表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/64

番外編その2 男とオカマと神と男と

これでコラボ回は終了です。

次回から本編に戻ります。

「一聖の通っている大和学園って、そんなに広いのか?」


「ああ、メッチャ広いぜ。入学したばかりの頃は俺も良く迷ったもんだ」


「私も転入当日は迷いました。あそこは迷宮と言っても、過言ではありません」


「迷宮みたいとかすげーな。オレも1回行ってみてー」


「…鳳凰高校も十分広いと思っていたが…やはり、上には上があるものなのだな」


美味しい食べ物の力は恐ろしいもので、ラーメンを食べ始めた頃にはお互いタメ口+下の名前で呼び合うようになっていた。銀髪美人さんは水沢みたいに、誰に対しても丁寧語だったが。



黒髪ロングが似合うイケメンの名前は三神(みかみ) 一聖(いっせい)

銀髪美人さんは三神(みかみ) 聖佳(せいか)と言って、一聖とは従姉の関係にあるらしい。

信号の所で一聖は、聖佳さんの事をフィチナって呼んでいたが…あれはあだ名か何かなんだろうか?

…まあ、俺が気にする事ではないかな。



ちなみに、今俺達はテーブル席に座っている。

既に昼のピークは過ぎていたらしく、待つ事なく座る事ができた。

俺・和・善家が同じ席に座り、テーブルを挟み一聖と聖佳さんが同じ席に座る。

もちろん、ミス アビゲイルには座らせないつもりだ。



「いぢる為には、まず相手の事を良く知らないといけませんね」


「確かにそうだな。的確にダメージを与えて、始めていぢりが成功したと言える。ダメージを与える為には、相手の弱い点を知らなくてはならない」


「でもよー、いぢりすぎてダメージを与え過ぎるのもダメなんだよな?」


「そうです。引き際を誤っては、後々の人間関係に大きな支障を来してしまいます。いぢりはタイミングが命なのです」


「そうだ。まさにその通りだ」


「なるほどなー。勉強になるぜ」


…いつの間にか女子がいぢりトークに花を咲かせていた。

おい和。うんうんと満足気に頷くな。

そして善家。どこから取り出したかは知らないが、ノートにメモを取るんじゃない。


完全に取り残された一聖が困ったように苦笑いしてるじゃないか。まあ、ぼけっとしていた俺も悪いんだけどさ。


「…なあ一聖」


俺は顔を、前にいる一聖の方に近付け、隣の女子達に聞こえないように小声で話しかける。



「ん?」


「聖佳さんって、お前の事を良くいぢるのか?」


俺がそう聞くと、一聖は小さくため息を吐き


「ああ、まあな」


と小声で返してくる。


「いぢられた時って、一聖はどういう対策をとってるんだ?」


あの2人を見てたら、俺がいぢりのターゲットにされるのは時間の問題のような気がするからな。

何かしらの対策をとらないと、気付いたらドMになってました…何て事になりかねない。

特に和だ。今までに何人のノーマルな男子生徒達が、和の冷めた目によって虐げられる快感に目覚めてしまった事か…。


「いや、特に何もしてないぜ?」


「え?」


「だってー」


そう言って、聖佳さんから受けたいぢりの内容を語り始める一聖。


「ーって感じだからよ。別にいぢられる事に不快感を感じてない訳。反応に困る時はよくあるけどな」


「なるほど…。確かにそれだったら、別に対策なんてとる必要は無いな」


やはり聖佳さんは、いぢりを熱く語るだけの事はあり、その辺はきちんと弁えているようだ。

転入当日にいきなり1人の男子生徒をMに目覚めさせた、どっかの誰かさんとは違って。

一聖曰く、いぢりがちょっとえっちぃのが困るそうだが…良いじゃないか! 銀髪美人さんのえっちぃいぢりなんて、素晴らしいじゃないか!

おっさんならセクハラになる行為も、銀髪美人さんがすると、えっちぃいぢりに変化するんだな…おおっ! ファンタスティック!

…まあ、俺はMじゃないけれども。至って普通ですけれども。

それでも素晴らしいと俺は思う!


