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憧れのあまり聖女を自称してしまった少女が困ったことになるお話

「『未認可聖女』の調査、ですか」


 教会騎士団の団長室。騎士団長ガドファースから新たな任務を告げられた教会騎士エドヴィーゼルはいぶかし気な声を返した。

 黒い髪に浅黒い肌。凛とした青の瞳。涼やかな目元にすっきりした鼻梁の端整な顔立ち。一見細身に見えるスラリとした立ち姿だが、弱々しい印象はない。肩幅が広く引き締まった身体はまるで優美なサーベルのようだ。精悍な18歳の教会騎士だ。

 エドヴィーゼルは剣の扱いに長けており、教会騎士のなかでも一、二を争う強さを誇る。

 

 『未認可聖女』とは教会の認定もなく勝手に聖女を名乗る者のことだ。通常、そうした不埒者の対処は通常は神官が行う。トラブルに対応するため教会騎士が同行することもある。だが教会騎士一人を調査に向かわせるというのはあまりないことであり、エドヴィーゼルが疑問を持つのも当然だった。

 

 壮年の騎士団長ガドファースは立派な髭を撫でながら、若々しい騎士に告げた。

 

「『未認可聖女』は王国西部の辺境に出没しているらしい。しかも一つの場所にとどまらず、常に移動しているという。神官では後を追うこともままならん。かといって大勢を派遣するほどの事案でもない」

「なるほど、そういうことですか」


 王国西部はあまり開拓が進んでおらず、魔物と出遭うことも少なくない。そんな場所で行方の分からない『未認可聖女』を追うなら、腕の立つ教会騎士を一人を送り込むというのは理にかなっていた。


「それに貴殿も、ほとぼりが冷めるまで王都を離れていたいだろう?」

 

 そう言われてエドヴィーゼルは苦笑した。

 一か月ほど前のこと。貴族令嬢からお茶会に誘われた。なんでも教会について話を聞きたいとのことだった。エドヴィーゼルは意気揚々と出かけて、教会の在り方やその存在意義について熱弁をふるった。

 後日、貴族令嬢から誇りを傷つけられたとの苦情が入ってきた。教会について知りたいというのは建前で、美形で腕が経つという教会騎士と懇意にしたいというのが本当の理由だったらしい。

 エドヴィーゼルは教会の教えと剣に己を捧げる騎士だ。そうした貴族の流儀など、後になって言われても困る。

 

 しかし貴族の誇りを傷つけたという噂は軽いものではない。次第に教会を援助している有力貴族から苦言を呈されることがしばしばあった。そうすると神官たちの小言が増える。エドヴィーゼルはそうした状況に辟易していた。

 だがそれも、時間が経てば落ち着くだろう。エドヴィーゼルが王都をしばらく離れればそれも早まるに違いない。団長はそこまで考えて自分にこの任務を割り当ててくれたのだ。

 

「承知しました。その任務、謹んで拝命いたします」


 そうしてエドヴィーゼルは王国西部の辺境へと旅立った。

 

 

 

 王国西部の辺境は広い。王都から遠く、またこれと言って目立った資源もないため、あまり開拓が進んでいない。まばらに街が点在しているような場所だ。そんな場所に聖女を名乗る『未認可聖女』は出没しているらしい。

 エドヴィーゼルは剣に長けた優秀な騎士だが、さすがにたった一人でそんな広い地域を調査できるはずはない。彼がやることは基本的には『未認可聖女』出没の報告があった街の教会に行き、報告を受け、付近の住民に聞き込みを行うことだ。報告自体は王都に届いている。だがそれだけでは伝わらない情報は多い。現地で話を聞いて実態を探り、その正体を突き止める。

 『未認可聖女』の活躍は実に派手なものだった。

 

 山の洞窟から現れたジャイアントワームを討伐した。

 街を襲おうとしていた大規模なゴブリンの群れを殲滅した。

 村の近くに住み着いたグリフォンをたった一人で討伐した。

 地下遺跡から突如出てきた巨大なロックゴーレムを粉砕した、などなど。

 

 事前の情報を見たとき、尾ひれがついて噂が大きくなったのだと思っていた。どの案件も上位の冒険者パーティーが対応するような難度のもので、女性一人でやったこととは思えない。

 しかし現地の人々の話を聞いた限りどうやら事実のようだ。事件のあった場所から、その魔物の素材を売ったという記録まで残っていた。

 異様なのはその活躍が魔物の討伐に限られることだ。『未認可聖女』は回復魔法が使える娘であることが多い。若い娘がけが人を癒せば、周囲の者たちは聖女のようだと言ってちやほやする。それでのぼせ上って聖女を名乗るようになるのだ。そうした者は大抵、増長して金品を要求するようになる。そんな人間を野放しにしては信仰の妨げとなる。だから教会は『未認可聖女』は放置してはおけないのだ。

 

 だが今回の『未認可聖女』は違った。このこれだけの活躍をしながら、『未認可聖女』は事件が解決するとすぐに立ち去ってしまうという。金品を要求するどころか礼の言葉すらろくに受け取らないらしい。

 『未認可聖女』は10代半ばの娘だという。金髪に琥珀色の瞳。まとう装束は常に白とのことだ。


「あの方は自ら聖女と名乗りなさった! それにあの神々しい立ち姿! まさに女神さまの遣わした聖女様に違いありません!」


 『未認可聖女』に助けられた人々は、そんなふうに彼女のことを褒めたたえた。教会が認可していない者が信仰を集めつつある。これは予想以上に厄介な案件のようだった。

 

 

 

 調査を始めて三か月ほどたったころ。教会騎士エドヴィーゼルは、とある商人の馬車に揺られていた。辺境の村や町を巡る商人は、馬車を余分に用意して人々の運搬も担う。当然、それなりの料金を支払う必要はあるが、辺境における貴重な交通手段のひとつだった。

 馬車の中にはエドヴィーゼルのほかに何人か相乗りしていた。親子連れや職人。それに、15歳くらいの少女がいる。エドヴィーゼルは気づかないふりをしていたが、少女からの視線を感じている。移動の多い旅で鎧は来ていない。ごくありふれた旅装束だが、教会の紋章が入ったマントが教会に属していることを示している。それが珍しいのかもしれない。

 それにエドヴィーゼルは美形だ。自分の容姿が目を引いてしまっているのかもしれない。信仰にすべてを捧げる彼にとっては邪魔にしか思えないものだった。エドヴィーゼルはそっとため息を吐いた。

 

 『未認可聖女』の正体はまだつかめていない。何匹もの魔物を倒すという派手な活躍をしていながら、その足跡をたどろうとすると途端に情報が途絶えてしまう。『未認可聖女』は金髪に白装束の少女だという。白装束はともかく、金髪は平民には珍しい色だ。それほど目立つ容姿をしているのに街道や村の出入り口で見かけたという者はほとんどいない。『未認可聖女』はどこからともなく突然現れ、目的を果たすと何も残さず消えてしまうのだ。

 その行動理由もわからない。報酬も受け取らず人々を救うというだけなら聖女と呼ぶにふさわしい行いだろう。しかしその足跡をたどらせない周到さは、何か後ろめたさがあるように感じられる。

 

