しろへのみち
「あのな、」
クロウが驚いた顔を引っ込めてまたつり上がった瞳を細くした。
ニッコリと微笑んだ彼は立ち上がり私の手を取ると片手をひらひらと振った。
「残念、時間切れだ」
「はい?」
「ーーーー」
気が付くと彼の後ろにはぴったりと人が張り付いていて黒いフードの中の瞳が真っ直ぐわたしに向いていた。
ぞわりと背が湧くようなこの感覚は恐らく、良いものでは無い。
その人物はわたしには分からない言葉で短くクロウを呼び、すぐに口を噤んだ。
きっとザイオンの言葉なのだろうけれど残念ながらわたしは簡単な挨拶程度しか分からない。
なんというか、男はかなり暗く顔がはっきりと分からない不思議な人物だ。
まあ怪しいとも言うが。
明るい雰囲気のクロウと並ぶとまるで陰と陽のような印象だった。
「ーーーーーーーーーー」
「ーーーー、」
「ーーーーーーーーーーーー」
「ーー」
二人はザイオンの言葉で会話をしてそれから同時にこちらに向いた。
「いやーごめんねフェリルちゃん。こいつはオレの護衛で、えーー、っとバンだ」
「初めましてフェリル様。バンです。先程は失礼を」
「は? 失礼?」
「ああー。いや、気にしないでー」
バンと呼ばれた男は頭を低く下げ胸に手を当てた。
黒いフードに包まれた身体が折りたたまれる様はなにかの儀式のようだ。
それより、失礼とはなんの事だろうか。
何もされた覚えは無いけれど、もしかしてクロウの適当すぎる言動のことだろうか、それに関しては特に何も思っていないけど。
首を傾げるわたしにクロウは笑みを深くして手を叩いた。
「ま、それより、迎えも来た事だしオレは城に向かうんだけど、君はどうする? この国割と物騒みたいだし送るよ」
「城?」
どこに送ればいい? と言ったクロウに被せるようにわたしは背伸びをして目を開いた。
城、城に用があるのか。
確かにクロウはザイオンから来た人間で、貴族か何かだ。
そう言えばそろそろ来るだろうザイオンの王太子に関係する人間なのかもしれない。そのついでにきっとネリーを迎えに来たのだ。
そうか、そういうことか!
ということはクロウに着いていけばわたしは城に行けるのだ。
勝手に行った訳では無いし、シーフーとはぐれてしまったから仕方なくそうしたのだ。
それに、城に行けばシーフーにもマーデリック家にも無事を伝えることができるだろうし、いいことしかない。
あわよくばイルに会えたら嬉しいが、イルはきっと大忙しだしカーチスも泣きべそをかきながら働いているのだろうから、まあそこまで我儘は言わない。
目をキラキラさせているだろうわたしにどう思ったのか、クロウは仰け反って口元をひくつかせ、うっと唸った。
「じゃあ、わたしも、城について行っていいか?!」
「あ、う、うん。ドウゾ?」
引き気味のクロウの後ろでバンが物凄い目付きをしてこちらを見ていたが、まあそんなことどうでもいいっちゃどうでもいいことだ。
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