…って、何を言っているんだ俺は。これじゃただの変態じゃないか。

それに話が完全に脱線してしまってるし。俺の悪い癖だな。気をつけないと。



そんなこんなで、皆がラーメンを食べ終わり、ミス アビゲイルも来ないし、割り勘で払おうか…なんて話し合っていた時。


いきなり善家が聖佳さんに、とんでもない一言を放った。


「なあ、聖佳さん。アンタ…人間じゃねーだろ? オーラが人間とは明らかに違う」


「「え⁈」」


驚いて声をあげたのは、俺と一聖だけで、和もーそして、そんな事を言われた当の本人である聖佳さんも、全く驚いた様では無かった。


「ちょっ⁈ いくら聖佳さんの美しさが人間離れしてるからって、その言い方はないだろ」


慌てて善家にそう言う俺。


和が不機嫌そうに俺の事を睨んでるような気がしないでもないが、そんな事を気にしている場合では無い。


「は? 一ノ瀬、お前何を言ってんだよ? 聖佳さんは多分、オレ達と同じ神だろ」


「そうです。響さんの仰っている通りですよ、冬夢さん。私は神ですよ」


「本当にすいません。善家のヤツが急に変な事をーって、えぇぇぇぇぇぇっ‼‼‼」


俺の驚きの声が、ラーメン屋全体に響き渡った。






「全く…冬夢が大声を出すから…店を出ざるを得なくなったでは無いか」


「悪い…」


俺が店内で大声を出してしまった為、客や店員の注目を嫌と言うほど集めてしまい、居づらくなったので外に出てきたのだ。

ちなみに今は、比較的人通りの少ない小さな広場にいる。


え? ミス アビゲイル? ああ…もう、どうでもいいや。

最悪善家にでも電話するだろう。

ケータイ持ってるし。

それに、はぐれても善家の家に帰れば良いだけだしな。鍵を持ってるのは善家だけだけど。


「それにしても…聖佳さんも、この2人と同じ神だったんだな」


「ええ。ちなみに本名は三神 聖佳じゃでは無く、フィチナ・ライスルです」


なるほど。フィチナって言うのは、あだ名なんかじゃ無くて本名だったんだな。


「って事はー」


「当然、フィチナは従姉では無いさ」


神様と同居…一聖は俺とまるっきり同じ立場にあるんだな。一聖はつい最近同居し始めたらしいが。

違う点と言ったら…その同居している神様の有能か無能か、と言った所か。

まあ、和が実際に無能か? と聞かれたら、答えはNOだが…いかんせん相手が悪すぎる。

残念だったな、なごー


「痛たたたたたたっ!」


和が俺の横腹を思いっきり抓ってきた。


「…冬夢よ。今、物凄く失礼な事を考えてはいなかったか?」


「イ、イヤ? ソンナコトハナイデスヨ?」


な、何で…何で、和は俺の考えている事がわかったんだ?

やっぱり…考えてる事が顔に出てるのか? だとしたら、気を付けないと…。心の内が読まれたい放題だ。ポーカーフェース。ポーカーフェース。


「それより…フィチナさんも下級神なのか?」


俺は和からの追求を断ち切る為に、フィチナさんに話をふる。


「カキュウシン? 何ですか? それは?」


しかし、フィチナさんは不思議そうに首を傾げるばかり。


「いや、階級だよ。階級。…まさか…本当に知らないのか? 神様なのに?」


「すいません。知らないです。でも、一応階級のようなものならありますよ」


「どう言う階級なんだ?」


「第六神位です」


ダイロクシンイ…ダイロクはそのまま第六。で、シンイは…神位って所か? いや、神威ってのもあり得るな。


「ダイロクシンイって、こう書くのか?」


俺は携帯のメール機能を使い、「第六神位」と書かれた画面をフィチナさんに見せる。


「ええ、そうです」


頷くフィチナさん。


どうやら第六神位で合っているようだ。

まあ、どうやって書くかがわかった所で、「どのぐらい偉い位なのか」や「一体どんな事をしているのか」などの肝心な内容は、さっぱりわからないが。

多分、物凄く偉い身分なんだろうな。…なんと無くだけど。



第六神位って知ってるか? と和と善家に目で聞いてみるも、2人共肩をすくめるばかり。


うーん…和達が知らないとなると…もしかして、上層部しか知らない特殊な階級とかか?