 力を持った人間が売名のために活動しているのか。あるいは教会の威信を揺るがすために他国が送り込んできた工作員か。三か月間調査を続けてきたが、未だ答えを見いだせていない。

 それでも『未認可聖女』の解決してきた事件の場所から、おおよその移動先は予測できた。次の町で待ち構えていれば、『未認可聖女』と出会えるかもしれない。

 そんなことを考えていると、ふと異様な気配を感じた。それと同時に馬車が止まった。エドヴィーゼルは剣を手に、すぐさま馬車を降りた。

 

「あ、お客さん! 馬車から降りないでください!」


 押しとどめようとしてくる商人に、教会騎士団の紋章が入ったペンダントを見せる。

 

「私は教会騎士だ。魔物が出たんだな?」


 商人は青ざめた顔で頷いた。

 馬車は森の中の一本道を進んでいた。

 馬車の進むず先には丸太でできたバリケードが作られている。そのずっと向こうからじりじりと進んで来る無数の影。距離はあったが、その特徴的な外見からどんな魔物か分かった。犬の頭を持った亜人の魔物、コボルドだ。正確な数は分からないが、数十匹はいる。なにより最悪なのは、その後ろに控えている大きな影だ。あれはおそらくオーガだ。3メートル近い筋骨隆々の魔物が2体もいる。

 嫌な気配を感じて後ろを見れば、そちらからもかなりの数のコボルドが近づいてくるのが見える。

 

 周囲は木々が密集している。森の中に馬車ごと逃げることはできない。かといって土地勘もないまま馬車を捨てて逃げ出せば、コボルドたちの餌食になるだけだ。

 戦って切り抜けるしかない状況だった。馬車の前後では、護衛として雇われた冒険者たちが早くも剣を抜きはらい戦闘に備えている。


「私は教会騎士エドヴィーゼルだ。手伝わせてくれ」

「へ! 教会の騎士様が助太刀してくださるのか! こいつはありがたいねえ!」

 

 不敵に言葉を返す冒険者だったが、顔色はよくない。当然だ。冒険者の数は総勢10名ほど。この状況下、この数の魔物相手にはあまりに心もとない戦力だった。

 エドヴィーゼルは剣の腕が立つ。コボルド程度に遅れは取らない。一人なら逃げ延びるくらいは十分に可能だ。だがそれは商人や馬車に乗り合わせた人々を見捨てることになる。教会騎士としてそんな非道は選択できない。

 一人でも多く救うため、全力を尽くさねばならない。エドヴィーゼルは覚悟を決めた。

 

 そのとき。彼の前に一人の少女が忽然と降り立った。

 肩まで届く黄金色の髪。凛と輝く瞳は琥珀色。年のころは10代半ばだろう。身にまとうのは白いフード付きのマントに、白の装束。清楚可憐な乙女だった。


「胸に燃やすは愛の炎! 瞳に宿すは勇気の光! 撃滅聖女ピュアナックル、ここに見参!」


 目の前の少女は聖女を朗々と名乗りを上げた。噂に聞いた通りの名前。間違いない。目の前のこの少女こそが、エドヴィーゼルの探し求めた『未認可聖女』だ。

 だがしかし、エドヴィーゼルはすぐには動けなかった。『未認可聖女』が自ら名乗ることは知っていた。金髪に白装束なのも聞いていた。村の子供が『未認可聖女』の真似をして遊んでいるのを見かけたこともある。

 それでもこんなにも堂々と、まるで演劇の舞台にいるかのように名乗るとは思っていなかったのだ。

 周囲を見ると冒険者も商人も、魅せられたように彼女を見つめていた。


「さあみなさん! わたしが来たからもう安心です! 正面のコボルドはわたしが倒します! その間、後ろの魔物たちを足止めしていてください!」


 一方的にそういうと、『未認可聖女』ピュアナックルはたった一人で正面のコボルドの群れに向かって走っていった。

 

「待て! 一人では無謀だ!」


 エドヴィーゼルは追いかけようとした。だがまるで追いつけない。ピュアナックルは風のように早かった。

 あっという間にコボルドの群れに突っ込むと、ピュアナックルは鋭く拳を放った。

 

「撃滅パンチ!」


 ただの一撃でコボルドの上半身が骨すら残さずはじけ飛んだ。周囲にいたコボルドたちも何匹かがその余波で吹き飛ばされて絶命した。恐るべき破壊力だった。ただのパンチ一発が、中級魔法以上の破壊力を有していた。

 

「撃滅キック!」


 続いてはなった回し蹴りは、コボルドを5匹ほど薙ぎ払った。まるで薄布を千切るようなたやすさでコボルドたちを倒していく。

 これまで『未認可聖女』の足跡を調べてきた。討伐された魔物の数と強さから、実は裏で複数の協力者がいるのだと疑ったこともある。だが、違った。この実力なら彼女の活躍は全て本当のことだったのだろう。目の前でここまでの強さを示されては信じるしかなかった。

 彼女からは魔力を感じる。おそらく何らかの魔法を使っているのだろう。威力のわりに魔力は感じられない。せいぜい下級魔法程度の魔力しか使っていないようだ。それであの威力をたたき出すとは、どんな魔法かまるでわからない。それに聖女を名乗っているのに、聖なる力がまるで感じられないのも妙だった。

 

 とにかく、この実力なら正面は任せて問題ないだろう。むしろ近くにいては彼女の戦いの妨げになる。

 今考えるべきことは、馬車の人々を守ることだ。エドヴィーゼルは気を取り直し、後方へと向かった。

 

 

 

 コボルドたちの襲撃は失敗に終わった。誰一人として命を失うことはなく、馬車もほとんど損傷せずに済んだ。

 エドヴィーゼルも10体近くのコボルドを切り伏せた。護衛の冒険者たちも目を見張る活躍だった。だがそれもピュアナックルの働きと比べれば色あせる。ピュアナックルは正面の魔物を殲滅すると、すぐさま後方の戦いにも加わった。まったく疲れも見せず、後方の魔物も瞬く間に殲滅してしまった。

 

 

「さあこれで、魔物は全て倒しました! みなさん、大丈夫ですか?」


 ピュアナックルが問いかけると、歓声が沸きあがった。

 

「聖女様ありがとう! あなたは命の恩人です!」

「ああ、なんて神々しい! これこそ神の奇跡!」

「噂は本当だったんだ! 聖女様はなんて強いんだ!」


 商人も冒険者も大変な盛り上がりだった。誰も彼もが手を叩き腕を振り上げ感謝の言葉を贈った。

 するとピュアナックルの顔がみるみる赤くなった。それがなんともかわいらしく、人々はますます褒めたたえた。


「……み、みなさん大丈夫なようですね! それではわたしはこれで失礼します!」


 そう言ってピュアナックルはぺこりと頭を下げてお辞儀した後、馬車に背を向けた。このまま立ち去るつもりのようだ。礼の言葉すらろくに受け取らないという噂は本当だった。

 エドヴィーゼルは慌てて声をかけた。

 

