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第33話 時間とはとても残酷なものである


「んじゃいってくるぜ!」


「響、忘れ物がないかちゃんと確認したか?」


「たりめーだろ! オレを子供扱いすんじゃー」


「お~い響。私の部屋に響の携帯が忘れてあったぞ」


「あっ! 悪りぃ和。さっき和の部屋に寄った時にうっかり置き忘れてしまったみてーだ」


「あれ? 忘れ物してないとか言っていた人がいたような気がしたんだけどな……誰だったか? 響、誰か知らないか?」


「うっせー! このバカ!」


「うわっ⁈ そのバックを全力で振り回すだなんて危ないだろ! 下手したら俺死ぬぞ!」


「そうだ。そんなに全力で振り回したら私にも当たるではないか。やみくもに振り回すのではなく、冬夢をしっかりと狙うのだ!」


「な、和⁈」


「あの~皆さん? 私の事を忘れてないですか?」


「「「あ」」」


麗奈の呟きに反応して、ピタリと動きを止める俺達。


そうだ。騒いでいてすっかり麗奈の存在を忘れてしまっていた。


「もう…皆さんひどいですよ!」


そう言ってほおをぷくーっと膨らませる麗奈はとてもかわいくて、ついイタズラ心が芽生えてしまうのだが……残念ながら今回はそんな事をしている場合じゃない。


天照とのカラオケ大会の翌日の今日から2泊3日、和と響が麗奈家に泊まるのだ。もちろん美都と悠里も泊まる。

まあ、2泊3日と言っても今日はもう夜の9時を過ぎているので、実質2泊2日である。


ちなみに俺は行かない。と言うか行けない。


5人に口を揃えて「来ないで」と言われたのだ。

確かに女子5人の集まりーいわゆる女子会に俺みたいな男が加わるのは明らか場違いだし、そもそもこの俺があの豪邸に泊まって言い訳がない。

泊まっていいのは恋人だけである。……いや、恋人でも相手の家に泊まる事は滅多にしないか。俺達、高校生だし。

後、何か緊急会議がどうたらこうたら言っていた気がする。

何の事かはさっぱりわからないが。



それにしても、俺1人が家に取り残されるのはなかなかどうして寂しい。

去年のGWは…と言うかいつも家で1人でも何も感じなかったのにな。

改めて和と響の存在の大きさ、そしてそんな2人に俺がいかに依存しているかを思い知らされた。



「では、行って来る」


「冬夢の分まで楽しんできてやるよー」


「それでは和さんと響さんをお借りしますね」


「おう。楽しんでこい」


俺はそう言って出て行く3人を見送り、玄関のドアの鍵を閉める。


「さてと……とりあえず部屋に戻るか」


そしてそのまま自分の部屋へと向かうのであった。





それにしても、明日 明後日と何をしようか?


俺はベッドに倒れ込みながら、そんな事をふと考える。

GWの内の2日間を家から一歩も出ずに過ごしましたーなんて事は流石に嫌だ。


「適当に誰か誘ってボーリングにでも行くかな」


とりあえず明日の予定だけでも作ろうと、俺は桐生他2人にメールを送る。



数分後、全員からOKのメールの返信がきた。

暇そうにしてる奴を選んで送ったのが上手くいったようだ。


美都達のような美少女グループとばかり絡んでいるラノベみたいな、男子友達のいない変に偏ったリア充主人公とは違うのだ。

まあ、あの主人公達は女の子達からこれでもか! というぐらいモテてモテまくっているから、男子の友達が少なくったっていいんだろうけど。

う、羨ましくないからな! これっぽっちも羨ましくないからな!

