2 かつての強敵、再び
俺は戦闘の準備を済ませて、闘技場へと足を踏み入れていた。
ベルガルドエンデスを持って。
幸前もまた同じように戦闘の準備を整えていた。
剣と盾を持って、さらにフェリアは弓を持って。
後は審判のメイルオンさんが開始を告げるだけだ。
「「……」」
俺と幸前の間に会話はなかった。
もう話せることは話してしまったので、話す必要もないともいえる。
「戦闘準備は整ったようで……」
メイルオンさんからの確認。
「ああ、問題ない」
俺は頷いて答える。
沈黙が流れて、メイルオンさんが両手を上げる。
「それでは、始めます。幸前継刀対天川照日……戦闘開始!」
メイルオンさんの宣言。
先に俺から攻撃を仕掛けたい
と思ったところ。
「まずはこちらからだ、炎魔法、フレイムスネイク」
先に攻撃を始めたのは幸前からだ。
幸前は掌を俺に向けると、直線状の炎が出てくる。
その数は20で、一つ一つが自転車より少し大きいぐらいの大きさ。
以前に見た魔法とは大違いだ。
「いきなり派手なことをしてくるな。だったらこっちは水魔法、アクアスプラッシュ」
俺は剣に魔力を注いで下に剣を立てると同時に魔法も唱える。
魔法攻撃の為ではない、水の属性をまとわせた盾にするため。
イメージは水をまとった半球のドームで、そのイメージ通りに俺を包む。
水をまとったドームに炎が次々と当たる。
全て受けきったころには全体的にひびも入ったが、何とか耐えることが出来た。
「派手にやったけど、これくらい耐えてくれないとね」
「さてと、次は俺の攻撃をしようか」
俺が結晶のドームを崩して、さらに剣に魔力を注ぐ。
「いえ、まだ攻撃させてもらいますわよ」
そこで、フェリアからの声を聴き、そちらへ見るとだ。
彼女はすでに鎌を持って遠いところから地面に刃を突き立てようとした。
それではこちらに攻撃が当たらないのにだ。
「……!」
ふと、俺に痛みが走る。
痛みは後ろからで何かが貫いたような痛み。
何かと振り向くと、黒い刃が俺を貫いていた。
「その刃はこの鎌から出したもの。以前の戦いで回収したものをありがたく使わせてもらいましたわよ」
「攻撃は弓だけじゃないってことか……」
「それと親切に教えますと、自然治癒はこの刃が無効化しましたので、回復はしないと考えた方がいいですわ」
「……そうか、前みたいな状況になったということか」
黒い刃が引き抜かれて、俺は呟く。
回復する気配もないので、自然治癒は当てにできそうにない。
だが、それは悲観しなくていい。
幸前と戦った時はあちらだけが自然治癒を持っていた状況。
前の状況がまた来ただけだ。
「少し似たような状況と言えるかな。僕だって変わったし、天川君も前とは全然違うだろう?」
幸前からの言葉。
「それもそうだ。回復しなくたって対策の使用は前よりもあるからな」
俺はその言葉に結晶を精製して、幸前へと六つ飛ばす。
同時に幸前へと霊降下をさせた。
「ん? 何かが来たか……?」
幸前は後ろを見て呟く。
霊が憑いたことに気が付いたようだ。
「俺だってまだ行くからな」
俺は指輪を光らせて告げる。
まずは人手を増やしたい。
二体二であるが、トルーハさんの力も借りて有利にしたいから。
「まずはこっちか」
幸前が盾を構えると、5Mほどの円が出てきた。
その円に結晶は弾かれて、さらには憑りつかせた霊も弾いていた。
これでは相手の自然治癒も無効化できそうにない。
「やってくれるな……でも、まだ俺にはトルーハさんが」
防御に専念していた間に俺は竜の姿のトルーハさんを召喚していた。
すぐに乗って彼は真上へと飛ぶ。
一時的に俺は地の利を得たわけだ。
幸前にも空を飛ぶ白馬がいるから、利もわずかなのは分かる。
「あの竜か……ならばこっちもフォルツを」
「悪いな。それはもう少し待ってくれ」
幸前の召還の動作の前に俺は結晶の刃を伸ばした。
だが、届くと思った矢先、フェリアが横から短刀を構えて、結晶を弾いてきた。
破壊まではされなかったが、幸前に届かなかった。
一方俺は自然治癒の無効化に対してスキル発揮解除選択はしているが、無効化を解除できない。
やはり自然治癒は当てにしない方がいいだろう。
「行こう、僕たちも」
その間にも幸前は白馬を召喚し終えていた。
「気が早いな。もう少し待ってくれてもいいだろ?」
俺は再度結晶の刃を幸前へと伸ばすとともに、結晶から別の結晶の固まりをフェリアにも飛ばす。
更に粘着化した空気を自分にまとわせた。
攻撃はトルーハさんも加わり、緑色の光を口から飛ばす。
先ほどからわずかの時間も惜しい攻防が続いている。
両者HP公開する時間もないほどに。
「ならば、こうだ。炎魔法、フレイムサークル」
幸前が魔法を唱えると、フェリアと白馬達も同じく囲む炎の壁が出てきた。
結果として結晶の刃と固まり、緑色の光も壁に弾かれて燃えてしまった。
炎の壁が消えるとそこには幸前が白馬に乗っていた。
このままではらちが明かない。
なのでだ。
「まあ、俺は自分だけでも飛べるんでこうするよ。炎魔法、ブラストボム」
俺は幸前の元へと近づいて、魔法を剣にまとわせていた。
すでに体重も軽くして、空気をまとわせて操作していたため、近寄ることが出来た。
そして空気も圧縮したものを腕に蓄えてもいる。
「はや……」
幸前は俺を驚きの目で見ていた。
その隙に一気に加速して斬撃を20回当てる。
ブラストボムをまとわせた結晶も斬撃と同時に付着させて。
俺の加速が止まって、大きな爆発が起きた。
あの盾は厄介だが、防ぐ隙も無く攻撃を差し込めば問題はない。
「でもってだ、ダメ押しと生存の確認を兼ねた……炎魔法、ブラストボム」
爆発の中に俺が出した火の玉が飛び込んで、更なる爆発が生まれる。
やり過ぎではあるが幸前相手なので、これくらいやらないと決着はつかない。
最も、これで倒れるとも思ってもいないが。
攻撃してから相手に動きがない。
俺は空気を圧縮して、投げ込んで煙を飛ばそうと考えていた。
「直撃は避けられたけど、それでもダメージはでかいね。流石だ」
幸前からの言葉。
まだ倒れていないがそんな気もした、むしろ安心さえもあった。
「幸前こそ。この攻撃は決めるための技だったんだぞ。それを耐えるなんて」
俺は返す言葉と同時に圧縮した空気を飛ばす。
煙の中心で空気がはじけ飛ぶと煙も晴れて、幸前とフェリアが白馬に乗って飛んでいた。
更にはその下には八本の矢が停滞してもいた。
その八本の矢が飛んでくると同時に幸前も俺へと向かってくる。
「耐えてしまって済まない。それともう一つ申し訳ないことを言っておこうか」
トルーハさんは矢をかわし、俺もフォローとして向かってきた矢を剣で撃ち落していく。
「なんだ?」
「以前倒した相手の装備から僕の装備にスキルを移せた。そのスキル、デュアルスピードを今発動できる」
突撃後に幸前は振り返り、こう告げた。
その言葉に嫌な予感しかしなかった。