「ま、待ってくれ! 私は教会騎士エドヴィーゼル! 貴女と会うためにここまで旅してきたんだ!」


 言葉を投げかけながら胸元からペンダントを取り出した。教会騎士団の紋章が彫られたそれは、彼が正式な教会騎士であることを証明するものだ。

 ピュアナックルの動きがぴたりと止まり、くるりとこちらに向き直った。


「教会の騎士様ですか?」

「ええ、そうです」

「そうですか。ついに来たんですね。勝手に聖女を名乗る私を罰するために……」


 そう言ってピュアナックルは顔を伏せた。

 空気が張りつめる。確かに彼女は多くの人々を救ってきた。それはこれまでの調査で分かっていた。

 だが、教会に友好的な人間なのかはわからない。教会と敵対していて、だから認可も取らず聖女を名乗っている可能性もある。

 

 もし彼女が敵意を持って襲い掛かってきたらどうなるか。剣の腕に自信はあったが、ピュアナックルの強さは別次元のものだ。『撃滅パンチ』を食らえばまともな死体すら残らないだろう。

 思わず後ずさりしてしまいそうになる。だがエドヴィーゼルは奥歯をかみしめてこらえた。

 

「……あなたは人々を救ってきた。立派なことだ。だが私は教会に属する人間だ。教会からの認可も受けず聖女を名乗るあなたとは、話さなければならないことがある」


 ここで退けば人々は教会への信頼を失うことだろう。彼自身も自らの信仰を裏切ることになる。たとえ命を失うことになろうと、教会騎士として退いてはいけない場面だった。

 

 つかつかと、顔を伏せたままピュアナックルはこちらに歩いてくる。

 エドヴィーゼルはごくりと生唾を飲み込みそれを見つめた。

 じっと見ていると、彼女の様子が変わった。あのきらめく金髪は暗くなり、色を落とし、茶色に変じた。白装束もその清廉さを失い、茶色になっていく。それでようやく気づいた。彼女の身にまとっているのは特別な聖女の衣装ではなく、どこにでもあるありふれた旅装束だった。

 

「勝手に聖女を名乗ってしまって、すみませんでした!」

 

 そう言ってピュアナックルは頭を下げた。

 エドヴィーゼルはあっけにとられた。その姿に見覚えがあった。目の前にいたのは、さきほどまで馬車で同席していた、旅の少女だった。




 商人の馬車の一団が進む。エドヴィーゼルはその後方で馬の手綱を取っていた。彼の後ろには『未認可聖女』ピュアナックルがいる

 事情を聞くために二人きりで話す必要があった。しかしあの場にとどまれば、血の匂いに引かれて他の魔物がやってくる恐れがある。移動しなければならない。

 

 馬車の数には余裕がなく、他の乗客を押しのけて二人きりで乗るというわけにもいかない。

 だから護衛の冒険者から馬を一頭借りて、馬車の一団から離れてついていくことになした。これならよほど大声を出さない限り話を聞かれることはない。魔物の襲撃を受けたとしても素早く対処することが可能だ。顔を見るのにいちいち振り返らなくてはならないのは面倒だが、そのぐらいのことは我慢しなければならないだろう。

 

「さて……これなら大丈夫だろう。なぜ君が聖女を名乗って人助けをしているのか。ピュアナックル殿、どうか話してくれないだろうか?」

「わたしの名前はペアルーシャです!」


 エドヴィーゼルが話を切り出すと、ピュアナックルはなぜか顔を赤らめ別の名前を告げてきた。


「つい先ほど、『撃滅聖女ピュアナックル』と名乗っていたじゃないか」

「あっ……あれは……! なんと言いますか、偽名のようなもので……とにかくわたしのことはペアルーシャと呼んでください。ただの平民ですし、呼び捨てでいいです」

「承知した。ではペアルーシャ、事情を話してくれないか?」


 そうして『未認可聖女』のペアルーシャは事情を話し始めた。

 

 

 

 物心ついたとき、ペアルーシャは教会の運営する孤児院にいた。両親に捨てられてしまったと言うが、細かい事情はわからなかった。シスターは優しかったし、他の子どもたちとも仲良くしていたのでさみしいと思うことはなかった。

 孤児院を運営する女神官はいつも聖女の伝説について語って聞かせてくれた。この王国ではいくつもの聖女の伝説がある。回復魔法で多くの人の命を救った癒しの聖女。浄化の力で邪悪な魔物を打ち払った勇気の聖女。恵みの奇跡で大飢饉から国を救った実りの聖女。そんな聖女たちの活躍を知るたびに、聖女へのあこがれが強くなった。

 

 この王国では10歳になった子供は魔力の測定を受けることできる。義務ではなかったが、孤児院の子供が測定を受けるのは通例となっていた。高い魔力があればいい家に引き取ってもらえるからだ。

 ペアルーシャは魔力測定を楽しみにしていた。魔力があれば伝説の聖女のように活躍できるのではないか。そう考えるとワクワクしてたまらなかった。

 

 ペアルーシャは平民にしては高い魔力があることがわかった。彼女の期待はぐんと高まった。魔力があるとわかれば次は魔力適性の検査だ。これによってどんな魔法に向いているのかわかるのだ。

 ペアルーシャは期待した。しかし現実は無情だった。ペアルーシャは聖女にとって最も大切な神聖魔法への適性が全くなかった。その他の火・水・風・地への精霊魔法の適性も並程度。ただ支援魔法だけは高い適性を示した。

 これでは聖女になることなど夢のまた夢だ。ペアルーシャはがっくりと気落ちした。

 

「なかなか面白そうな子供だ。あたしが引き取らせてもらうよ」


 そう言ってペアルーシャの引き取りを申し出てきたのは、森の奥に住むという魔女だった。女神官は出自のしれない魔女に子供を渡すことに不安を覚えた。だが結局、ペアルーシャが承諾したことで引き取りは決まった。ペアルーシャは聖女になれないならどこでもいいと、自暴自棄に考えていたのだ。

 

 そうして招かれた魔女の家で、ペアルーシャは雑事を任されつつ魔法の修業をすることになった。そして過ごすうちに、魔女はペアルーシャの傑出した才能を見出した。

 

「やっぱりあたしの見込んだ通り、あんたは面白い才能を持っていた! 身体強化魔法の異常適性だ!」




「身体強化魔法の異常適性だって!?」


 エドヴィーゼルは思わず声を上げてしまった。稀に特定の魔法に対してきわめて高い適性を持つ者が現れる。そうした者は、その優れた能力で歴史に名を残すこともある。彼が驚きの声を上げるのは当然のことだった。

 

「はい、そうです。自分自身の強化に限りますが、少ない魔力で大きな効果が得られるんです。さっきの戦いでもバンバン使ってました」

「じゃあコボルドを消し飛ばした『撃滅パンチ』もただの身体強化で繰り出したものだったというのか!?」

「ええ、その通りです」


 エドヴィーゼルは言葉を失った。確かにあの戦いで何らかの魔力が使われているのはわかっていた。神聖魔法の気配が感じられないのを妙だと思った。

 だがまさか、あれが純粋なパワーによるものだとは思わなかった。身体強化魔法とは身体能力を数倍程度上昇させるものだ。細い身体の魔導士が、大剣を軽々と持つのを見たことがある。

