エピローグ7
数多くのモンスターを引き連れて襲撃をしてきた。
幸前とエルフの女性、そしてマーシナルライオンさんはモンスターの迎撃に。
そして、ヴェルナとゼルティアが対峙していた。
「全く、天川照日君は足止めなんてことをしてくれて、迷惑だったよ。まあ、私はこうして新たな力を確認できたので、そこは帳消しとする」
そこで最初に言葉を出したのはゼルティアだった。
戦闘の雰囲気は二人の間にあったが、彼の目線は俺に向いていたかのようだ。
「道理で来ないと思ったが、足止めと力の確認の余裕があっての事か……」
「このペンダントにアムリスとトルーハ、そして天川君の記憶があるからな。マーガジオの力もさらに発揮できた、モンスター精製のスキルを」
「そのペンダントか! そのペンダントさえ壊せれば!」
ヴェルナはペンダントに向けて、円盤を飛ばした。
「おっとっと、無駄ではないのか? その抵抗」
「あぁっ……」
ヴェルナの下から伸びた影が巻き付いて、縛り上げる。
さらに影の先端が上に伸びると、人型の上半身がかたどられる。
とげとげとした攻撃的な黒い形で、まるで魔王のような姿。
それが両掌を握り合って、上に掲げていた。
「暗黒操作化スキルもさらに磨きがかかっている。それもマーガジオの一部を呼び出せる位に」
「あぐぁっ!」
魔王の両腕の振り下ろし攻撃を受けて、ヴェルナは地に伏す。
ダメージも大きい攻撃なのか、彼女は目を開ける様子もない。
ゼルティアがヴェルナが戦えないことを確認する。
その瞬間。
「やあ、天川照日君。こんな接し方で許してほしい」
距離がかけ離れていたにもかかわらず、一瞬でゼルティアは距離を詰めた。
今ではお互いにすぐに手を伸ばしてつかめるくらいに。
「うわあ!!」
俺は驚くしかない。
人間が出来ることでもないし、どういう原理かも分からない。
分かることは足掻いても届かないだろう力の差だけ。
「そんなに驚かせてしまって申し訳ない。でも、君の武器は持ってきたから、許してほしい」
「え? これが……俺の武器……?」
俺の疑問の中で、ゼルティアは飛んできた剣を握る。
その剣は白い光があふれていた。
明らかに普通の剣ではなく、魔法がかけられた代物。
その剣で俺に攻撃するでもなく、ゼルティアは俺の足元に放り投げた。
「どうした? 私を攻撃する絶好の機会だ。君にだけ特別サービスなのだが?」
ゼルティアは自分の剣を持ちながらも、俺へと問いかける。
見るだけで分かる隙だ。
攻撃するなら今しかない。
その間にも佐波さんと三木島、西堂さんはそれぞれの武器を持って、ゼルティアの背後に近づいていた。
「俺は……俺は……」
俺は手を伸ばして、剣を握った。
こんな隙を晒すのはおかしいも、乗るしかない。
おそらく二度とない機会だから。
そう思っていた瞬間にゼルティアの背後の三人が一斉に飛び掛かる。
しかし、黒い魔王の影が両手を振るって、三人を弾いた。
ゼルティアは背後を向くことはなかった。
それくらいの余裕なのだ。
そして、隙を晒してもどうしようもないことも分かってしまう。
俺は攻撃が出来ず、膝を地面につけるしかなかった。
「やはり、君は決定戦の記憶が全部なくなっている。今いるのはいじめられっ子の君だ。脅威でもなければ、時間を止める必要もない」
「う……うぅ……」
俺の目には涙が浮かんでいた。
悔しいこと以上にどうしようもない現実。
それを突きつけられて俺は何もできなかった。
皆が戦っているのに、俺は戦えず悔しい。
その事実よりもどうしようもない力の差が俺に立ちはだかっていた。
ゼルティアは俺に背後を見せる。
彼の視線の先にいるのはモンスターと戦っている幸前さんとマーシナルライオンさんだ。
「さて、いじめられっ子はどうでもいいと確認したところで。少し脅威になりそうなところを排除しておこう」
ゼルティアが指を鳴らすと戦っている三人の影が伸びる。
幸前さんとエルフの女性、マーシナルライオンさんにそれぞれの影が巻き付く。
ただ巻き付かれるだけではなく、抵抗もあった。
幸前さんは直線状の大きな炎を20も放ち、さらにはマーシナルさんも殴る動作で拳圧を飛ばす。
しかし、ゼルティアから伸びた影が魔王となってそれらを受けるのであった。
結果的に攻撃は届かなかった。
「あ……」
縛った影が三人の全身を包むのを俺はただ見ていた。
その包んだ影が多方向に伸び縮みすると、三人は悲鳴もなく倒される。
その三人は立ち上がる様子が少しもなかった。
「さてと、予想以上に早く片付いてしまったが、天川照日君はどうしようか?」
再び俺を見てゼルティアは呟く。
きっと今の俺よりも何倍も強いはずの幸前さん。
それがあっさりと倒された。
再び俺にどうしようもない現実を見せてくる。
「俺は……ずっとこのまま……なのかな……? 光にも当たらず……」
俺はゼルティアでないどこかを見て呟く。
いじめられていた時の方がましだった。
関係のない皆に迷惑をかけているわけでもなかったから。
でも、少なくとも俺のために動いてくれた皆がこうして倒される光景。
いじめられるよりもつらかった。
俺に少しでも抵抗する力があれば。
「うむー……こうも反応してくれないとやりように困る。少し遊ぶのも悪くないかもしれないが、ここで君を倒してしまうべきか?」
ゼルティアは戸惑いを見せていた。
そこで別方向で起きたことがあった。
「ちょっと……待ってよ」
佐波さんの声。
そこへと視線を向けると、武器を持ちながら立っていた。
しかし、彼女はふらつきながら立っていて、ダメージを押しているかのように見える。
「ほう、意外な反応があちらから」
俺へと向けた視線の真後ろへゼルティアは向ける。
立ち上がってきた人は佐波さんだけではなかった。
「まだ、この三木島……倒されちゃいないですぜ」
三木島と佐波さんがふらつきながらも立ち上がっていたのだ。