…って何を言ってるんだ俺は。男の嫉妬ほど醜いものはないぞ。


そんな事よりも、ボーリングだよボーリング。

自分で提案しておいてなんだが、あれ、結構お金かかるんだよな。

この前行った時は……2ゲームで1000円を軽く超えていたはずだ。


この前、現実逃避の為に作ったガン○ラがいい値段で売れたから、何だかんだでお金に余裕があるにはあるんだが……。

適当に1体作って、更に余裕を作っておくとするか。

お金があって悪い事は無い訳だし。


「確か……だいぶ前に買った∀ガ○ダムがあったはずだが……どこになおしたかな?」


俺は∀○ンダムを探す為にベットから起き上がるのだった。






「え〜っと……このパーツがここで……この部分は……ああ、これを使うのか…」


∀ガン○ムを押入れの奥底から見つけ出し、作り始めてはや1時間。

だんだん全体像が浮かび上がってきた頃ー


「♪〜♫〜♪」


ーN○VELSのミッシングリンクが携帯に電話がかかってきた事を知らせる。


「え〜っと…この着信音は誰だったかな?」


ガン○ラを作る手を一旦止め、誰からの電話なのかを確認する俺。


「ああ……そうだそうだ。昌繁(まさしげ)さんだ」


本名を高階(たかしな) 昌繁(まさしげ)と言い、俺の母さんの弟ーーつまり、俺から見たら叔父さんである。

黒縁メガネをかけていて体の線も細く、いかにも理系と言った感じの人である。

実際、昌繁さんの勤め先は大手製薬会社だったはずだ。そこで新薬開発をしてるらしい。



「それにしても、急にどうしたんだ?」


かれこれ何年も顔を合わせてないし、メールや電話も同じく数年していない。

一体何の用なんだろうか?


そう疑問に思いながら、俺は電話に出る。



「もしもし」


『あー、もしもし。冬夢君? 久しぶりだね。最後に会ったのっていつだったかな?』


「何年前かは覚えて無いですけど……とある親戚の葬式が最後だった気が…」


『ああ。確かあれは僕の娘が小2の頃の話だから……7年前の話だね。冬夢君は小4かな?』


「7年前でしたら……はい。俺は小4ですね」


『そうか~。もう冬夢君も高2だもんね。時間が経つのは本当にあっという間だよ。昔は娘も………って、ゴメンゴメン。話が逸れちゃった。実は冬夢君に頼みたい事があってね』


「いいですけど。その頼みたい事とは何でしょうか?」


『えーっとね……明日から3日間、娘を冬夢君に預かって欲しいんだ』






「昌繁さんからの頼み事、あっさり了解したけど……色々と見られたらマズイものがあるよな…」


いつも通りの時間に起床した俺は、毎朝欠かさず飲み続けている豆乳を冷蔵庫から取り出しながら呟く。


いくら親公認(親父の方は微妙だが)とはいえ、美少女2人と同居しているだなんて知られたら……。

相手が男だったら「羨ましすぎるぞ〜お前〜」みたいな感じに笑い話で済むかもしれないが、相手は女の子なのだ。

全力で証拠を消さなければ!


ちなみに従妹を預かる理由は昌繁さんと奥さんが2人で温泉旅行に行くからだ。何でも結婚記念日が明後日なんだとか。

いつもはどこかの高級ホテルなどでディナーとかだったらしいが、今年は昌繁さんが奮発したらしい。

いやはや…大変お仲がよろしいようで何よりです。



って、そんな事より……よくよく考えて見たら証拠隠滅ってめちゃくちゃ大変じゃないか?

2人の部屋ー後、3階にある響のぬいぐるみ部屋もかーに鍵をかけておくのはもちろん。他にも2人の使っている歯ブラシや食器。更にはシャンプーやボディーソープまでも片付けなければならない。