 だがペアルーシャの身体強化魔法は次元が違う。あれほどの破壊を引き起こすということは、身体能力を数十倍は上昇させているに違いない。常軌を逸する恐るべき力だ。

 なにより驚くべきことは、それほど身体能力を上昇させていながら、そのパワーに振り回されていないことだ。無駄のない動きで、周囲を過度に破壊することもなく、的確に魔物を倒していた。

 エドヴィーゼルは教会騎士の中でもトップクラスの剣の使い手だ。そんな彼から見ても、この少女の持つ戦士としての才能は並ではなかった。


「そういえばさっき、君の髪や瞳、服の色まで変わっていた。それも魔法なのか?」

「わたしの身体強化魔法は髪や瞳、身に着けた服にまで作用するんです。残念ながら武器には作用しないので、素手で戦うしかありません。なんであの色になるのかは魔女様もわからないと言ってました」

「そんな理由だったのか……」


 これまで謎の『未認可聖女』の足跡をたどってきたが、その移動経路がわからなかった。だがそれも当然だった。戦闘時には金髪に白装束の目立つ姿。非戦闘時は茶色の髪にありふれた色の旅装束。何らかの隠ぺい策かと思ったが、彼女は普通に移動していただけだったのだ。





 身体強化魔法の適性が見出されても、ペアルーシャはふさぎ込んでいた。

 確かに便利な魔法だ。力仕事がすごく楽になる。でも聖女というにはほど遠い。ペアルーシャは将来になんの期待も持てずにいた。

 そんなある日。ペアルーシャが15歳になったころ。魔女にこんなことを言われた。

 

「力ある者は世に出なければならない。こんな森の中で閉じこもっているなんてもったいない。あたしはそんな怠慢を許せないね」


 そして、気が付いたらどことも知れない町にいた。背負い袋を背負い、旅装束をまとっていた。背負い袋の中にはしばらく生活できるだけのお金と、数着の着替えが入っていた。

 しばらく道のわきにたたずんでいた。後ろ向きな自分に対するお仕置きで、反省すれば迎えに来てくれるのではないかと思ったのだ。

 しかし何日たっても魔女は迎えに来なかった。自分は見限られたのだと理解した。

 

 


「……それはひどい話だな。たとえ血のつながりはなくても、引き取ったなら親としての責務を果たすべきだ」


 エドヴィーゼルは顔をしかめた。子供を引き取っておきながら、気に入らないことがあったから養育を放棄するなど、教会騎士である彼には受け入れがたいことだった。

 

「最初はわたしもそう思いました。でも、違ったんです。身体強化魔法のおかげで力仕事ができましたし、町のならず者に絡まれても難なく撃退できました。魔女様はわたしに一人で生きていけるだけの力をとっくにくれていたんです。そんなわたしの目を覚ますための荒療治だったんだと思います」

「そうか……」

「それはそれとして文句は言いたかったので、魔女様のいる森に行くために旅費をためることをひとまずの目標としました」

「なんていうか……たくましいな、君は。それで魔女様には会えたのか?」

「いいえ。その前に魔物が現れたのです。その戦いでわたしはうっかり聖女を名乗って戦ってしまいました。魔物には問題なく勝利できたのですが、見ていた皆さんが聖女が現れたと盛り上がってしまって……」


 エドヴィーゼルはその光景が目に浮かぶようだった。

 聖女を名乗った少女があんなすさまじい力で魔物を倒したのなら、神のもたらした奇跡とした思えないだろう。聖女が現れたと騒ぎ立てるのも当然だ。つい先ほども、神聖な力なんて全く使わなかったペアルーシャを、商人も冒険者もこぞって賞賛していた。


「だから、逃げました」

「逃げた?」

「逃げました」

「……なんで逃げてしまうんだ? 確かに聖女を騙るのはよくないことだ。それでも君は、魔物を倒して人を救ったのだろう?」

「だって、だって……! 解釈違いなんです!」

「解釈違い……?」


 急に予想外の言葉が出てきてエドヴィーゼルは困惑した。


「聖なる力も癒しの力も使わずに、腕力だけで魔物を倒す! そんな聖女がいてたまりますか! わたしみたいなのが聖女と呼ばれるなんて、解釈違いにもほどがあります! 情けなくていたたまれなくて、恥ずかしくなって……逃げずにはいられなかったんです!」


 聖女にあこがれがあるだけあって、ペアルーシャはずいぶんとこだわりがあるようだった。だからと言って逃げ出すというのはいまいち理解できない者があった。だが、思えば彼女はそれまで森の中で魔女と二人で暮らしていたのだ。どう立ち回ればいいのかわからなったのかもしれない。

 

「その後は別の町で働くことにしました。でも、また魔物に出たんです」

「辺境は魔物が多いからな」

「町の人たちを見殺しにするわけにはいきません。戦うと、またしても聖女コールを受ける羽目になりました。だからまた逃げ出して他の町へ行きました。そうしたら魔物が出て……この一年はその繰り返しです! 全然落ち着かないし、お金も全然たまらない! もうさんざんです!」


 ペアルーシャは頭を抱えて嘆いた。だが頭を抱えたいのはエドヴィーゼルの方だった。

 これまで正体不明の『未認可聖女』を探し求めていた。教会の権威を乱す他国の策謀かと疑ったこともあった。

 しかし実際には過剰な力を持った少女が、魔物を倒すたびに逃げ出していただけだった。この三か月の苦労は何だったのかと問いただしたくなる。


「……いや、ちょっと待ってくれ。君は魔物を倒すたびに聖女だと自称していたそうじゃないか。ついさっきだって『撃滅聖女ピュアナックル』と名乗っていた。あんなことをしなければ聖女じゃなくて英雄として称賛されていたんじゃないか?」


 身体強化魔法で金色の髪に琥珀の瞳、白装束をまとったペアルーシャは神々しく見える。だがそれでも、その戦闘手段はパンチやキックだ。わざわざ聖女と名乗らなければ、魔物を倒した英雄として称賛されていたはずだ。

 その指摘にペアルーシャは気まずげに目をそらした。

 

「……あれは名乗っているわけじゃないんです。『セーブワード』なんです」

「『セーブワード』?」

「魔女様によると、わたしの身体強化魔法は強力すぎて、最大出力で使うと力に呑まれて暴走する危険があるそうです。そうならないよう、自分を厳しく律する自己暗示の言葉をとなえる…………それが『セーブワード』なんです。呪文の一種みたいなものだと考えてください」


――胸に燃やすは愛の炎! 瞳に宿すは勇気の光! 撃滅聖女ピュアナックル、ここに見参!


