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第40話 たまには昔を思い出してみませんか?

「うわ~。懐かしいな~」


俺は大きく『デ・モート・アルテニア』と書かれた入場門を見上げて呟く。

本日GW最終日。俺は美都と一緒に『デ・モート・アルテニア(デモア)』という隣県にあるテーマパークに来ていた。

やはりGW最終日とあって、人だかりが結構できている。

並んでばっかりでアトラクションにほとんど乗れませんでした––––なんて事にならなきゃいいんだが。



「ホント懐かしいわね~。冬夢もあれからここに来てない感じ?」


横で入場門の写真を撮っていた美都が顔を上げ、俺に尋ねてくる。


「ああ。だってさ、男だけだと行きづらいだろ? ここ」


そうなのだ。このデモア、男だけでは物凄く行きづらい。

なぜなら、このテーマパークのコンセプトは『アトラクションと一緒にコスプレも楽しもう』とちょっと変わったものだからである。

普通のテーマパークならまだしも、男だけでコスプレするのは流石の俺でも勘弁。


ちなみに、俺はここがオープンした年––––ちょうど10年前に美都とお互いの母親の4人で来た事があったりする。

あの日に起きたとある出来事は10年経った今でもはっきりと覚えている。美都は覚えているだろうか?

俺としては覚えていて欲しいんだけれども––––



「そうよね~。冬夢みたいな女の子を誘えないヘタレには縁のない場所よね~」



––––多分覚えてないんだろうなぁ、と意地悪い笑みを浮かべながら図星な事を言ってくる美都を見てそう思う俺であった。







「で、何のコスプレをする? 俺は美都に合わせるけど」


「うーん……いっぱいありすぎてどれにしようか悩むわね」


入場口でチケットを買い、中に入った俺達は早速コスプレルームへと向かった。

ここで着替えてアトラクションを楽しむ訳なのだが……とにかくコスプレ服の量が半端じゃなく多い。

アニメやマンガのキャラの服はもちろんの事、執事服やナース服などのその職業特有の服。果てにはスクール水着やふんどしなどといったネタっぽいものまであったりする。

パーク内のいたるところに着替えるスペースはある為、適当に目に止まったものに着替えて、気に入らなかったら別のに着替えればいい話なのだが、やはり一番最初なので慎重に選びたい。


それは美都も同じようで、パソコンのモニター(そこでコスプレ服を探し、頼む事ができる。10年前にはこんな物はなかった)と真剣ににらめっこしている。


そしてそのままにらめっこを続ける事、約5分。



「うん! これにするわ!」


ようやく気に入った物を見つけたらしく、満足そうに頷きながらモニターを操作し、何かのコスプレ服を頼む美都。



そして美都が頼んでから1分も経たない内に––––


「お待たせしました」


––––スタッフと思われる若い男の人2人(2人共どこかの軍服を着ている)がコスプレ服を2つの紙袋に入れて持って来てくれた。


「ありがとうございます」


持って来てくれたスタッフに一言お礼を言い、それぞれの名前が書いてある紙袋を受け取る俺と美都。


一体何のコスプレ服が入っているんだろうか?


着替え室(どこにでもある服屋の試着室がそのまま少し大きくなったような感じの部屋だ)に行けばすぐにわかる事なのだが、気になった俺はその場で紙袋の中を覗こうとしたのだが––––