1人悩んでいても仕方無いので、俺は直接本人に聞く事にした。


「その第六神位ってのは…どのぐらいの立場にあるんだ?」


「そうですね…はっきり言い切る事はできませんが、そこそこ高いと思います。あまり言いたく無いのですが、炎神なんて二つ名まで付いちゃってますし」


「「炎神⁈」」


俺と一聖の声がハモる。


…と言うか…。


「一聖、お前…フィチナさんと同居してるんだろ? それなのに、何でフィチナさんの二つ名の事を知らなかったんだ?」


「仕方ないだろ。同居し始めて日が浅いんだからよ。そりゃあ、知らない事だって沢山あるさ」


「確かにそうだな…」


俺も和と同居し始めた時は、和の事を何も知らなかったからな。

ああ…それにしても…平和だった、あの時は。

家の消失に怯える事も無く、どうやって、和のあの唐揚げジャンキーっぷりを治そうか、頭を抱える事も無く…。

…本当…良くやったよ、良く乗り切ったよ、俺。

特別ボーナスが出てもおかしく無いレベルの、頑張りっぷりだ。


「…一聖。1つだけアドバイスだ。神様との同居は、慣れるまで物凄く大変なんだよ…正直言ってしまうと、ろくな事が起きない」


神様3人組が何かの話題で盛り上がってるのを確認し、俺は一聖に同居の先輩としてアドバイスをする。


「ゲッ、そうなのか? …いや待て…ああ、確かにろくな事にならないな…」


虚ろな目でそう言う一聖。

どうやら一聖も、既に色々と苦労してるみたいだな…お疲れ。


「…フィチナのせいで…俺の…俺のエロ本が…灰と化したんだ…」


「え? 何だって? 声が小さ過ぎて何を言ってるのか、さっぱり聞き取れなー」


「あーっ♡ ようやく見つけたわよ! 冬夢ちゃん、響ちゃん、和ちゃん。ちょっとゲーム好きな友達と無口な友達に会って、色々話してたら遅くなっちゃったの。ゴメンねー♡」


俺の声を遮る程の大声を出しながら、ミス アビゲイルが近付いてきた。しかも物凄いスピードで。


「きゃーっ♡ よく見たら、さっきのイケメン君もいるじゃなーい♡ これは…冬夢ちゃん・アタシ・イケメン君の3人であーんな事やこーんな事をしちゃえって言う、神様のお告げなのねーっ♡」


更にスピードを上げて、こっちに接近してくるミス アビゲイル。


色々とツッコミたい所はあるが…。

ミス アビゲイル…あんたも神様だろ! 神様が神様のお告げを受けてどうするよ⁈

そして、恐ろしい宣言を高らかにするな! 横にいる一聖が完全にフリーズしてしまってるだろ!




「…最悪だな…」


「部長…ホント何やってんだよ…」


そして…和に善家。全てを諦めた様に、俺に向かって手を合わせるな! 同居人なら少しは助けろよ! このままじゃ、俺の貞操が…貞操がっ!


「さあ、冬夢ちゃんにイケメン君! アタシと一緒に新世界へ飛び立ちましょ〜♡」


そう言って、俺と一聖の方に飛びかかってくるミス アビゲイル。


ああ…グッバイ、俺の貞操。短い付き合いだったが、ありがとうな…。


などと自分の貞操を半分諦め掛けた、まさにその時


「一聖様に危害を加えようとする者はー」


フィチナさんが、ミス アビゲイルの前に立ちふさがり、両手をミス アビゲイルの方にかざす。


「ー私が許しません!」


刹那、フィチナさんの両手から火の玉が出現し、ミス アビゲイルに容赦無く襲いかかった。


「きゃぁぁぁぁぁあっ! 服がっ! アタシのお気に入りの服がっ!」


火だるまになってしまうのかと思いきや、なぜか服だけが盛大に燃えていく。


「不思議な現象に見えるかもしれないが、フィチナの火は特殊らしくてな。フィチナが燃やしたいと思った物だけ燃える。だから、あんな事になってんだ」


呆気にとられている俺達に、説明してくれる一聖。


「つー事は、部長自身は大丈夫って事か?」


「ああ、あの人自身は大丈夫だ」


「………チッ」


あの…善家さん…あなた今、舌打ちしませんでした?

