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6 敗北の涙

 幸前を覆う大きな爆発。

 しばらくして爆発の煙が落ち着き、幸前の耐久力を確認する。

 耐久力は0となっていた。


「今度こそ勝ったな」


 俺は倒れた幸前の姿も確認する。

 立ち上がるそぶりも見せない。


「勝者、天川照日」


 メイルオンさんからの勝利宣言。

 共に観客の声が沸き上がった。


 これで王への道も目前とまで来た。

 が、それでも素直に喜べない。

 幸前の希望をつぶしたことになるからだ。


「……」


 倒れる幸前を見て俺は何も言えなかった。

 何と言葉をかければいいか分からずじまいで。


「命に別状はありませんが、回復の方は早急にさせてもらいます」


 メイルオンさんが寄ってきて、幸前とフェリアに回復の光をかざす。

 その光は俺にも降ってきた。


 かける言葉が見つからないが、このまま立ち去るのもそれは違う気はする。

 そう思っていると幸前の方から動きがあった。


「くっ……」


 幸前が起き上がろうと地面に手を付ける。


「幸前……」


「天川君……僕の負けだ」


「……その」


 潔い負けの宣言を聞いて、俺は申し訳なさが出てくる。

 やはり幸前の望みをつぶしたことに申し訳なさがある。


「何も謝ることはないよ。僕を倒したのだから、堂々と王に成ればいいんだ。君にはその資格があると僕は感じているよ」


「……」


「僕は王に成りたいと思っていた。でも、君が王に成るのだって不服はないさ。だから、僕を倒したからと言って悲しむことはしないでくれ」


 起き上がろうとはするも結局は起き上がれなかったが、幸前はこう語る。

 どうも俺の表情ははっきりとわかるようだ。


「……分かった。俺はこのまま前に進んでいく」


 俺は頷いて決意も改める。

 このまま進んで行くことが幸前の望みであれば、こうするしかない。


「それと、フェリア。聞こえているはずだろう?」


 幸前は起き上がりつつ声をかける。

 その後にフェリアはゆっくりと起き上がった。

 ただその顔は幸前にも俺にも見せないように向けていた。


「……ええ」


「結局、負けてしまって申し訳ない。力足りずでこんなことになってしまって」


「……いいですわよ。幸前だって手を抜いたとは思わないですから」


「その言葉だけでも聞いて助かる」


 幸前は一息ついて語る。

 フェリアの声も不服でないと分かったからのように見える。


「……残念ですけど、不思議と安心するところもありますわね」


「天川君とアムリス君にだったら、負けてもよかったところかい?」


「ええ、そうですわ」


「ということで、フェリアからも頑張ってほしいということだ」


 幸前の言葉経由で、フェリアからの意思を託されることになる。

 かつてはアムリスにつらく当たっていた彼女なので、その言葉を聞いて安心した。


「でも、一つ心残りはありますわね」


「何かあるのかい? 次から期間はかなり空くけど、次の決定戦もフェリアなら参加できるだろう」


「ええ、それもその通りです……でも……」


「でも……?」


 幸前は聞き返す。

 フェリアの様子も少し変わったと俺からでもわかる。


「次の決定戦だっていつ起きるか。それこそ、幸前が生きている間に起こるかどうかも……」


「……まあ、そうだけど。それでもフェリアは長寿だから、君のことは心配いらないだろう?」


「私は王に成って、お母さんに幸前も紹介するつもりだったのに……」


「……」


 幸前は黙って聞いていた。

 震え始めたフェリアの声を。

 フェリアと幸前では種族は違うが、こうなってくるとは。


「凄いパートナーと出会えて……王様にもなれるくらいのパートナーだって……お母さんを安心させたかった……」


「……」


「それも、結局、かなわずで……うう……私、私はぁ……」


 フェリアは幸前の胸に顔を埋めて、震えていた。

 その彼女の後頭部を幸前は優しくなでる。


 こういうことがあるとやはり申し訳ないと感じてしまう。


「……すまない、天川君。だが、さっきも言った事は変わらないし、ここは僕に任せてほしい」


 ここで幸前は俺を向いて、声をかける。

 その言葉で俺は少し救われた感じだった。


「フェリアはそれでいいんだな?」


「ここからは僕とフェリアの問題だからね。天川君に頼れないことだ」


「……そっか。俺はどうしようもないから、任せるよ」


 俺からはお手上げだと伝える。

 逆に俺から何かすれば余計なことになるだろう。


 その後に幸前はフェリアを優しくたたせて、自身も立ち上がる。

 彼女も震えはなくなって、落ち着いたようだ。


「それじゃあ、僕はこの場を去ろう。天川君、健闘を祈る」


 こういって、幸前はその場を去った。

 俺はその後ろ姿に何も言えずじまいだ。


「……頑張れとも言えないな。俺にはどうすればいいか分からないし」


 その後にフェリアが出て、肩を叩いてくれる。


「大丈夫よ。フェリアだってこれを引きずってしょぼくれる性格ではないから、後は任せても大丈夫よ」


「アムリスがそう言うなら……で、こうしてトーナメントで優勝したわけだよな。後はどうなるんだ」


 俺が気になったのはトーナメントの今後のことだ。

 恥ずかしながら、細かい内容については聞いたかどうか覚えがない。


「後は簡単よ。試練の相手に勝てば、晴れて王様」


「試練か、それってこの後に行われるということか?」


「基本はそうよ、そろそろ相手が出てくるはず」


 その言葉と共に幸前が入った所とは別の通路から人が歩いてくる。

 暗くてよく分からないが、成人男性だ。


「相手が……来るか」


「おそらく幸前さんよりも手強いから……ん、あれって……?」


 アムリスは違和感を言葉でも感じた。

 その違和感の張本人がようやくわかる形で姿を見せたからだ。

 その姿は俺もまた見ることが出来る。


「嘘だろ……? 俺の相手って、あの人なのか?」


 そして俺は驚くしかなかった。


「やあ、久しぶり……でもないか、天川君」


 ヒーローのような姿の成人男性が俺に声をかける。

 何せ、その姿は俺もアムリスも見知った姿の人だったから。


「マーシナルさん、なのか?」


 俺はマーシナルさんを見て、呟く。

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