「私より着替えるのが遅かったら罰としてお昼奢って貰うからね〜」


––––着替え室に入りながら放たれたその美都の一言によって、中断を余儀なくされた。



「ちょ、ちょっと待てよ!」


慌てて着替え室に駆け込む俺。


こういうテーマパークで売っている食べ物は全体的に量が少ない上に高いのだ。

普通のハンバーグが1000円だったり紙コップに入れられたコ○コーラが200円だったりと。


いくらガン○ラでの収入があるとはいえ、ここで昼ご飯を奢るのは結構な痛手だ。

ここは大人げないかもしれないが、全力で着替えさせて貰うとしよう。


そう決めた俺は急いで紙袋からコスプレ服と説明書を取り出す。


コスプレ服の中には着るのが難しいものもあるので、どんな服にも着方が書かれた説明書がついてくるのだ。


「––––––––!!」


紙袋の中に入っていたのは執事服であった。


執事服を見て一瞬、何かが頭を過ぎったような気がしないでもないが、今はそんな事をいちいち詮索している暇はない。


俺は物凄い勢いで服を脱ぎ捨てるのであった。







「ふぅ……どうやら間に合ったようだな」


3分ぐらいで執事服に着替え、外に出て周りを見渡し、美都がどこにもいない事を確認する。


よし。これで奢りの件はなくなったな。



安堵のため息をつきつつ、俺は近くにあったベンチに座る。


いやはや……美都のチョイスが着替えやすい執事服で助かった。

これが執事服じゃなくて侍のコスプレとか、着替えるのに時間のかかるコスプレだったら確実に美都に負けていたからな。




……それにしても……執事服を見た時、何かが頭を過ぎった気がしたんだが……。一体何だったんだろうか? う〜ん、思い出せそうで思い出せない。




ベンチに座ったまま、思い出せないもどかしさと戦う事約10分。


どう頑張っても思い出せず、半分諦め掛けていた俺の元に––––


「ああ〜、やっぱり私の方が遅かったかぁ……冬夢の服、執事服にするんじゃなかった」


––––中世の皇族が着るような真っ白なドレスに身を包み、髪を下ろしストレートにした頭に小さな金色の王冠を乗せた王女様と化した美都が歩いて来た。



「––––––––!!」


そうだ! 思い出した! 思い出したぞ!

10年前も俺は執事服を、そして美都は王女様の格好をしたんだ!


確か……あの時も一番最初にこのコスプレをしたはずだ。

お袋に半強制的に着せられたんだよな、うん。

でも俺は「ウルト○マンのやつの方がいい〜」とか言って、その後すぐに執事服からウル○ラマン(シリーズ名までははっきり思い出せないが)に出てくる、怪獣と戦う軍のユニフォームに着替えたんだったな。



美都は俺とは違って今みたいに喜んでいた……気がする。

というのも、あの時俺はちゃんと美都の事を見ていないのだ。いや、見れなかったと言った方が正しいかもしれない。


俺と美都は幼稚園時代からの幼馴染であるが、実はこの時はまだ幼馴染と呼べるような間柄ではなかったのだ。


親同士がとっても仲良しだった事もあり、幼稚園の頃から俺は美都と仲良くしようと積極的に話しかけたりしていたのだが、美都は俺を完全––––とまではいかないが、無視していた。

幼稚園時代はそんな美都のつれない態度を気にする事なく、話しかけたりしていた。

しかし年齢が上がっていくにつれて、だんだんと話しかけたりする事がバカらしくなり、小学生になる頃はほとんど話しかける事はなくなった。



そんな俺達の仲を見兼ねた美都の母親が少しでも俺達の仲が深まってくれればと思い、10年前デモアに連れて行ってくれたらしい。

デモアに行く前にお袋にそう聞かされた。

その為、10年前にデモアに来た時には美都と仲良くなろうと幼いながらに頑張った記憶がある。


例えば––––



「ちょっと! 執事がそんな所でだらっとしてないの!」


ぼーっとしている所に唐突に手を引っ張られ、俺は大きく姿勢を崩してしまう。


「ちょ、わかった! わかったから! 手を引っ張るのはやめてくれ! 危ないから!」


「こらっ! 言葉使いがなってないわよ!」


俺の言葉を無視してさらにグイグイ引っ張ってくる美都。

完全に気分は王女様のようだ。


「わかりました! わかりましたから! 手を引っ張るのをやめて頂けないでしょうか!」


「はぁ……ホントダメな執事を持つと苦労するわ……」


そう言って美都はようやく手を離してくれた。


「えーっと……申し訳ございません」


何だか腑に落ちないがとりあえず謝る事にする。

なんせ今の俺は美都に……美都お嬢様に仕える執事なのだ。

お嬢様の言う事は絶対である。


「ん。よろしい」


満足に頷き、何を思ったのか首にかけていたカメラで俺を撮り始めた。


「え? あの……お嬢様? 何をしていらっしゃるのですか?」


「見てわからないの? 写真を撮ってるのよ」


「ええ……それはわかります。どうして俺の……いや、私の写真をお撮りになられるのかな? と思いまして」


「デモアに来た記念よ、記念」


「記念……ですか。でしたら、はい」


俺は両手を美都へ差し出す。


「ん? どうしたの?」


「いえ、お嬢様のお写真を私が撮らさせて頂こうと思いまして。ここへ来た記念ですから」


「はぁ……これだから冬夢は……」


しかし美都は俺にカメラを渡す事はなく、やれやれと首を降りながらただため息をつくだけであった。

俺としては執事らしい気回しだと思ったのだが……何が悪かったんだろうか?


