表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

107/143

9 ヒーローからの礼

「やあ、私がマーシナルライオンだ。君は天川君とアムリス君だね?」


 そのマーシナルライオンが俺に近寄って声をかける。

 ぼろぼろのスーツから見るに戦闘したとしかありえない。


「はい、そうです。マーシナルライオンさんもモンスターと戦っていたのですね」


「そうだ。あと、私のことはマーシナルでもマシオン呼びでも構わないぞ」


 マーシナルライオンさんは呼び方の提案をしてきた。

 確かにその呼び方は少し長いので手間取る感じだ。

 マシオンさん呼びだと少しなれなれしい気もする。


「じゃあ、マーシナルさんと呼ぶことに……ん? 俺の名前も知っているんですか?」


「その通り、私は共に戦ってくれる人の名前はしっかり記憶しているぞ。幸前君も記憶している」


「幸前の名前も……割と知っていそうですね、俺達のこと」


「君たちは冒険者なのだろう? モンスターと戦っている冒険者と聞く」


 俺と幸前の名前も知っていて、冒険者の存在も知っている。

 ただただヒーローショーをやっていたという訳でもなさそうだ。


「そこも知っていますか。まあ、俺は知りたいこともあって冒険者をやっているっていうのもありますが」


「どういう理由であろうとモンスターを倒してくれるのは私にとってありがたい。今回のようにモンスターが外に出れば人々の脅威となるから」


「ですね。こんなことになるとは思いもしなかったですけど」


 俺は周りを見て呟く。

 周りはモンスターが荒らした形跡、家が壊れていたり、ブロックが壊されていたり、コンクリートの道も壊れていた形跡がある。

 その後に沈黙が流れた。


「……今回のことは残念だな。私もできるだけの力で戦ったが」


「……」


「結局、私だけでは近くの人を守るのが精一杯だ。結果はこの通りの光景になった」


「いえ、その近くの人を守るだけでも十分有り難いことです。マーシナルさんがいなければその人は守れなかったですし、俺だってその人は守ることなんてできなかった。俺にも救える人の限度があります」


 マーシナルさんの気持ちは俺も同じく感じたことがある。

 俺一人だけでは守れる範囲も限られていることを以前に理解していた。

 こういう言葉があってはフォローしたい。


「そう言ってくれて嬉しい。少しは気が楽になったよ」


「マーシナルさんの辛い気持ちは分かりますから」


「天川君もヒーローみたいなことを言うのだな、ははは」


「え? そうですかね?」


 俺は困ったような反応をした。

 マーシナルさんから褒められたような感じもあって、反応には困った。

 まだまだ褒められるのは慣れない。


 ここで、違和感に気付く。

 何かが来るような違和感。


「ここまで敵と戦って強くなったようだからな。天川君は」


「……」


「謙遜する必要もないぞ。天川君はヒーローになるための実力があるのは私が保証するから」


「……すいません。急ですけど、少し別のことをします」


 実力の保障はありがたいが、今の俺はそれどころじゃない。

 臭いで分かった、何かが来ることが。


 その俺に気付いて、アムリスは俺の中に入ってきた。

 マーシナルさんは気付いてない様子だ。


「どうかしたのかい?」


「やはり来たな! そこだ!」


 俺は粘着化の空気をマーシナルさんの後頭部の斜め上に放つ。

 すると、空気が当たり落下していく。


 その空気の中には暗い空に近い色の鳥が抜け出そうともがいていた。

 俺は臭いで気づけたが、近くで見ないと見分けがつかないモンスターだ。

 こんなモンスターもいるとは。


「モンスターか……気が付かなかったな、私は」


「俺は臭いが人一倍優れるスキルもあったので、分かりました」


 そう言いながら接近はしない方がいいと判断する。

 接近して何かされるのは困るためだ。


 その理由があって、俺は改めて粘着化と爆弾化させたした空気をモンスターへと放つ。

 空気が当たった瞬間にモンスターを真上へと運び、空気に赤い線が走る。

 瞬間に爆発して、モンスターは光になりながら落下していった。


「なかなかに便利そうなスキルだな」


「戦った冒険者から回収したスキルもあります。俺だけではできなかったことです」


「私は魔法もないからな。君は十分すごいと思うぞ」


「あ……はい……」


 当たり障りのない言葉を俺は出す。


 マーシナルさんは冒険者ではないし、それに比べたら俺はスキルの数も大違い。

 下手に言えばあの人を傷つけることになるため、返しの言葉はこれくらいしか言えなかった。

 ただでさえ褒められるのに慣れない俺は変に言葉を出したくない。


「私の話を少し聞いてほしい。この場所なんだがな……」


「あ、はい。構いません」


「この場所は私がよくヒーローショーに使う場所でな。今朝もやっていたのだ」


「今朝もですか? そういえば……」


 その言葉で俺は思いつく。

 よく見れば幸前とダンジョンに行く前に来た場所だった。

 場所は地面も所々ひっくり返されていて、さらには周囲の壁も壊されていたが今日来た場所だ。


「この場所も守れなかったな。しばらくはヒーローショーもここではできない」


「……」


「残念だが、悲観し過ぎることでもない。なんでも壊されたものを復旧させる人達もきていると聞くから」


「あ、そうですね……」


 再び俺は当たり障りのない言葉を出す。


「それと、天川君。今回はこうなってしまったが、私は君に礼を言いたい」


「俺にですか? 俺に感謝なんて……」


「君の戦いは遠くから少し見ていた。騒動の元凶を倒したのは君なのだろう?」


「ま、まあ否定はしないですが」


 肯定の言葉を俺は視線を外しながら話す。

 肯定するのもいまいち良い気がしない。

 かといって、下手に言ってややこしくするのは不味いと思う。


「私はさっきも言った通り、近くの人たちを守るだけで精いっぱいだった。代わりに天川君がその元凶を倒してくれて感謝しかないんだ」


「そうでしたか……俺は別の人に頼まれたからやったんですけど……」


「気にせずに受け取ってくれ、私からの礼を」


 マーシナルさんは俺の手を取って言葉をかける。


「……」


「ありがとう、元凶を倒してくれて。これでこの町もきっと元通りになるはずだから」


 俺への礼の言葉。

 こう直線的な感情をぶつけられては、こちらもうやむやには返せない。


「……どういたしまして」


「私もモンスターを含む悪とまだまだ戦い続けるから、天川君も共に頑張ろう」


「……はい!」


 俺は返事をした。




 それから俺は見張りをしていき、家へと戻った。

 家は幸いなことに被害も少なく、寝て過ごすこともできるほどだ。


 母さんもまた戻ってくることになる。

 避難所にいる人も人数が多いため、戻れる人は戻るようにと指示が出たからだ。

次から第八章となります。

予定通りいけばあと二章で終わるはずです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