま維持した。
何かネタがあるようだ。
ただ早いだけだったら普通に防げたはずだが、こうして防げない何かが。
あの動きはまるで未来を余地していたかのようだが、そんなスキルでもあるのか。
そう考えているうちにガルガードの方も俺に向かって走ってきていた。
レックス戦はちょっと長くなると思います。
入れたいことが結構あったので、おそらく後三話くらいになるかと