「お嬢様、私、何か失態を犯してしまいましたでしょうか?」


「……はぁ……冬夢って本当に女心って物が理解できないのね……」


「お嬢様、何か仰いましたか?」


「いいえ、何も言ってないわ。そんな事より冬夢。失態を犯した罰として今日の昼ご飯を奢りなさいよ!」


「えっ? えぇぇぇぇぇぇえっ⁈」


執事として必要不可欠であろう「慎み」も忘れて、俺は思わず大声をあげた。


ひ、昼ご飯を奢る? ……俺が? ……美都に?


俺のしでかした(らしい)失態の内容も教えてくれないのに? それ以前に美都よりも着替えるの早かったのに?


「それは流石に––––」


わがまますぎます、と美都に抗議しようと試みた俺であったが、それは無残にも失敗に終わった。


なぜなら––––


「奢ってくれるわよね?」


––––有無を言わさない物凄い迫力で俺に微笑みかけて(もちろん目は全く笑っていない)いるからだ。


「……は、はい…」


俺に残されていた選択肢は「頷く」ただそれだけであった。

はぁ……完全に自分がわるいんだろうけど……昼ご飯を奢るのはキツすぎる。

家帰ったらAmaz○nで適当に2〜3体、ガン○ラを注文しなくちゃならないな。

……乗り気じゃない時に作るガ○プラ程、辛いものはないが仕方ない。自業自得だ。




「うん! 素直な執事は嫌いじゃないわ。ん〜、よしよし」


そう言って、美都は楽しそうに俺の頭を撫でてきた。

俺の頭に手を伸ばす為に、一生懸命に背伸びしているところがとても可愛い。

こんな美都の姿を見ていると、昼ご飯を奢る事がまんざらでもなくなってきたりする。いやはや、美少女恐るべし。



「って、こんな所で油を売っている場合じゃなかったわね。ねえ冬夢、まずどのアトラクションから行く?


美都はなでなでをやめ、どこからともなくパンフレットを取り出し、全体マップのページを広げる。


「う〜ん、そうだな〜」


そう言いながら、俺はざっと全部のアトラクションの説明を流し読みする。

流石に10年前に乗ったアトラクションを全部完璧に覚えている訳ではないが「あ、これ、乗った気がする」というものはいくつかあった。もちろん、その中には俺と美都の関係が大きく変わるきっかけとなったあの“観覧車”も入っている。


10年前の事を覚えていないであろう美都が納得してくれるかどうかは微妙だが、最後は10年前と同じ観覧車で終わりたい。



「最初はこれなんかどうだ? ここからも近いし」


「遠くの方がいいんじゃない? 皆、この辺のアトラクションから乗るから混むわよ?」


「じゃあこれにするか。ここから一番遠いやつ」


「そうね。そうしましょ」




いくら俺が話しかけても無視だった10年前とは打って変わって、ちゃんと返事をしてくれる美都を横目で見ながらそう思うのであった。

吾妻 深千流(以下深)「深千流と」


吾妻 弥千流(以下弥)「弥千流の」


深・弥「かみるーらじお!」


深「こんにちは。鳳凰学園高校3年、放送部部長をやらせて頂いている吾妻 深千流です」


弥「はろ~! 鳳凰学園高校2年の吾妻 弥千流だよ~。ちなみに、わたしは放送部副部長やらせて貰ってま~す」


深「“かみるーらじお!”とはもっと読者様に“神√”を知って頂きたい! という思いから生まれたラジオです」


弥「ゲストを呼んでフリートークをしたり、リスナーの皆からのお便りを読んだり、質問に答えたりしちゃうよ~」


深「さて“第40話 たまには昔を思い出してみませんか?”いかがでしたでしょうか?」


弥「GW最終日は一ノ瀬と美都の過去の話なんだね〜。あ、だいぶ前に美都をここに呼んだ時に話していた内容と違うじゃないか! っていうツッコミはなしの方向でよろしくね~」