 あの名乗りはペアルーシャが全力を出すために必要な呪文だったのだ。理屈はわかった。理解したうえで、しかしエドヴィーゼルは納得がいかないものがあった。

 

「……あのノリノリな舞台演劇みたいな名乗りが、呪文の一種だと言うのか?」

「仕方ないじゃないですか! 強大な力を正しく使える存在と言えば、わたしにとっては聖女しかいないんです! それに、考えたのは10歳のころなんです! あの頃はかっこかわいい素敵な言葉だと思ってたんです! 一度決めた『セーブワード』は心に刻まれて簡単に変えられないし、身体強化魔法使うとテンションが上がって大声で聖女と名乗ってしまうし……ああもう、なんでこんなことに!」


 なんともバカバカしい話だが、本当に困っているようだった。自分のことを聖女に相応しくないと心底認めながら、それでも戦うときは聖女を名乗らなければならない。当人にとってはつらいことなのかもしれない。エドヴィーゼルはそう理解することにした。

 痛ましい目でペアルーシャを見ていると、彼女はガバッと顔を上げて、エドヴィーゼルをまっすぐ見つめた。その瞳は異様な輝きに満ちていた。


「だから! あなたのような人を待っていたんです!」

「私を待っていた?」

「そうです! 心に刻まれた『セーブワード』ですが、教会から正式に聖女じゃないと告げられれば、さすがに今後は使えなくなるでしょう。そうすれば聖女を騙る罪悪感からようやく解放されるというわけです!」

「なるほど、それで……」


 先ほどの戦闘の後。教会騎士を待っていたと言い、頭を下げて謝った。あの不可解な言動は、そういう事情だったのだ。

 ずいぶんと特殊で奇妙な話ではあったが、これまで抱いていた疑問はおおむね解消された。おそらく嘘ではないのだろう。嘘だったらもうちょっと信じられるまともな話にするはずだ。

 そんなことをつらつら考えていると、さっきまでの勢いから一転して、ペアルーシャは暗い顔になった。


「やっぱり、聖女の名を騙ったことは重罪なのでしょうか……厳しい罰が下されるのでしょうか……」


 ペアルーシャは暗い顔をした。彼女は聖女に強いあこがれを持っているから、聖女を騙ることに対して罪悪感を覚えているのだろう。

 こちらが難しい顔をして考え事していたから不安を覚えたのかもしれない。救いを求める者に対し手を差し伸べるのが教会騎士だ。エドヴィーゼルは穏やかな声で答えた。

 

「大丈夫だ。それほど重い罪にならないはずだ」

 

 教会が『未認可聖女』に処罰を下すのに明確な規定はない。ただ聖女を名乗っただけなら小一時間説教することもある。だが聖女の名を騙り、大金をせしめたような者ならば、牢獄送りにすることもある。だがペアルーシャは、そんな卑怯な人間ではない。


「君に救われた人はたくさんいる。そしてつい先ほど、君が人々のために戦う姿をこの目で見た。君は素晴らしい人だ。なにかあっても、必ず守る。私のことを信じてくれ」


 エドヴィーゼルはペアルーシャの目を見つめ、まっすぐに告げた。するとペアルーシャの顔がたちまち真っ赤になった。


「は、はい。ありがとうございます……」


 ペアルーシャは消え入りそうなそう言うと、顔を伏せてしまった。その反応はエドヴィーゼルにとって慣れたものだ。教会騎士として真摯に守ると誓うと、女性はみんなこうなってしまうのだ。

 

 エドヴィーゼルは端整な顔をしているし引き締まったスマートな体つきをしている。それに教会騎士は人々から信頼される立派な役職だ。そんな彼がまっすぐに見つめ、「素晴らしい人だ」とほめたうえで「必ず守る」などと言えば女性はどう受け取るか。エドヴィーゼルは自分の言動が女性に大きな影響を与えることを、いまいち理解していなかった。




 商人の馬車が目的の町に着いた後。エドヴィーゼルはペアルーシャを連れて王都へ向かうことにした。教会が彼女をどう処断するかは、やはり当人が立ち会った方が都合がよかったからだ。ペアルーシャもそのことは承諾した。彼女はもう、聖女を名乗って戦うことに辟易していた。

 道中はおおむね安全だった。途中、魔物に襲われることもあったが、その数も質も大したことはなく、ペアルーシャが最大出力の身体強化魔法を使うまでもなく対処可能なものばかりだった。

 

 王都に着くとひとまず教会に向かった。まずは到着したことを報告しなければならなかった。

 すると教会はなにやら様子がおかしかった。神官や教会騎士が足早に行き来しており、誰も彼もが緊迫した顔をしている。

 どこかおかしかったが、教会騎士団長には普段通り面談することはできた。

 

「事前に手紙で報告しましたが、この少女がペアルーシャです」

「よ、よろしくお願いします」


 ペアルーシャはよほど緊張しているのか、固い動きで頭を下げた。

 教会騎士団長ガドファースはペアルーシャのことを一瞥しただけで、すぐにエドヴィーゼルに鋭い目を向けた。


「調査ご苦労だった。ペアルーシャくんには部屋を用意してある。しばらくの間はそちらで過ごしてもらいたい。教会は今、少々立て込んでいる」


 教会騎士がやってきて、ペアルーシャを部屋に案内するために連れて行った。

 エドヴィーゼルは騎士団長の対応をいぶかしんだ。ペアルーシャについては事前に手紙で伝えてある。彼女の卓越した能力を知れば、到着時の挨拶でも少しは質問があるものと予想していた。それなのにあっさりと彼女を退室させてしまった。それに入ったときからどうにも教会があわただしい。

 

「騎士団長、いったい何が起きているんですか?」

「魔物が攻めてくるのだ」




 教会が正式に認定した聖女オーフィシラ。伯爵家の由緒正しい貴族令嬢だ。高い魔力を持ち、神聖魔法への高い適性を有している。特に結界の魔法に長けている。この王都は聖女オーフィシラの施した結界によって魔物の侵入を寄せ付けない状態になった。

 ところがこの結界にほころびが生じた。

 

 聖女オーフィシラはこの国の第一王子と婚約していた。ゆくゆくは王家に連なる聖女として国を支えるはずだった。しかし第一王子はこともあろうに男爵令嬢と恋仲となり、聖女オーフィシラに婚約破棄を突き付けてしまったのだ。

 聖女オーフィシラは悲しみに暮れた。そうしたためか魔力が安定せず、王都の結界が揺らぎ、弱まった。

 そんなときに王都周辺で多数の魔物の目撃情報が寄せられた。しかし魔物たちはすぐには攻めてこなかった。調査の結果、どうやら強力な魔族が魔物たちを指揮しているようだった。魔族は王国に悟られないよう各地から魔物を少しずつ集め、結界の弱まった今、攻めてこようとしているのだ。

 

「なんてことだ……!」


 人々のために戦ってきた『未認可聖女』を連れてきたと思ったら、教会の認めた正式な聖女は恋愛問題のもつれでその職務を果たせない状態にあるとは。エドヴィーゼルはやりきれない気持ちになった。

 教会が騒がしかったのも当然だ。魔物との戦いともなれば、教会騎士は参戦することになる。神官たちも回復魔法で王国軍と騎士団の後方支援に当たることになるからだ。

 

「私はペアルーシャのことを守ると誓いました。それなのに、危険の迫る王都に連れてきてしまいました……」

「それについてはすまなかった。貴殿たちには王都に戻らないよう指示を出したはずだったが、この混乱でうまく伝われなかったようだ。だが今から王都を出る方が危険だ。魔物の軍勢はいつ襲ってくるかわからない。今から王都を出る方が危険だ」


