あるひのかいぎ
ご感想たくさんありがとうございました……(;_;)
こんなに待っていてくださる方がおられたとは……本当に長らくすみません。゜(´∩ω∩`)゜。
頑張って更新します!!
……しかしシリアスっぽい会議回です申し訳ござらん……。
ザイオンの使節団が城に到着したのは、ジェンシー殿下が到着した18日後だった。
やっとか、と息をついたのは僕だけでなく殿下も同じだったらしい。「この国は本当に複雑すぎる。あ、別に悪い意味じゃないよー」と文句を言っていた。
そして、今日ようやく会談の席が設けられたわけだ。
自らを大使の立場だと名乗ったジェンシー殿下に、公使、外交官3名に書記官、こちらは国王陛下、宰相、書記官、王太子であるジェラルド様、そして僕だ。
城ですれ違う度、なにか言いたげな微笑を浮かべつつ僕を見つめてくるジェンシー殿下に気持ちの悪さを抱えながら、僕は席に着いた。
「さて、重ね重ね遠いところをわざわざ申し訳無い。ジェンシー殿下、ザイオンの使節団の方々」
「いえいえ。こちらこそお招きありがとうございます」
つり気味な焦げ茶の瞳を細めて、手を組んだジェンシー殿下が軽く頭を下げる。
決してこちらは招いていない。ザイオン側が会談の席を設けるようにと強引に迫ってきただけだ。……とは口に出来ないけど。
そもそもザイオンとトルヴァンは友好国であるが同盟国ではない。大陸の東にあるザイオンと大陸の南側にあるトルヴァンは距離も離れていれば文化もまるっきり違うし、正直今までそう関わりの多い国とは言えない。
あの面倒の塊のようなフェリル・マーデリックの一件うんぬんが無ければ何をしに来たんだ、と首を傾げたくなるくらいだ。
そもそも、数ヶ月前にやってきたこの王太子の目的は一体なんだったのか。飛龍での密入国、下手をすれば侵略とも取れる行為だが、理由を尋ねたトルヴァン側にザイオンの返答は「シュウ・ジェンシーは方向感覚に難が有り、隣国のオーリアに向かう途中に迷った」との事だった。
なんとも釈然としない言い訳だが一人でやってきた王太子を侵略とも言えず、そもそも軍事国家である大国ザイオン相手に強く出れずにしぶしぶ無かったことにしたのだ。
……まあ先日の一件を見るに、方向感覚に難があるのは間違いは無いのだろうけれど。
「単刀直入に言わせていただく。我々はあなた方トルヴァン王国と同盟を結びたい」
「……同盟を?」
にこり、と笑みを深くして言った王太子にトルヴァン側がざわついた。
片手で軽く制して口を開いた国王陛下の深い翠の瞳がゆっくりと細められる。
「あ、もちろん、オレの嫁探しも含めて、ですが。丁度良いでしょう? ザイオンはこの国の貴族のご令嬢を花嫁に迎え二国は同盟国と相成る。トルヴァンは古来から縁の深い国以外で同盟国をなかなか作らないでしょう? 我々としては以前よりあなた方とは仲良くしたいと思っていたのですよ」
「こんな小国にあなた方のような大国と釣り合う価値があるとは思えませんな」
全くその通りだ。逆に言えば別にトルヴァンとしてもザイオンを必要とする理由がない。
国王陛下の言葉にキラリと音が鳴るほどに目を開いた王太子は歌うように続けた。
「ええ、小国! だからこそです。このトルヴァンは不可侵の神秘の国。ろくな軍事力を持たず、大国の庇護になく、しかし一度も侵略を許していない。森は豊かで農作物は豊富な上、質がいい。取れる鉱石や宝石には不思議な力が宿り、川を流れる水はこの世のものでないほどに澄んでいる。そんな地を欲しない国は無いのに、何故か平和を保ったままでいる。過去の内乱は抜きにして、国境付近の小競り合いや同盟国との戦争への出兵以外の戦争がここ何百年もそもそも起きていない。本当に稀有な国です。噂によると精霊の加護を受けている、とか。にわかには信じ難い話ですが、この国を見ればそれが事実であると認めざるを得ない」
パンっと手を叩いた殿下は一度言葉を切ると、目を伏せた。まるで演劇でも見ているかのようだ。
「……しかし、だからこそ我々から見ればあまりに脆弱だ。国を民を守る戦争を経験したことなが無いだなんて普通はありえない。他国の侵略という驚異に晒されたことの無いまっさらな赤子のような国では無いでしょうか?……あ、悪気はありません。客観的に見て、という話です」
「ジェンシー殿下。概ね貴方様のおっしゃる通りです。あなた方のような大国から見ればこの国は防国性の乏しい、経験不足な国だと言わざるを得ません。しかしそれを補って余りある加護があります。この国は自然と上手く付き合いここまで発展しそして守ってきました。多くを求めず領地を広げない代わりに戦争による自然破壊を避けてきたのです。それにトルヴァンの騎士団は自衛戦争の経験が無くとも優秀です」
