2 ダンジョンは出るのか
メイルオンさんからダンジョンは出ないと聞いた。
「ダンジョンの出現は……ないと……」
その大きな言葉に俺は言葉を繰り返す。
「はい。昨日、話し合いがあってダンジョンの出現は停止と決定しました」
「そっか、ならモンスターがこの世界に現れるってことはもう無いと見ても?」
「そうなります。これ以上この世界に迷惑をかけられませんので」
メイルオンさんの話に納得があった。
流石にダンジョンは出せない。
この世界からモンスターが出ないことは間違いないので、俺が見回りしなくてもいいことには違いない。
そして、ここで一つ気になったことが出てくる。
「……それは安心だ。ということは、ダンジョンの出現てあちらの世界の人たちの意思で出せるってことですよね?」
「はい」
「……それじゃあ、なんで今回は目立つように出せるかってのは、メイルオンさんは分かりますか?」
「申し訳ありませんが、それについては私は知らないです。私の管轄外で何も知らない状況です」
ダンジョンが出ることについて、メイルオンさんも分からないことか。
残念だが、仕方がない。
「そうですか……でも、これからの決定戦ってどうなるのですか?」
「決定戦は続けます。予定されている残り期間は五日ありますので」
「ああ、五日もあるんですか」
そう言えば期間については初めて知った。
どれくらいあるのか分からなかったが、開始から結構経ったので残り期間については納得がある。
「その五日の内に今残っている冒険者でトーナメント形式の試合をしてもらいます。それで勝った人が王へとなります」
「勝てば王様に……」
俺はメイルオンさんの言葉をかみしめる。
このトーナメントで勝てなければ、王に成れないとも言える。
「はい。ただ、暫定の王となります。もしも期間内に王へと挑みたい冒険者がいれば、その人と戦って勝たないといけません」
「そっか。とはいっても暫定の王への挑戦者って、今から冒険者に成って強くならないと実質勝ち目はないですよね?」
「はい、挑戦権はトーナメントの試合を行ってない冒険者しかないので、実質ないようなものと思って構いません。あくまで五日の間に王を強引に決めていない姿勢を示す為です」
「そういうことか……」
実質、このトーナメントは王に成る冒険者の選定とも言える。
トーナメントで負けられないのは変わりない。
「トーナメントは明日からですので、今日中に準備を行ってください。もしもモンスターを倒して強くなりたいのであれば、私たちの世界に行って戦闘することも可能ですので」
「分かりました。ところで、そのトーナメントの試合って参加人数はどれくらいになりますか?」
明日からとは急なことである。
それにしても、アムリスの世界でモンスターを倒して強くなることも可能なのか。
「まだ冒険者に参加の意思を聞いていませんが、10人は参加すると思われます。誤差の可能性も有るので、ご容赦を」
「俺も参加するとして、その10人に幸前も含まれていると?」
「幸前継刀もその10人に含まれています。そして、今回のご依頼達成での礼として天川照日と幸前継刀はシード扱いになります」
「おお、それはありがたいです」
依頼での見返りがここで出てくる訳か。
見返り目的でやったわけではないが、あればあったで嬉しいことだ。
「実質、二人が優勝候補だとあちらの世界でも言われております。ただ、何が起こるか分からないですので油断はしない方が賢明です」
「戦闘は抜かりなくします。ご心配なく」
「では、私たちの世界に行きたい場合は私の方へと連絡してください。私との契約は延長されて、まだ有効ですので」
「用があれば、召喚すればいいんですね。分かりました」
俺は理解を伝える。
アムリスの世界に行く手段が確保されたわけだが、俺はまだ行く予定はない。
この世界でやっておくことがあるので、アムリスたちの世界に行くのはまだあとだ。
ここで佐波さんは手を上げて口を開く。
「あ、ところで、私は応援に行きたいんですけど、応援目的だったら行っても構いませんか?」
「応援目的ならば可能です。ただ、お互いの世界に大きく干渉する行動は控えてください」
「えっと、例えばどういう行動ですか?」
「私たちの世界の物を持ってくる等です。特別な場合以外は認められません。それにただでさえ、私たちの世界が迷惑を押し付けた形ですので、干渉する行動は以前以上に厳しくなっています」
佐波さんはぼんやり気味の表情でそれを聞いていた
いまいち呑み込めてない様子にも見える。
「とにかく気を付けます。分からないことがあれば、その都度聞きますので」
「そうして頂ければ構いません」
「聞きたいことは以上ですので」
佐波さんが告げる。
メイルオンさんの言葉で理解できたかは俺にも分からないが、佐波さんなら問題はないだろう。
「分かりました。トーナメント試合の細かいルールは今日中に知らせますので、私はこれにて失礼します」
そう言うとメイルオンさんはワープして去っていった。
「これでダンジョンは出ないと分かったし、天川君はどうするの?」
佐波さんが俺に向けて声をかけた。
「俺はまだあっちの世界にはいかない。ここで色々とやっておきたいこともあるから」
「まさか、家とかの修理をやるの?」
「いや、それはしないさ。ただ、母さんにもそろそろ話しておくべきだと思って、俺のことと今回のことを」
「ああ、そうね……王様になるからか」
王様になればきっと母さんもこの世界に置いていくことになる。
特別なことがない限りは避けられないことなので、話すしかない。
「それと、ガティークさんにも用があるから。忙しいかもしれないけど、頼めるかどうかは聞いてみたいからね」
「そうなんだ。私は三木島君にもこの事話してくるよ。あの人に話さないとすごく残念がるだろうから」
「まあ、三木島に話すのは別にいいしな。話さないといけないのも分かるし」
三木島も応援に絶対来るのが分かる。
佐波さんの言う通り、話がなければ残念がるほどに。
「じゃあ、私は三木島君のところへ行くから」
佐波さんは手を振って、この場を去った。
「あとは……俺の方だな。母さんにも話をして、あと、トルーハさんにレックスのことで聞いてみたいこともあるし」
俺とアムリスは家へと戻ることにした。