 エドヴィーゼルは己の行動を悔やんだ。だが彼も教会騎士だ。すぐに覚悟を決めた。


「……承知しました。ならばこの剣で魔物を打ち払い、誓いを果たして見せましょう!」

「その意気だ。貴殿の剣の腕には期待している!」


 そうしてエドヴィーゼルは戦いの準備を進めた。ペアルーシャには悪いが、彼女の問題については戦いが終わってからになりそうだ。

 魔物の軍勢の動きは予想より早かった。この日からわずか一週間後。魔物の軍勢は、ついに姿を現した。

 

 

 

 両軍は王都近くの平原に展開した。

 王国軍と教会騎士団。総数およそ3万。

 対する魔物軍は、その総数はおよそ3万。ゴブリンやコボルドなどの下級の魔物が多いが、ミノタウロスやオーガ、トロルなどの強力な魔物も混じっている。恐るべきは、きわめて統制が取れていることだ。知能の低い魔物が多いはずなのに、人間の軍隊と比べてもそん色ない見事な陣形を形成している。これは魔物の軍勢の総大将を務める魔族の支配力が極めて強力である証だ。

 

 数の上では互角であるし、下等な魔族より王国軍の兵士の方が強い。しかし魔物軍には強力な魔物がかなりの数がいるし、指揮する魔族の強さはわからない。今、王都の結界は弱まっている。この平原を抜けられれば、王都に大きな被害が出ることになるだろう。

 エドヴィーゼルは命を懸けてでも王都を守る決意でいた。

 

 開戦を待ち緊張みなぎり教会騎士団の前に、どこからともなく舞い降りた者がいる。まとうのは穢れを知らない白装束。陽光に輝く黄金の髪。凛と輝く琥珀色の瞳。まるで神の神秘が形を成したような、清らかで可憐な少女だった。

 彼女は朗々と名乗りを上げた。


「胸に燃やすは愛の炎! 瞳に宿すは勇気の光! 撃滅聖女ピュアナックル、ここに見参!」


 突然の闖入者に教会騎士団の誰もがあっけにとられた。そんな中、エドヴィーゼルは進み出た。


「なぜここに来た!?」

「もちろん魔物と戦うためです!」

「それは私たちに任せておけ! 君が戦わなくていい!」

「そういうわけにはいきません! みなさん、決死の覚悟を固めた顔をしているじゃありませんか?」


 そう言われると言葉に詰まる。魔物軍は強大だ。勝てる見込みの薄い戦いだ。少なくない死者も出るだろう。正直なところ、ペアルーシャほどの力を持った者の助力してくれるのなら心強い。

 だがペアルーシャは王国軍にも教会騎士団にも属していない。聖女ではないただの娘だ。守るべき対象だ。いくら強くても、勝てるかどうかわからない戦いに巻き込んでいいはずがなかった。

 

「わたしの力は、こういう時のためにあるんです! それでは行ってきます!」


 そう言ってペアルーシャは魔物軍に向けて駆けだした。その姿には気負いも恐怖もない。やるべきことを理解した人間の、迷いない姿だった。

 こうなることは予想していた。辺境で人々を救うために戦ってきたペアルーシャが、王都の危機と聞いて黙っているわけがない。彼女にはこの事態を伝えないように教会内部で厳命していたが、戦いを前にした状況でそんな秘密を守り通せるわけがない。こんなことになるのなら、彼女をどこかに閉じ込めておくべきだった。

 

 だがもう手遅れだ。ペアルーシャに知られてしまった。身体強化魔法を使った彼女が本気で走れば、馬でも追いつけないだろう。彼女を止めることはできない。

 ならばできることは一つだった。

 

「騎士団長! 彼女は強大な力を持っています! 必ずや魔物軍に隙を作ります! 彼女に続いて攻めるべきです!」

 

 彼女を止められないのなら、その意思を無駄にしてはならない。それに一緒に戦えば、それだけ彼女が生き残る可能性は上がるはずだ。

 エドヴィーゼル教会騎士団長に向けて必死の思いで進言した。

 教会騎士団長ガドファースは、エドヴィーゼルの報告によってペアルーシャの強さを知っている。そしてエドヴィーゼルの決意に満ちた目を見た。

 だからすぐさま決断した。

 

「あの少女は教会が認可した聖女ではない! だが辺境で魔物の脅威から人々を守った、聖女に劣らない力を持った少女だ! 彼女は決死の覚悟で魔物の軍勢を崩そうとしている! 騎士たちよ! 彼女の献身を無駄にするな!」


 ガドファースの声に呼応して、教会騎士たちはいっせいに雄たけびを上げた。


「王国軍には教会騎士団が一番槍を務めると伝えよ! 教会騎士たちよ、突撃!」


 そして教会騎士団はいっせいに突撃を開始した。しかしペアルーシュの方が早い。教会騎士団が着くよりずっと早く、たった一人で魔物の軍勢とぶつかった。

 そして、止まらなかった。

 目の前の魔物を粉砕し、付近の魔物をその余波で吹き飛ばし、敵陣深くへとどんどん切り込んでいった。教会騎士たちはそれに遅れまいと、怒涛の勢いで魔物軍とぶつかった。

 魔物軍の抵抗は予想より強くなかった。いきなり少女一人に前線を突破され、今なお止めることができていない。いくら魔族の支配力が強くても、そんな状態で士気を保てるはずがなかった。

 

 教会騎士団が有利に戦いを進める中、突如魔物軍の奥深くですさまじい轟音が響いてきた。

 続いて吉報がもたらされた。


「魔物軍中央の強大な魔力反応、消失! 魔物軍総大将が討ち取られました!」


 にわかには信じられない情報だった。しかしあの轟音を境に、魔物たちの動きは明らかに精彩を欠いていた。士気は低くともそれなりに連携していたのに、その動きすらバラバラになった。魔物たちはもはや軍勢とは呼べない。ただの烏合の衆だった。本当に、総大将が討ち取られたのだ。

 

「ペアルーシャ! 君は全く大した聖女だ! 君の作ってくれたチャンス、絶対に無駄にはしないぞ!」


 エドヴィーゼルは裂帛の気合で魔物に切り込んだ。他の教会騎士たちもますます士気を上げ魔物たちに切り込んだ。

 そこに王国軍の騎士たちも攻撃に加わった。

 戦いの趨勢は決した。ペアルーシャはたった一人で、この戦いの結末を変えたのだ。

 

 


「やっと見つけた……!」


 ようやくエドヴィーゼルはそこにたどり着いた。

 戦いはもうほとんど終わりかけている。魔物軍は散り散りになり、王国軍と教会騎士団が追撃戦に移っている。

 ペアルーシャは、つい先ほどまで戦場の中心だった場所にいた。周囲には夥しい魔物の死体が転がっている。膝をつき、肩で息をしている。その髪は金色を保てず、元の茶色に戻りつつある。限界が近いのだろう。


「はあっ……はぁっ……あれ? エドヴィーゼルさん……? なんでこんなところにいるんですか……?」


 疲労のためか、ぼんやりと問いかけてくるペアルーシャに、エドヴィーゼルは声を張り上げた。


「それはこっちのセリフだ! なんて無茶な戦い方をするんだ! 死んだらどうするつもりだ!?」

「はぁっ、はぁっ……だって、仕方ないじゃないですか……魔物軍の真ん中にいる魔族は絶対ヤバいと思いました……最初に倒さないと、負けちゃうと思ったんです……」

「君って人は……!」

 