そう言ったのはジェラルド様だった。確かにジェンシー殿下の言うことは間違っていない。しかしトルヴァンにはトルヴァンのやり方がある。平和主義を貫き成長するのは容易ではないが、この国はそれを実現出来た特別な国なのだ。
「その不思議な加護を過信しすぎると危険だと我々は言いたいのです」
ザイオンの公使が低い声で唸るように呟いた言葉に、またもやざわめきが起こる。不遜とも言われかねない言葉に宰相が立ち上がりかけ、そして国王陛下に諌められた。
「失礼、悪気はありませんよ。本当に、我々はあなた方と仲良くしたいのです、心から」
「構わない。けれど言葉の真意を尋ねても?」
「ドレイク陛下、オレは数ヶ月前、たまたまこの国に迷い込んだ。たまたまです、本当に。しかしたまたま迷い込むことができたのです」
「だから、それが一体……」
「今までこの国に入ることは容易ではなかったはず。招かれない限りは……ましてや一人で辿り着くなどそんなことは有り得なかったのです。なにか不思議な力に邪魔をされて……。現に使節団も城に辿り着くまで大変な日数を要しました。我々からするとこの国は何故だか複雑に感じるのです」
だからこそオレも二度も迷ってしまったのですが……。そう言ったジェンシー殿下に一斉に視線が向いた。
多分それは加護云々の話ではない。と言いたげな顔をした外交官達は一瞬顔をげんなりさせた。
相当苦労されているようだ……。
「ごほん、……まあジェンシー殿下が迷われた真意の程は置いておいて」
「……どういう意味かなあー、ヒエン?」
「ま、まあ、つまり我々は、もしかしたらこの国の加護は小さくなりつつあるのでは? と危惧しています」
公使が言った言葉に僕達は衝撃を受けた。
確かにこの国は精霊の加護……という見えない力に驕っていたのかもしれない。
もし、それがいつの間にか無くなり、そしてそれに気がついたどこかの国が攻めてきたら……?
「我々と同盟を組んだ暁にはこの国への軍事力の提供をお約束いたしましょう。少し閉鎖的であるこの国は少々、他国から遅れているきらいもある。技術力の派遣も勿論お約束いたします。その代わりにこちらは花嫁と鉱石の優先的な輸出をお願いしたい」
一見、良い話にも思えるが、と、いうことはこの国にザイオンの大使館を置くということだ。武力と技術力の派遣……もしザイオンの軍を常駐
させなければ行けない状況になった場合、内側からの侵略を許すかもしれない。
ジェンシー殿下が言うようにこの国へ入ることは容易ではない、だがもう既に入られてしまったら、大国ザイオンの兵力に太刀打ちできるだろうか??……こんなことイレネー様が聞いたら騎士団を舐めるなと激怒しそうだけれど。
そしてそれではまるで、花嫁、というのは人質のようではないか?
「我々が信用ならないのはごもっとも。友好国とはいえ交流はそう多くありませんからね。しかし我々はことさら、懐に入れたものを大事にします。まして自分の妻の国を裏切るなど有り得ません。……あ、けれど勘違いしないでくださいね? だしに使うためにネリー嬢に求婚したわけではありません。本当に彼女に一目惚れして、彼女を伴侶にしたいと思ったからですよ? ご心配なさらなくとも、自分で口説きますし、もしダメな場合も同盟の盟約はきっちり守るとこの命に誓いましょう。我々は本心でこの国と仲良くしたいんです。……まあ、鉱石が欲しいって言うのが本音っていうのもありますけど」
「ネリーだと?」
「ジェンシー殿下! 余計なことまでベラベラ話さないでください」
「えーー、親族になるんだからあんまり隠し事とか良くないんじゃないかなー」
「まだ親族と決まった訳では無いでしょうが!!」
「……ネリー嬢??」
「だってあの鉱石で作る武器本当に凄いしさー」
「殿下!! 最後までビシッとしててくださいよ!!」
「あのなー、お硬すぎると信用して貰えないんだぞー?? だからヒエンはさー」
「お黙りなさい!!」
「ネリー・マーデリック嬢のことでしょうか?」
「なぜ、彼女の名が?? どういうことだい、ユーリ。何か知ってる??」
先程まで張り詰めきった空気がジェンシー殿下の台詞のせいであっという間に崩壊した。
両陣営ともざわめきまくっている中でこちらではネリー・マーデリックの名がひそひそと飛び交いまくっている。
ジェラルド様と国王陛下の怪訝そうな目がこちらを向いて僕は咄嗟に目を逸らした。
…………本当にあの、アホなフェリル・マーデリックのせいで……。
「あ、後で、お話いたします……」
…………胃が痛い。胃薬を貰いに行こう。
おふざけ要因でお父さんいれるか迷いました。入れればよかった。




