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第42話 いくら入念に作戦をたてたところで失敗する時は失敗する


「…………なぁ美都……」


「どうしたの?」


「…………妖怪、全然出てこないな……」


「そうね」


「…………もう10分以上も歩いているのにな……」


「は? 何寝ぼけた事言ってんのよ、冬夢。まだ歩き始めて3分も経ってないわよ?」


「えぇ〜…………マジかよぉ……」



いつになく情けない声をあげる冬夢。

お化け屋敷の類いがトラウマレベルに苦手と言うのはどうやら本当らしく、妖怪屋敷の中に入ってから冬夢はずっと縮こまりっぱなしだ。

ちょっと物音がしただけで異常なほどまでに過敏な反応をとるし、常に周りを警戒するようにキョロキョロと見渡している。


ここは他のお化け屋敷と比べて比較的明るい方なので、そんな冬夢の姿をバッチリ見ることができるのだ。


あぁ……可愛い……小動物みたいで可愛い! 可愛すぎる!

流石に寝顔の可愛さには遥かに劣るけど、あんなに可愛い姿がまだ隠されていただなんて!


できる事ならそんな冬夢のレアな姿を撮って撮って撮りまくりたいのだが、今フラッシュを焚くと冬夢が驚いてどこかに逃げてしまう可能性が無きにしも非ずなので、そこはグッと堪える。



………………耐えるのよ私……。ここで本能の赴くままに行動してしまうと、今まで順調に進んでいた作戦が全て水の泡になっちゃうわ!




そうやって自分に言い聞かせる事で本能を必死に押さえつけながら、更に進む事数分。


一度も妖怪に遭遇する事もなく(最初からそういう予定だったので、当然と言えば当然なのだが)壁から床まで何もかもが真っ赤な部屋に行き着いた。



「…………」


この部屋の異質な雰囲気に呑み込まれたのだろうか、冬夢は呆然としている。


…………というか、呑み込まれて貰わないと困る。

この部屋に意識を向けさせる事で足止めさせておいて、油断している所に後ろから脅かす作戦だからだ。





もちろん、脅かすのは私じゃない。そしていつもここで働いているスタッフさんでもない。

実はこの日のこの時の為だけに、とある人達に脅かし役をお願いしてあるのだ。



…………そろそろ後ろからやって来る頃かしらね。


完全に固まっている冬夢の横顔を見ながら、そんな事を思っていると––––



「…………グァ…………ギギギ……」



––––タイミングよく背後から不気味な呻き声が聞こえてきた。



「!」


今までとは比べ物にならないスピードで後ろを振り返る冬夢。

私も冬夢に続いて後ろを振り返る。



「…………ヴ…………ググギ…………ガ…………」



するとそこにはいつの間にか、ボロボロの着物を着た顔の崩れた(片方の目玉が飛び出していたり、頭蓋骨が所々見えていたりする)男が立っていた。


私達とその男の距離は50cm といったところだろうか。

男の息づかいがこちらまではっきりと聞こえてくる。

部屋の方に意識を向けていた冬夢はともかく、あらかじめ後ろからやって来る事を知っていた私にも気配を感じさせないとは…………流石の一言に尽きるわね。




「……………………」


男を見た瞬間に叫んで抱きついてくるのではないかと予想していた私であったが、意外な事に冬夢はその場から一歩も動く事なく黙って男を凝視していた。


顔が異常なまでに真っ青なので、怖がっているのは確かなのだろうが、これでは「冬夢に抱きついて貰う」という目的を果たす事はできない。


「………………」


私はさり気なく男に目配せした。

これ以上やると、冬夢が気絶するかもしれないので本当はやりたくなかったのだが、仕方が無い。冬夢の硬直をとく為に軽く脅かして貰おう。



「グケケケ……ケケケケケケケケケ」


すると男は薄気味悪い笑い声をあげながら––––––––自分の頭を掴み、あろう事かそのまま頭を体から引きちぎってしまった。


「ケケケケケケケケケケケケ」


頭が体から離れても血が噴き出す事はなく、男の体は動き、頭は笑い声をあげ続けている。


「………………!」


目の前にいる男がグルであるとわかっていても、こんなえげつない光景を見せられては無反応ではいられない訳で…………私は思わず後ずさる。



ううう、ちょっと気持ち悪い………………で、でもまあ、ここまで脅かせば冬夢も怯えて私に抱き––––––––


「ぬぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」


––––––––つく事はなかった。

冬夢は物凄い叫び声をあげながら、走り去ってしまったのだ。



「……………………ねぇ……」


冬夢が完全に見えなくなってから(冬夢を相手に追いかけても追いつく訳がないので、冬夢が走り出した瞬間に諦めたのだ)私は後ろにいるジロッと男を睨みつける。

ちなみに頭はもう元の位置に戻っていたりする。


「あー……えーっと…………その……もしかしてやりすぎちゃいました……かね?」


「何が “もしかしてやりすぎちゃいました……かね” ですか! どう考えてもやりすぎですよ! ウインク三回は軽く脅かすサインだって決めていたでしょうが! もしかしてサイン、忘れちゃってたんですか?」


私は食ってかかるかのように男に詰め寄る。

あくまでこちらは頼んでいる側なので、こんな態度をとるのはいけない事なのだろうが、あと一歩の所で計画が失敗してしまったのだ。自分で言うのも何だが、気持ちが高ぶってしまうのも仕方ないというものである。