深「後、念の為に言っておきますが、私達は美都ちゃんとは長い付き合いですけど、一ノ瀬君と知り合ったのは高校ですよ」


弥「わたし達、美都と家は近かったけど色々あって高校まで違う学校だったもんね〜」


深「そうなんです。だから昔の美都ちゃんと一ノ瀬君の関係を全然知らないんですよね」


弥「まあ、わたしはちゃんと知ってるんだけどね〜。でも美都が一ノ瀬を無視していた理由を聞いた時には驚いたなぁ〜。実はね––––」


深「こっ、こらっ! ネタバレはいけませんよ!」


弥「ウソウソ。冗談だよ〜。そんな馬鹿な事、する訳ないじゃん」


深「もう……」


弥「ごめんごめん」


深「……では気を取り直して、質問コーナーにいきましょうか」


弥「ペンネーム“水面出”さんと“冬城 一夜”さんから同じ質問がきてるね〜。え〜っと……『ヒロイン全員のスリーサイズを教えて下さい』だってさ〜。“水面出”さんはわたしとお姉ちゃんのスリーサイズも教えて欲しいなんて言ってたけど……」


深「それは問答無用で却下ですね」


弥「だね〜。別に教えてもいいけど〜……聞いた人はあらゆる手を使って社会的に抹殺しちゃうからね〜。それでも知りたいんだったらまた言ってね〜」


深「それにしても……美都ちゃん達のスリーサイズですか? 私、知りませんよ?」


弥「ふっふっふ〜。お姉ちゃん、これを見たまえ」


深「! これは……」


弥「そう! わたしが極秘裏に集めた皆のスリーサイズの載っ表だよ〜。いつか必ずこの手の質問がくる事を予想して“かみるーらじお!”が始まる前に、あらかじめまとめておいたんだ〜」


深「なるほど……流石、私の妹! 抜かりがないですね!」


弥「じゃあ早速発表しちゃうよ〜。まずは美都からね〜。上か––––ぐへっ!」


深「ちょ、弥千流! どうし––––きゃっ!」


弥「…………」


深「…………」


善家 響(以下響)「いや〜、危ねー危ねー。間一髪だったぜ」


中溝 悠里(以下悠)「ホント、ギリギリでしたね。でも間に合って良かったです」


響「だな。オレと悠里のスリーサイズを……いや、みんなのスリーサイズを無断で公表するのは流石に、な」


悠「ええ。ボクらにもプライバシー権はちゃんとありますからね」


響「はぁ……なぁ悠里……」


悠「どうしました、先輩?」


響「いや、正しい事をやってるはずなのに……どうしてこんなにも虚しいのかな、と思ってよ……」


悠「……先輩……ボク達は……まだ発展途上にあるんですよ。そのうち麗奈先輩以上のぼんきゅっぼーんに……」


響「やめろ……虚しさが増すだけだ……」


悠「……ですね。とっとと終わらせて帰りましょう……」


響「えーっと……どうやって終わらせればいいんだ?」


悠「多分このスイッチを押せば終わらせる事ができると思いますけど……その前にこれを読んだ方がいいんじゃないですか? 『終了前に必ず読む事!』って書いてありますし」


響「よしわかった。えーっと……『“神√”を読んでいて疑問に思った事や、このキャラとこんなトークをして欲しいという要望があれば、感想やメッセージ、活動報告のコメント欄からお知らせ下さい。また、誤字脱字や矛盾点などがありましたら、ご報告よろしくお願いします。他にも感想や評価、レビューなどもお待ちしております』。……これでいいか?」


悠「いいんじゃないですか、多分」


響「じゃあこのスイッチを押し––––なあ、悠里」


悠「どうしました?」


響「これも読んだ方がいいんじゃねーのか? ほら『第40話のかみるーらじお! の一番最後に絶対に、何があっても読む事』って書いてるし……」


悠「そう……ですね。じゃあ次はボクが読みますね。えーっと……『デルジャイルが新連載を始めましたので、そちらもお読み下されば嬉しいです。タイトルは“ぎるど はじめました。”です』。これでいいですか?」


響「ああ、もうオッケーだろ。早くしねーと、2人が目を覚ましちまう」


悠「ですね。眠っている間に外で待ってる天照ちゃんの元に運んで、質問の記憶を消して貰わないといけませんしね」


響「いや〜、まさか天照様が協力してくれるとは思わなかったな」


悠「『昔の私のスリーサイズなら良いが、今のはダメじゃ! 絶対にダメじゃ!』って半泣きになってましたからね––––」



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