表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/40

10.花の病気


※※※※※※※※※※※注意※※※※※※※※※※※※

ある病気の症状が出てきます。

ご不快な方は、閲覧にはご注意ください。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「デニス隊長!」

「おう、ニクスか。お疲れ様。すごい匂いだろう」


 二人は花の満開現象が発生した公爵邸にいる。

 デニスはマスクをし、目をしょぼしょぼさせていた。


「えぇ、私は《清浄》魔術で匂いを防いでいるのでマシですが、お辛そうですね」


「ああ。目が猛烈に痒い。後は鼻水が嫌ってほど出てくる。これは呪いか?」


 ニクスはデニスのマスクを取り、その場で簡単に診察する。

 王国魔術師団、氷魔術師班班長だが、治癒師でもある。


「う〜ん。なんとも言えませんが、なんらかの原因で炎症を起こしての症状ですね。《治癒》か《回復》かけてみますか?」


「頼む。集中できん」


 ニクスが《治癒》を施し、デニスはすっきりした表情を取り戻す。


「助かった。さすがニクスだ。

で、この怪現象と深夜の発光は関係あると、思うか?ハックション!ゔ、また鼻水が……」


「一旦、《治癒》で治っても、すぐに症状が戻る。

この怪現象と関係ありそうですね」


「呪いなら、ねちっこくていやらしい。

鼻水と涙と痒みがこれほど集中力を欠くとは。情けない」


「あちらでは咳をされてますね。皇城の医術師に相談してはいかがでしょう。彼らは病気が得意です」


 医術師は《治癒》や《回復》はできないが、《探知》で体内の異常を発見し、医学知識と技術で治療する。


「そうだな。ここではなんの手がかりもなかった。

『起きたらこうなっていた』ばかりだ。

庭師達は絶望していたが。どこから手をつけたらいいか、話し合ってる」


 作業服を着た庭師達は5、6人が集まり、額を寄せ相談していた。


「おい!撤収するぞ!担当の初動捜査は終わった」


 部下に呼びかけるのも鼻声だと締まりが悪い。

 隊ごとに、王城内の騎士団本部へ帰還する。ニクスも着いてきていた。

 団長にまずは口頭で報告する。どの隊も似た捜査状況だった。

 執務室で報告書をまとめていると、ニクスが話しかける。


「デニス隊長。この花が満開になる怪現象、あなたのお宅が最初だったんですよね」


「ああ、一日早かったが、朝起きたら、ってのは一緒だ。全く気づけなかった。ただ夜中の発光現象は確認されていない」


「昨日はお茶会だったとか。例の魔法薬局の親子を招待されていかがでしたか?」


「良識を持った親子だったぞ。

なんでもラディ殿の亡き師匠が、『魔術師はどんな方に依頼されるか分からない。礼儀正しくあれ』というお方だったらしく、本人はもちろん娘も礼儀正しかった」


「そうですか……」


「しかも義理堅くてな……」


 ロバートの一件の念書などについて話す。


「ああ。患者もある意味顧客です。トラブルを起こしたくなかったんでしょう。

で、師匠の名前は?」


「聞いていない」


「肝心なところを。機会があったら、聞いておいてください」


「まだ怪しんでいるのか?」


「この花の件で、もっと濃くなりました。

あなたのお宅の花が満開になった日に、ラディ親子は現れた。果たして偶然でしょうかねえ」


「親はともかく、娘は途中から辛そうだったぞ。対面していたので、よくわかった。きっと香りが混ざり強すぎたためだろう。妻もそう言っていた。

大切にしている娘を苦しめるか?」


「それは何とも。俗に言う『やっちった』のかもしれない。まだあの親子への接近は禁止ですか」


「私は話してさらに疑いは晴れた。禁止だ。

私を納得させる何かを持ってこい」


「それって捜査はしていいってことですか?」


「周辺捜査だ。親子への接触は変わらず禁止だ。

子どもには特にだ。健気で愛らしかった。

父子家庭をさらに悲しませ苦しめたくはない。

魔術師団には私が依頼をしておこう。

ニクスから上に報告しておけよ」


「わかりました。早めに医術師に診てもらってください。すごい鼻声です。では失礼します」


「了解した」


 ニクスはラディの周辺、特に師匠が気になった。だが存命ではない。

 ハードルは高いが、やってみる価値はある。


