8 桁違いの戦い
幸前からスキルや魔法の説明を聞いて、俺は時間を過ごした。
説明の中には幸前の使わないスキルもあったが、それも含めてだ。
それからはマーシナルさんとの試合の時間まで過ぎる。
俺は武器を持って闘技場に立っているという状況。
向かう相手はマーシナルさんだ。
更にはパートナーらしき機械的なバッタのモンスターもそばにいた。
「では、グラスバトラーよ。行こう」
マーシナルさんがモンスターに目を向けると、そのモンスターが飛んできて付着する。
彼の腕の後ろにモンスターの手足が分離して接続される。
少し違うが、思い出すのはかつて戦ったカイエンだ。
「カイエンとかと似たタイプなのか? モンスターをまとうタイプなのか」
俺は思い出したことをそのまま言葉にする。
カイエンは液に包まれてスーツをまとったが、マーシナルさんはモンスターと直接融合する感じだ。
ただ、モンスターをまとうという共通点はあって、似たようなタイプなのかと思わせる要素はある。
「では、準備はいいかな? 天川君」
「はい、俺は問題ありません」
俺はすでにアムリスだって中にいて、戦闘はいつでもいい。
メイルオンさんは頷いた。
「では、マーシナルライオン対天川照日、戦闘開始」
メイルオンさんの開始宣言。
俺から先に攻撃をしたい。
魔力を注いで体を軽くして、俺は急速に相手へと近づく。
「ほう、速い……」
マーシナルさんはそう呟くと、防御の態勢へと入る。
「先手は貰った!」
俺は初めに突きを繰り出す。
今は順調だが、何をしてくるか分からないので、まずは小手調べだ。
その突きは相手へと届く。
「だが、速ければいいわけでもないぞ」
かと思ったが、マーシナルさんはこう呟く。
俺の突きは二つの指でさえぎられてしまった。
これ以上押しても1ミリも進む気配はない。
「まずは退くしか……」
俺は退いて距離を空ける。
その前に粘着化した空気を相手の腕へと付着させる。
それに気づく様子は見せていない。
「私も攻撃に移るとしよう」
俺が引いた様子を見てマーシナルさんは俺へと向かってきた。
ただ思ったよりは移動速度が遅い。
「でも、俺よりも足は遅い……やりようはある」
俺は更に距離を開けて、相手を見据える。
物理がダメならば魔法で行けば。
俺の足元に魔法陣が出始める。
「次は魔法か」
「闇魔法、ダークレイン」
俺は早乙女から回収した魔法を唱えた。
さらに、攻撃魔法巨大化もさせて。
このスキルは幸前からもらった物で、消費した魔力に応じて魔法一つ一つを大きくできる。
俺の頭上に大きな渦が巻いて表れる。
その渦は早乙女が出した物よりも大きい。
渦から黒い球が斜めの軌道でマーシナルさんへと落下していく。
この黒い球もまた早乙女の時よりも大きいものだ。
「厄介になりそうだな、ならば……」
その場に留まるマーシナルさんは両の拳を引いて、腰を低くする。
そのすぐ後に黒い球に向かって遠くから拳を突き出した。
するとだ。
「な!!?」
俺の驚き。
黒い球は拳圧だけで、はじけ飛んでしまったのだ。
それでも球は渦からまだまだ出てくる。
「はっ! はっ! はっ! はっ! はぁっ!」
次々とくる黒い球をマーシナルさんは全て弾き飛ばす。
その様子に俺は付着させた粘着化した空気を操作はする。
だが、その操作も全く意味なく次々と落としていったのだ。
「こっちがダメなら俺にはまだこれが……」
俺はさ結晶を精製して、マーシナルさんへと飛ばす。
その結晶には爆弾化も念じてだ。
他にも暗黒操作化を念じて、影の手も四つ伸ばした。
「同時攻撃だろうが……はあっ!!」
それを見ていたマーシナルさんは結晶と影の手へも拳圧を飛ばしてくる。
結果としてそれは一撃で弾き飛ばされてしまった。
続いて、マーシナルさんは球を拳圧で弾き返していく。
黒い渦から球が出なくなっていき、渦が小さくなって消滅した。
これだけやって力だけで対処されるのは驚きしかない。
「これだけやって……無傷……」
「私はスキルがない上に、多勢の相手は得意ではない。しかし、それでも準優勝の力はあるといっておこう」
マーシナルさんの重い言葉。
門番というだけあって、流石にただでは勝てない。
少しでも情報が欲しい。
打開できるちょっとした手掛かりだけでも。
「こうなれば、両者HP公開だけでも……」
俺の次の手は情報を探ること。
耐久力やLVが分かれば、手の出し方は分かると信じて。
耐久力が低ければ一気に行けばいいだろうし、そういう情報が少しでも欲しかった。
そこで分かってしまったことがある。
俺のLVは350で耐久力は37600。
「おや、LVの差が予想以上に大きい。やむを得ないか、ダンジョンが出る期間も予想以上に短くなったと聞くから……」
マーシナルさんは両方のLVを見て呟く。
そのマーシナルさんのLVは1000で、耐久力は150000もあった。
差がでかすぎる。
今まではLVの差があったとしても、20や30くらいで100以上はなかった。
しかし、ここにきて予想以上に差が大きすぎる。
「……桁違いってのはこういうことなんだな」
その違い過ぎる差に俺は変な笑いが出ていた。
同時に前回準優勝者と門番という言葉の重さがとてつもなく大きいものと感じ始めた。
(照日……私たち、勝てるわよね?)
ここでアムリスが心の中から声をかける。
その声はか細いものだ。
同時に、マーシナルさんが拳圧を飛ばしてきて、俺は横に避ける。
軌道は予測できるが、あれほどの力なので反射化はしたくない。
反射化出来る力も限度があり、反射化できずに一発で耐久力が0に成ればたまったものではない。
「分からないな、そればかりは」
その問いに俺はこう答えるしかない。
(え?)
「でも、それは今までの戦いも同じだろ?」
(そうだけど……この戦いは、今までと違う……)
「それもそうだがな、でも心配はいらない」
確かにこれまでの戦いとは明らかに違う。
しかし、その負けるかもしれない戦いは今までたくさんしてきた。
これも負けるかもしれない戦いであることは変わりがない。
(大丈夫……なのよね?)
「ああ、俺にだって背負っているものがあるし、俺に付いて来てくれた人たちだっているんだよ」
今までの戦いで俺が得たものだってたくさんある。
飛んできた拳圧を避けて、俺は指輪に念じる。
指輪が光って魔法陣が、それも四つ出てきた。
(あ……シュン、ミュサ、狐燐さん、トルーハ!)
その四つの魔法陣からシュンとミュサ、狐燐さんとトルーハさんが出てくる。
日町から回収した召喚数増加スキルもあって、この四人はこの場に残ってくれるのだ。
「そうだ、俺だけじゃないんだよ。アムリスだって戦ってくれるし、みんなで戦えば!」
そう言って俺はマーシナルさんを見据える。
他の四人も俺と同様に見据えてくれた。