……こりゃあ時間がかかりそうだ。


俺は味噌汁を作る為に鍋に水を入れようとしていた手を止める。

先に証拠隠滅作業をした方がいいな。

「浮気の証拠を妻にばれないように必死になって隠す単身赴任中の夫」みたいな感じで、少し気が引けるが…従妹に蔑まれた目で見られるのだけはゴメンだ。



そんなこんなで俺は証拠隠滅作業を開始するのであった。






「ふぅ…ようやく終わった…」


いや~それにしても大変だった。

あんなに和達の物が多いとは…。それに2人のメイド服をうっかり見つけてしまい、抱きしめたくなる衝動を抑えるのにも相当な時間を要してしまった。

昌繁さんがやって来る8時には何とか間に合わせる事ができたが……8時まで後10分もない。

今日の朝ご飯はお茶漬けで確定だな。


俺は久々のお茶漬けを食べながら、高階家の到着を待つのであった。






8時を5分ばかし過ぎた頃、ピンポンとチャイムの音が高階家の到着を知らせる。


「はいは〜い。今、行きますよ〜」


俺は洗っていた茶碗を置き、玄関へと向かう。


玄関のドアを開けると、そこには当たり前だが昌繁さんと昌繁さんの奥さんとー従妹の穂乃佳(ほのか)がいた。

小2だった7年前の面影は微塵もなく、穂乃佳は相当な美少女になっていた。

茶色っぽい髪の毛をちょうどおへその辺りまで伸ばしており、普通の人では着こなせないであろう服も着こなしている。

もし「モデルをやってます」と言われても「ああ確かに」と納得してしまうような格好だ。


ただ1つ気になるのが、目つきがあまり良くない事。

常に周りを威嚇しているような感じだ。


この目つきさえなかったら完璧だよな。



「じゃあ冬夢君。しばらくの間、穂乃佳を頼むね。ほら穂乃佳、冬夢君にあいさつして」


そう言って、昌繁さんは穂乃佳にあいさつをするように促すも、穂乃佳はー


「……」


それを完全無視して勝手に家の中に入って行ってしまった。

おじゃましますの一言もなしに。


「……はぁ…」


そんな穂乃佳の姿を見ていた昌繁さんは、小さくため息を吐いた。


「ゴメンね。冬夢君。昔と全然変わっててびっくりしたでしょ」


「ええ。まあ」


確かに物凄く変わってしまった。

見た目も性格も。


昔の穂乃佳は俺の事を「お兄ちゃん」と呼んで慕ってくれていたはずなんだがな……。

いやはや…時間って怖い。


「最近は僕とも口を利いてくれなくなっちゃってさ…本当に困ったもんだよ」


「ま、まあ昌繁さんは旅行を楽しんで来て下さいよ。せっかくの結婚記念日の旅行なんですから。こっちはこっちでなんとかしますから、大丈夫です。安心して下さい」


「ありがとう冬夢君。お言葉に甘えて楽しんで来る事にするよ。じゃあ冬夢君、うちの娘を頼むね」


そう言って、昌繁さんと昌繁さんの奥さんは車に乗り込み、出発して行った。


「…何だか大変そうな予感がするが……頑張らないとな」


俺は玄関のドアを閉め、リビングへと向かった。





残念ながら俺の予感は的中してしまったようだ。

俺がリビングに入ると穂乃佳がいた。

それはいい。だが……ソファーに座りながら俺の方をギロッと睨んできているのだ。

「何でここにいるの? 気持ち悪い」とでも言いたげだ。


怖い。とっても怖いです、はい。

中3女子にビビる高2男子。

情けない事この上ないが、怖いものは怖いのだ。仕方が無い。



「あ~…穂乃佳?」


「何?」


物凄く嫌そうな顔をする穂乃佳。

心がポキンと折れそうになるのを何とか堪えながら、俺は言葉を続ける。



「えーっと…朝ご飯食べた?」


「はぁ? 何でアンタにそんな事を聞かれなくちゃいけない訳?」


……ヤバイ。俺、死にそう。

心を完膚無きまでに砕かれて死にそう。

『従妹に冷たくあしらわれ、高2の男子ショック死』なんて記事が明日の朝刊のどこかに載っていてもおかしくない。

俺のMPは既にレッドゾーンに突入している。



「その……もしご飯を食べてなかったら、俺が作ってあげようか…と思って。それに一応、ここ俺の家だし……」


「いらない。食べたから。それにアンタが作った料理なんて食べたくない」


「そ、そうか……」


ああ神様……なぜ従妹をこんなにも残酷な性格にしてしまわれたのですか。

神様の実態を知っている俺でも思わず神に祈ってしまう程の冷たさ。


本当に……昌繁さんの気持ちがよくわかる。

