【意味怖】ノゾキアナ
俺が住んでいる町は自慢じゃないが小さな町だ。
人口もそんなに多くないが、すれ違う人の10人に一人は知ってる顔だ。
だからこそ愛着がある。
そしてそれは、みんな同じ気持ちだと思う。
今日は夏祭りの日、自治会の皆でお金を出し合って、小さな公園で盆踊り等を行う。
日中は、子供神輿を担いだりしてな。
ん・・・?
なんだ?
知った顔が走り去っていく。
単なる散歩でもなければ人が来ないような裏路地から…。
どうしたんだろう。
彼が走り去った所へ歩いていくと、そこには
「ノゾキアナ」
と書かれた小さな穴が。
あれ・・・ここは確か空き家だったはずだが・・・。
耳を澄ますと何か聞こえてくる。
とても色っぽい声だ。
女の子が二人くらいと、男が一人・・・か?
たまに大人しくなったと思ったら、急に激しい声を出したり
耳を澄まさなければ聞こえないが、でも確かに聞こえてくる。
こ・・・これはまさか・・・。
俺も男だ。罠かもしれないが、覗いてみるしかない。
さっきのあいつが走り去った姿を見たが、特におかしい所も無かった。
怪我をするような事はないはず・・・。
そうして、まずは耳を穴に近づけた。
やばい、興奮する。
なんて良い声なんだ…!
そして、そっと目を穴に近づける。
が
家の中は…空き家だった。
見ている角度が悪いのか、目が悪いのか、左右の目を交互に入れ替えて
しっかりと見たが、やはり誰もいない。
なんとなく、録音された声のような気もしてくる。
なんだ、クソ・・・。騙された!!
辺りに監視カメラがあれば壊してやろうと思ったが、特に監視カメラがあるわけではない。
人に盗撮されているような雰囲気も無い。
祭りだからって何しても良いわけじゃねぇぞクソ。
相変わらず、喘ぎ声だけは小さく聞こえてくるが
こんな場所にいるのを見られたら溜まったもんじゃない。
男はそそくさとその場を立ち去った。
家に帰ると、嫁と子供はすっかり盆踊りの準備を整えていた。
「父さん、公園行こう!」
「あなた、行きましょう」
機嫌も悪かったし、帰ってきたばかりの俺は
「競馬を見たら行く」
なんて言って、子供と嫁を先に公園に行かせた。
◇◇◇
競馬新聞を読みながらウトウトしてしまい
気が付いたら辺りはすっかり暗くなっていた。
盆踊りの太鼓の音と笛の音が響く。
まずいまずい。
さっさと家を出ると、公園の広場にいる嫁を探す。
「クスクス…」
「クスクス…」
ん、なんだ?
なんかやけに、町のやつらに見られている。
笑われて…いる…?
シャツが出ていないか、靴を間違えて履いていないか。
寝癖が付いていないか、髭をちゃんと剃ったか。
体中を触ったがおかしいような所は無い。
しかし
「クスクス」
なんだか、笑い声が強くなっている気がする。
嫌な気分だな。
しかし、ある事に気が付いた。
おかしい奴らが何人かいる。
そいつらは、目の周りと耳がテカテカと光っている。
どうしたんだ?
あれ、あいつは確かあのノゾキアナから走っていったやつ。
すると、遠くの方で俺に気が付いた嫁が、怒り顔で近づいてきた。
一緒にいる子供も俺の方をみてやるせない顔をしていた。