「…………いや……忘れた訳ではないんですけど……怯える冬夢君を見てると、目一杯怖がらせたい! という衝動に駆られまして…………つい……やっちゃいました」


「………………ついって…………はぁ……」


さっきまでの煮えたぎった怒りはどこへやら。男の言い訳を聞いた私は大きくため息をついた。


…………ああそうだ。肝心な事を忘れていた。

この人、あの和をもはるかに凌ぐ物凄い腹黒ドSなんだった……。

怖がっている人に全力で追い打ちをかけに行くのは当然の行動と言えるだろう。


腰が低く周りに気配りのできる表向きの性格にばかり目がいってしまい、裏の性格をすっかり失念していた。


「はぁ…………」



…………あぁ終わった。完全に終わった。

この人以外にも3人に脅かし役を頼んでいるのだが、3人ともとてもくせが強く、とてもじゃないが作戦をきちんと実行できそうにないのだ。だからここで作戦を確実に成功させる予定だったのだが…………。その目論見は見事に失敗してしまった。

一応、ここで失敗してしまった時に備えて3人に(3人ともこの赤い部屋の先に待機させてある)どうすればいいかを伝えている。しかし何もできずに冬夢がそのまま走り去って行くのがオチだろう。



「あの〜…………榎本さん?」


「…………何ですか?」


「えっとですね––––––––」


「と、その前に!」


私は男の言葉を遮るように右掌を男の眼前に突き出す。


「その顔を何とかして下さい! 冬夢みたいに怖くはないですけど、見ていて気分がいいものじゃありませんから!」


「確かにそうですね。失礼しました」


そう言って苦笑しつつ、男はその場でプロのダンサーのように華麗にターンを決める。


「これでよろしいでしょうか?」


すると先ほどまでの醜い顔はどこへやら。長めの黒髪(前髪も伸ばしており、片方の目が隠れてしまっている)に色白の肌が印象的な––––––––いかにも草食系男子といった風な顔が首の上にのっていた。


「はい。ありがとうございます。それでで、何ですか? ––––––––月読さん」




そう。私が脅かし役を依頼したのは月読さんを初めとする神様たちだったのだ。



吾妻 深千流(以下深)「深千流と」


吾妻 弥千流(以下弥)「弥千流の」


深・弥「かみるーらじお!」


深「こんにちは。7月になりいよいよ夏らしくなってきましたね。リスナーの皆様はいかがおすごしでしょうか? 鳳凰学園高校3年、放送部部長をやらせて頂いている吾妻 深千流です」


弥「はろ~! みんな〜! 熱中症にならないようにこまめに水分を取るようにね〜! 鳳凰学園高校2年の吾妻 弥千流だよ~。ちなみに、わたしは放送部副部長やらせて貰ってま~す」


深「“かみるーらじお!”とはもっと読者様に“神√”を知って頂きたい! という思いから生まれたラジオです」


弥「ゲストを呼んでフリートークをしたり、リスナーの皆からのお便りを読んだり、質問に答えたりしちゃうよ~」


深「それにしても暑いですね。弥千流」


弥「だね〜。梅雨ってジメジメしてて嫌いだけど、暑いのはも〜っと嫌いだよ〜!」


深「お昼は迂闊に外を歩けませんよね。少し歩いただけで汗が滲んできます」


弥「あ〜…………もうこの部屋から出たくないよ〜」


深「ですね〜。冷房の効いた部屋に長居するのは体に良くないとはわかっているんですけど、ついつい入り浸ってしまいますよね」


弥「7月の上旬でこんな暑さなんて……8月がどうなるか考えただけで暑くなってくるよ〜」


深「冒頭でもお話しましたが、リスナーの皆様もお体に気をつけて下さいね」


弥「熱中症にならないようにね〜」


深「さて“第42話 いくら入念に作戦をたてたところで失敗する時は失敗する” いかがでしたでしょうか?」


弥「今回はちょっと短めだね〜。話もあまり進んでないし」


深「予定では残り1〜2話で終わるそうですよ」


弥「果たしてその話の投稿がいつになる事やら…………このままの調子で投稿され続けるなら終わるのは秋頃になっちゃうよ〜」


深「流石にそれはないでしょう。というか、そうでないと困ります。美都ちゃんを初めとするメインキャラクターは記憶に残りやすいですが、私達みたいなサブキャラクターは記憶に残りにくい存在。早くGW篇を完結して貰い、私達が出る話を投稿してもらわないと……」


弥「そりゃあわたし達は確かに記憶に残りにくい立ち位置だけどさ〜、こうやってかみるーらじお! のメインパーソナリティーをやらせて貰っている訳だし、十分みんなの記憶に残ってると思うよ〜。本当にヤバイのはのんのんだよ〜。のんのんには悪いけど」


深「いいえ! それではダメなのです! そこで満足していてはダメなのです!」


弥「え〜っと……何で?」


深「それはもちろん、神√ 本編の主人公の座を奪うという野望があるからです」


弥「…………」


深「…………」


弥「…………」


深「…………」


弥「え〜っと…………“神√”を読んでいて疑問に思った事や、このキャラとこんなトークをして欲しいという要望があったら、感想やメッセージ、活動報告のコメント欄から教えてね〜。あと、誤字脱字や矛盾点などがあったら、報告してくれると嬉しいな〜。他にも感想や評価、レビューとかも待ってるよ〜」


深「まさかのスルーですか! しかも勝手に終わらせにかかってますし!」


弥「今回はかみるーらじお! の方も短くなっちゃったけどじゃあね〜」


深「えっ? ちょっと? 本当にしめちゃうの? 弥千流? やちる〜!」


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