あれでも、一応あなたの上司なんですよ? 部長なんですよ?

一聖も若干引いてますよ?

ここまで部下に慕われてない部長ってのも、珍しいんじゃないか?

でも同情はしない。完全にミス アビゲイルの自業自得だからな。


「あああ…」


パンツだけになり、がっくりと膝をつくミス アビゲイル。


流石にフィチナさんも、パンツまで燃やす事はしなかったようだ。


「フフッ…いい気味だ」


和がミス アビゲイルを見て、楽しそうにほくそ笑んでいるが…見なかった事にしよう。


しばらく、そのままうなだれていたミス アビゲイルだったが…。


「あ! こう言う事がある時の為に、予備用の服を持ってきたんだったわ。アタシとした事がすっかり忘れてた」


そう言って、勢い良く立ち上がった。


…あんたは日常茶飯事で、服を燃やされるのか?

それに予備用の服なんて、どこにあるんだ? いや…まさかな…。


「♪〜♪〜♪」


ミス アビゲイルはのんきに鼻歌なんて歌いながら…パンツに手を突っ込んだ。


「「「!」」」


その光景を見て、完全にフリーズする神様3人組。



「…ジャジャーン♡」


ミス アビゲイルはしばらくゴソゴソした後、手をパンツから引き抜いた。

その手には…。


「何で同じ服があるんだよ⁈」


一聖のツッコミからわかるように、燃やされた服と全く同じ服が握られていた。しかも、綺麗にたたまれてるし。


ミス アビゲイル…あんたのパンツは四次元ポケットなんですか?


呆然としている俺達をよそに、1人着替え始めるミス アビゲイル。


「あら、冬夢ちゃんにイケメン君。そんなにアタシの事、見つめちゃって♡ もしかして、欲情しちゃったのかしら? もう、エッチね♡」


その瞬間、俺の頭の中でプチンと何かが切れる音がした。


「…フィチナさん。もう一回ミス アビゲイルの服を燃やしてくれ。パンツも含めてな」


「わかりました」


「一聖。全裸の男がいると警察に通報してくれ。今すぐに」


「任せろ!」


「和、善家、フィチナさん。見苦しい光景が露わになるかもしれないが…耐えてくれ」


「ああ、わかった」


「一思いにやっちまってくれ」


「…いきます」


「ちょっと⁈ やめて! 服が! 服が!」


「もしもし。あの…露出狂がいるんです…。はいー」


「ホントにやめてえぇぇぇぇえ‼‼」


露出狂オカマの叫びが、人通りの少ない広場に響き渡った。





これは完全な余談だが、この後ミス アビゲイル(もちろん全裸だ)は急いでやって来た警察に連行された。

不思議な事に、俺達が一聖とフィチナさんと別れた後、善家の家に戻って来ると、ドアの前で土下座していたのだが。

多分、神様の力でも使って逃げて来たのだろう。

俺達はミス アビゲイルに「もう二度と部長らしからぬ行為はしない」と宣言させ、ラーメン代を払わせ(一聖達の分は予め、俺が出しておいた)、ようやく許してやった。



もう一つ余談。

俺は一聖とメアドを交換しあった。


一聖とは「神様と同居している」という、同じ立場にある訳で…。話があうからな。それにあいつ、面白いし。


フィチナさんのメアドをゲットできなかったのは、少し残念だが…まあ、良しとしよう。


また暇があったら、あの2人とまた遊ぶかな。

まだまだお互い、知らない事もいっぱいあるしな。


色々と疲れたが、得た物が大きかったーそんな昼だった。








誤字脱字や矛盾点などありましたら、ご報告よろしくお願いします。


また、感想や評価、レビューなどもお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