 ペアルーシャは魔物軍との戦いがあることは知っていても、敵軍の細かな情報までは知らなかったはずだ。なんの準備もなしに戦場に現れて、魔物軍の急所を見抜き、ためらわずに突撃した。

 総大将の魔族を倒した後も、魔物軍の真ん中で戦い、魔物たちの統制を乱し続けた。魔物軍は秩序を回復できずなすすべもなく壊滅させられた。

 魔物との戦いに慣れてはいても、さすがにこの規模の戦いは初めてだったはずだ。それなのに、ペアルーシャは誰より正しく戦況を理解していた。

 しかしそれは理解しただけで実行できることではない。強ければできるということでもない。卓越した戦闘センスと勇気を兼ね備えていなければなしえない偉業だ。


「どこか痛いところはないか? 私も基本的な回復魔法くらいは使える。応急処置くらいはできるぞ」

「そういえば言っていませんでしたね……私の身体強化魔法は治癒力も増大させるんです。すぐに治ってしまうから、へっちゃらです……」


 見れば確かにペアルーシャの服には何か所も、むごたらしく切り裂かれた跡がある。見た限りでは出血は止まっているようだ。彼女の言う通り、治ったのだろう。

 だが、それでいいはずがない。ケガをしたという事実には変わりない。痛かったはずだ。苦しかったはずだ。それでも彼女は王都を守るために戦い抜いたのだ。

 エドヴィーゼルは剣を鞘に納めると、ペアルーシャの身体を有無を言わさず強引に背負った。

 

「エドヴィーゼルさん!? なにするんですか、おろしてください! ちょっと疲れてますけど、まだまだ大丈夫です。自分で歩けますよ!」

「うるさい! 守ると誓ったのに、君を一番危険な戦場に行かせてしまったんだ! これくらいのことはさせてくれ!」


 そのままエドヴィーゼルはずんずんと王都に向けて進んでいった。耳を貸す様子はない。ペアルーシャは観念して、その背に身を預けた。

 

「わかりました。それじゃあお願いします……」

 

 金色だった髪も、白かった服も元の色に戻った。まぶたが自然に下がり、口からは早くもすぅすぅと寝息が漏れ始めた。強がっていたが、やはり限界だったのだろう。

 エドヴィーゼルもまた疲労の極みにあった。ペアルーシャの活躍のおかげで有利な戦況だったとはいえ、経験したことのない規模の戦いで、全力で高い続けたのだから当然だ。それでも彼は、本隊に合流し治療役の神官たちに彼女をひきわたすまで、休むことなく歩き続けた。




 あの戦いから三か月ほどが過ぎた。

 王都の教会の応接室でエドヴィーゼルとペアルーシャは向かい合って席についていた。ペアルーシャは緊張した面持ちで問いかけた。

 

「大事な話があるということですが……ようやくわたしの処遇が決まったのですね」

「待たせてしまって申し訳なかった」


 エドヴィーゼルは深々と頭を下げた。


「や、やめてください! わたしは気にしてませんから!」


 そう言われても、エドヴィーゼルとしては申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 

 ペアルーシャは命を懸けて王都の危機を救った。本来なら国を挙げてたたえるべき偉業だ。

 しかし彼女は『未認可聖女』だ。その上、辺境ではその評判が高まりつつある。そんな微妙な立ち位置にあるペアルーシャをいきなり祭り上げては、国内に混乱を生むことが懸念された。貴族も教会も対応を決めかねた。魔物軍との戦いのあとの処理もあり、ペアルーシャのことは棚上げにされていた。

 つまらない政治的なやりとりで、王都を救った功労者を三か月も待たせるなど恩知らずにもほどがある。エドヴィーゼルはずっと不満を抱いていた。だが剣の腕は優れていても教会騎士の一人にすぎない彼にできることは少なかった。

 

 その間、ペアルーシャには教会に滞在してもらうことにした。神官たちには賓客として丁重に扱うよう頼んだ。しかしペアルーシャは客として扱われることをよしとせず、教会内の雑事を自ら手伝うようになった。彼女は大変な働き者だった。今では神官たちともすっかり仲良くなっている。

 当人は楽しそうだったが、エドヴィーゼルとしては心苦しかった。

 だがその日々もようやく終わる。エドヴィーゼルは彼女に吉報を告げる役割を仰せつかることができたのだ。

 エドヴィーゼルは顔を上げると、ペアルーシャの笑顔に迎えられた。妙に温かな笑顔だった。

 

「そんなに申し訳なさそうな顔をしないでください。『未認定聖女』として罰を受けることは、わたし自身が望んだことです。教会で一生ただ働きさせられることになってもかまいません。教会の仕事にはすっかり慣れたから大丈夫です」


 妙に積極的に教会の仕事に励んでいると思ったら、そんなことを考えていたのか。エドヴィーゼルは苦笑した。そんな彼女のことが好ましくてたまらなかった。

 彼女が心からの笑顔になってくれることを期待して、教会の決定を告げた。

 

「ペアルーシャ。君は聖女として正式に認定された」

「は?」

 

 ペアルーシャは驚きに目を見開いた。さっきも罰を受けるつもりと言っていた。きっとこの幸せを受け止めきれないのだろう。エドヴィーゼルは彼女が笑顔になるのを辛抱強く待った。

 しかし彼女はうれしそうな顔をしなかった。むしろその顔は不審に満ちていった。

 

「ちょっと待ってください。この王国には正式な聖女様がいましたよね?」

「聖女オーフィシラなら退任した」

「え? なんでそんなことになるんですか?」

「そういえば、君にはまだ事情をきちんと話していなかったな……よし、改めて説明しよう」




 聖女オーフィシラは名門伯爵家の令嬢だった。高い魔力に優れた神聖魔法への適性を持ち、人格面でも問題ない優秀な聖女だった。第一王子と婚約し、将来は国を支えることを期待されていた。

 しかし第一王子は男爵令嬢と恋仲に落ちた。そしてこともあろうに聖女オーフィシラに婚約破棄を突き付けた。心が深く傷ついた聖女オーフィシラは王都を守る結界を維持できなくなってしまった。そこに魔族が魔物軍を率いて攻めてきたというのが今回のあらましだ。

 

 これら一連の出来事はあまりに都合がよすぎた。大量の魔物を集めるのには相当な時間がかかる。王都の結界が弱まった時、たまたま魔族が攻勢をかけるなど、ただの偶然で片付けられることではない。

 魔物軍との戦いを終えた後、徹底的な調査が進められた。そして第一王子を誑かした男爵令嬢は魔族の手の者であることがわかった。第一王子は魔法と投薬によって正常な判断力を失い、婚約破棄を宣言した。

 すべては王国を滅ぼそうとする魔族の策略だったのだ。

 

 第一王子は王位継承権を失った。今後は辺境に送られ、幽閉同然の暮らしを送ることになるという。おそらく表舞台に戻ってくることは二度とないだろう。

 聖女オーフィシラは心の弱さを恥じ、自ら聖女の称号を返上した。それでも自分の仕事を放棄することはなかった。今後は神官として王都の結界の維持に従事するという。それと並行して結界魔法を扱える後進を育て、自分に何かあったとしても王都の守りがおろそかにならないように務めるとのことだった。