 騎士団内はくしゃみがあちこちから聞こえ、すれ違う者には、マスクをし目が赤い者も多い。


「これだけ性格が悪い症状、立派な呪いだ」


 (つぶや)くと、魔術師団本部に向かった。


〜〜*〜〜


 魔法薬局では午後に入り、呼吸器系や眼、肌の苦痛を訴える人が増えてきた。


 症状について、「いつから」と問診すると、「今朝、公爵邸に配達した」「貴族街での仕事だった」などと話す。


 ピンときたラディは目の症状の患者を《探知》すると、眼球にびっしり花粉の粒子が付いていた。

 どういう機序で起きるか不明だが、花粉が原因だろう。

 目は洗い薬と抗炎症目薬、呼吸器系もうがいを勧め、抗炎症飲み薬を処方する。

 肌は自宅でシャワーを浴びた後、抗炎症薬の塗り薬を出す。


 最後の患者を送り出した後、ラディもミーナもぐったりするほど疲れていた。

 それでもやることがある。

 患者が持ち込んだ花粉の除去だ。

 ラディは《浄化》を徹底的に行った。特に調合室だ。

 ミーナには入浴を指示する。


「患者さんに付いてきた花粉が、ミーナにもかなり付いてる。途中からマスクと三角巾をしたが、よく洗ってきなさい。髪も丁寧にね」


「はい、お父さん」


「アルバスも一緒に洗ってやるといい。花粉まみれだ。床に転がってただろう?」


 そこでアルバスが、「クシュッ!」とくしゃみをする。

 二人は顔を見合わせた後、ミーナはすぐにアルバスを連れお風呂に向かった。


〜〜*〜〜


 その夜も精霊王はご機嫌に登場した。

 やり切った感に満ちあふれている。


「どうだ。我の力を思い知ったか。こんなことは指先一つで出来るのだ」


「……………………………ふうぅ」


 ラディはジト目で見つめ続けた後、大きなため息を吐く。


「…………どうした?いつもと態度が違うではないか」


「さすが精霊王だと思ってな。

お前のおかげで疫病が発生した。一時的なものだが、大量の花粉が引き起こした。

ウチにも午後から患者が押し寄せた。その人達が持ち込んだ花粉で、ミーナも同じ症状になるところだったんだ」


 多少大袈裟(おおげさ)に言ってみる。ただコイツの頭がすくい上げたのはミーナだけだった。


「我が花嫁が?!具合はどうなのだ?!」


「安心しろ。俺が早めに気づいて処置し、ごく軽くで済んだ。もう眠っている。ぐっすりだ」


「よかった……」


「ちっともよくはねえんだよ。精霊王は祟り神か?

そう呼ばれたくなければ、今すぐ、適度な、いいか、土砂降りでも嵐でもない、普通の、ごく普通の雨を降らせろ。

花粉を空気中から洗い流すんだ。魔術より、水が一番早い」


「……どうして我がせねばならぬ」


「ミーナがまた疫病で苦しんでもいいのか?

空気中に花粉が浮かんでる間は、苦しむ可能性は消えない。

目は赤くなって涙が止まらず、猛烈にかゆい。

鼻水は湧き水のように流れ続け、時にはくしゃみが続く。そんな状態にしたいのか?」


「そんな、そんな酷い状態に、我が花嫁がなってしまうのか?!今すぐやろう」


 《転移》しようとする精霊王を、ラディは止める。


「ちょっと待て。お前ならここでも出来るだろう。

俺の目の前でやれ。しとしと雨でいいんだ。光も無しだ」

「…………わかった」


 ミーナに予想される症状がよほどショックだったらしい。大人しく雨を降らせてくれた。

 いつもこうなら、ありがたいんだが。


「助かった。ミーナが苦しまずに済む」


「我が花嫁のためなら何でもする」


「だったら大人しくしていてほしいもんだ」


「は?大人しくしてるではないか?遊び心がうずいて、ちと楽しん……」


 精霊王には珍しく、『しまった!』という顔をする。


「ほう、遊び心で楽しんだだと?!生命を弄ぶんじゃねえ!

“龍殺し”のランドラドラ・ラディスラウス、真剣にお相手させてもらおうじゃねえか?

命は取らねえよ。お前さん達は取れねえもんなあ」


 その夜、怒髪天となったラディは、精霊王の周辺の魔素を《凝固》させ、首から下をピッチリ覆うと、原始的に“物理”で攻撃した。

 ヘロヘロになった精霊王に「参った」と言わせ、とっとと退散させた。


ご清覧、ありがとうございました。

ファンタジー×コメディを目指しつつ、ミーナとラディパパの成長と精霊王様の斜め上溺愛を描けたら、と思います。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