身内に冷たく接せられるのがこんなに辛いだなんて。


「後……穂乃佳に使って貰う部屋は3階にある。そこだけ扉が開いてるから、3階に行ったらすぐにわかるはず」


「……」


荷物を持ち、無言でソファーから立ち上がる穂乃佳。

どうやら早速部屋に向かうようだ。


「何だったらその荷物、持つけど…」


そう言って、荷物に手を伸ばす俺。

ちょっとでも兄貴らしい所を見せてやろうと思ってやった事なのだが…。


「はあ? 触らないでくんない? ガチでキモイから」


と一蹴されてしまった。


手を伸ばした状態で固まる俺。

そんな俺には目もくれず、さっさと穂乃佳は2階に上がってしまった。


俺はリビングに1人ポツンと取り残された形になった。


「ははは……穂乃佳にキモイって言われた……俺、キモイんだってさ。はは……ははははは…あれ、

おかしいな? 目から汗が……止まらないや……はは…ははは…」


MPを削りに削られまくった俺が、しばらく立ち直れなかったのは言うまでもない。










吾妻 深千流(以下深)「深千流と」


吾妻 弥千流(以下弥)「弥千流の」


深・弥「かみるーらじお!」


深「こんにちは。鳳凰学園高校3年、放送部部長をやらせて頂いている吾妻 深千流です」


弥「はろ~! 鳳凰学園高校2年の吾妻 弥千流だよ~。ちなみに、わたしは放送部副部長やらせて貰ってま~す」


深「“かみるーらじお!”とはもっと読者様に“神√”を知って頂きたい! という思いから生まれたラジオです」


弥「ゲストを呼んでフリートークをしたり、リスナーの皆からのお便りを読んだり、質問に答えたりしちゃうよ~。後、第32話のかみるーらじお! も更新してるから、良かったら見てね〜」


深「さて“第33話 時間とはとても残酷なものである”いかがでしたでしょうか?」


弥「いや〜、一ノ瀬をあそこまで叩きのめすとは…穂乃佳ちゃん、グッジョブ!」


深「弥千流は……一ノ瀬さんの事が嫌いなんですか?」


弥「いや、普通だよ? ただ、一ノ瀬のそんな姿、滅多に見れないじゃん。レアだなぁ〜と思って」


深「なるほど…?」


弥「そう言えばよく考えたら、なごみんとひびきんが帰ってきた時、穂乃佳ちゃん、まだ一ノ瀬家にいるんだよね? 高階さんが早く迎えにきたり、なごみん達が遅く帰ってきたりしたら話は別だけど」


深「どうやらそうみたいですね。一ノ瀬さんはその事にまだ気付いてないみたいですけど」


弥「これは一波乱起きそうな予感だね〜。一ノ瀬がひびきん達と同居してると穂乃佳ちゃんが知ったら、どうなるんだろ〜? とっても楽しみだね〜」


深「ところで、リスナーの皆様。さり気なく『キャラ人気投票+アンケート』をやっているのをご存知でしょうか?」


弥「下の方にリンクがあるから、よかったらやってみてね〜。絶対に回答しないといけないのは『どのキャラが1番好きか?』っていう1問だけだから、答えやすいとは思うよ〜」


深「もしお暇でしたら、答えて頂けると嬉しいです。作者も『投票してくれたらテンション上がって、執筆速度が上がるかも』と言っていました」


弥「あくまでも『かも』なんだね〜。上がると断言できない所が作者らしいね〜」


深「さて、お知らせがもう1つあります。活動報告でもお知らせしましたが……」


弥「わたし達がブログをする事になったんだよ〜」


深「日替わりで神√のキャラーと言っても、鳳凰学園の生徒が中心ですがーが今日あった出来事や、今の自分の気持ちなどを更新していきます。話との繋がりはありませんが…神√の番外編のような感じで受け取って頂けると幸いです」


弥「まだ完成してないけど…今日中には完成させる予定だよ〜」


深「完成した時はまた下の方にリンクを載せますので、よければ見て下さいね」


弥「作者のユーザーページにも載せておくからよろしくね〜。じゃあ今日は短いけどこの辺でしめちゃおう! ゴメンねリスナーの皆…質問は次回から再開するからね〜」


深「“神√”を読んでいて疑問に思った事や、このキャラとこんなトークをして欲しいという要望があれば、感想やメッセージ、活動報告のコメント欄からお知らせ下さい。また、誤字脱字や矛盾点などがありましたら、ご報告よろしくお願いします。他にも感想や評価、レビューなどもお待ちしております」


弥「皆のお便り待ってるよ~」

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