 

 そうして聖女が空位となった。だからペアルーシャをその位置に収めようという話になったのだ。出自も明らかでなく、神聖魔法への適性も持たない平民の娘を聖女に認定するなんて異例中の異例だ。エドヴィーゼルからすれば、ペアルーシャが聖女になるのは当然だ。三か月も待たせるなんて王家はどうかしていると思うぐらいだ。

 

 そうした事情を話したが、ペアルーシャは喜ばなかった。むしろますます険しい顔になっている。

 

「どうしたんだペアルーシャ? 嬉しくないのか?」


 そう問いかけると、ペアルーシャは机をたたいて立ち上がった。その顔は怒りに満ちている。思いがけない反応にエドヴィーゼルは戸惑った。


「前に解釈違いだって言いましたよね!? 神聖魔法をまるで使えない、腕力だけしか取り柄のない者が聖女になっていいわけがないでしょう! 何をバカなことを言っているんですか!?」


 これにはエドヴィーゼルも驚いた。あれほどの功績をあげながら、ペアルーシャはまだ自分は聖女に相応しくないと思い込んでいるのだ。理解しがたいまでの聖女へのこだわりだった。

 だがエドヴィーゼルも後に引くわけにはいかなかった。


「君はどうして神聖魔法の適性にばかりこだわるんだ!? 見返りも求めず人々を救った君は、誰よりも聖女にふさわしい! 文句を言う人間はこの王国にはいない!」

「わたしがいます! 浄化魔法も回復魔法も使えない聖女がなんて、やだやだ! やだーっ!」


 まるで駄々っ子だ。ペアルーシャの聖女への想いが強すぎる。現実の聖女はそこまで神聖な存在ではない。事実、前任の聖女オーフィシラは婚約破棄されて王都を危険にさらした。神聖魔法を扱えても、恋愛のもつれで失敗する普通の人間だったのだ。

 でも彼女の中では違うのだろう。彼女にとって聖女とは、神聖不可侵の尊い地位なのだ。


「胸に燃やすは愛の炎! 瞳に宿すは勇気の光! 撃滅聖女ピュアナックル、ここに見参!」


 茶色い髪が金髪になり、身にまとった衣服は白く染まる。凛と輝く琥珀色の瞳。身体強化魔法を全開にした姿だ。いきなり身体強化魔法を全力で発動させた。予想外すぎる彼女の行動にエドヴィーゼルは目を白黒させた。

 

「ペ、ペアルーシャ!? いったい何をするつもりだ!?」

「決まってるでしょう!? いつものように逃げるんです! わたしみたいなのを聖女に任命するだなんて、この王国にはガッカリです! こうなったら他の国に行って大暴れして、今度こそ『未認可聖女』として罰してもらうんです!」

「何をバカなことを言っているんだ君は!?」

「お世話になりました! それではさようならっ!」


 律義に一礼すると、ペアルーシャは背を向けた。ペアルーシャが行ってしまう。そう考えた瞬間、エドヴィーゼルはいてもたってもいられなくなった。

 気が付くと彼女のことを後ろから抱きすくめていた。

 

「エ、エドヴィーゼルさん!? いったい何のつもりですか!?」

「君が王国を去るなんて言うからだ!」

「だからってこんな……教会騎士が、許可も得ず女性の身体を抱きしめるなんて……! こんなこと、やっちゃっていいんですか!? 偉い人におこられますよ!」

「確かにそうしたことは禁じられている……だが! 君をこのまま行かせるくらいなら、教会騎士を辞めてもかまわない!」

「な、なにを言っているんですか!? そもそもわたしがちょっと力を込めれば、あなたなんて簡単に弾き飛ばせるんですよ! ケガしたくなかったら早く放してください!」

「嫌だ! 君といっしょにいられるなら、どれだけ傷つくことになろうとかまわない!」


 ペアルーシャの顔が真っ赤になった。

 

「さっきからなんなんですか、もう! 変な言い方ばっかりして! わたしのことを好きなんじゃないかって、勘違いしちゃうじゃないですか! 女の子を勘違いさせるのは、とっても悪いことなんですよ!」


 そう言われてエドヴィーゼルは考えた。こんなにもペアルーシャと離れたくないのはなぜなのだろう。教会騎士として聖女を他国に行かせてはならないという義務がある。王都を救ってくれた恩人に報いたいという感謝の気持ちもある。

 だが胸の中から湧き上がる熱い気持ちは、それらのことだけでは説明がつかないように思えた。


「私は、教会騎士として正しく生きることばかり考えていた不器用な男だ。愛とか恋とか、そういう意味で君のことが好きなのかは、わからない。でも、君とずっと一緒にいたいと思う。だから、この手を放さない。放したくないんだ」


 エドヴィーゼルは自分の中でまとまりきらない気持ちを、ただ思いのままに吐き出した。ペアルーシャは耳まで真っ赤になった。


「もうっ………ずるいです。そんなふうに言われたら逃げられなくなっちゃうじゃないですか……」


 ペアルーシャの髪は黄金の輝きを失い、元の茶色に戻った。そして背中から抱きしめてくるエドヴィーゼルの手に、身を預けた。

 魔物の大軍を前にしても止まることのなかった撃滅聖女が、ついに止まった。それをなしたのは、教会騎士の素朴で不器用な愛だった。




 こうしてペアルーシャは国外逃亡をあきらめ、正式な聖女となった。

 しかし彼女はそのことをあまり深刻にとらえていなかった。神聖魔法をまるで使えない自分が聖女としてやっていけるわけがない。どうせすぐに解任されると思っていたのだ。


 しかし、その予想は外れることになる。

 

 行く先々で魔物と出会ったのは、ただペアルーシャの運が悪かったというだけではない。魔族が魔物の大軍を率いて王都を襲撃したのも、ただの一過性の事件ではない。

 伝説に語られる魔王が復活しつつある。魔物に関するすべての出来事は、その前兆だったのだのだ。

 

 これから王国は魔王との戦いを繰り広げることになる。ペアルーシャは王国の聖女として否応なく魔王軍に立ち向かい、『撃滅聖女ピュアナックル』の勇名を広めることになる。そんな彼女の戦いを支えるのは、厳しい修練の果てに聖剣に選ばれた教会騎士エドヴィーゼルだ。二人の活躍は後世まで語り継がれる数々の伝説を生み出すことになるのだが……それはまた、別の物語である。



終わり

「現代日本で魔法少女やヒーローに憧れる一般人がヒーロー活動をする」系の話をいくつか読みました。

ファンタジー世界で同じ方向の話を書けないかと思いました。

それが成り立つようキャラや設定を詰めていったらこういう話になりました。

なんかヒロインのスペックがだいぶ一般人離れしてしまいました。

でもなんとかまとまってよかったです。


2025/11/18 19:30頃

 誤字指摘ありがとうございました! 読み返して気になった細かなところもあちこち修正しました。

2025/11/20

 誤字指摘ありがとうございました! 修正しました!

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― 新着の感想 ―
素晴らしい作品をありがとうございます! キャラたちが皆素敵です!
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