「クズザンポーだってよ。」
最近ぜんぜん更新してないけど、てんさま三部1章終わったら書くよ。
「グッハァ……ひぐッ、ブッヒィ……。」
――記憶が無い。
気が付くと俺はまた別の路地裏に――いや、もう考えるのはやめよう。
だってこんなの、考えても仕方ないだろう……。
「ふっふぅ~! ザッツマイボ~イっ。ザッツマイボ~イっ。俺のむすこ~。俺のむすこ~。」
「おい、その変な歌やめろ。夜中だぞ。」
そして今俺が身を潜めている路地裏からは、表通りをバカそうなガキ二人が歩いているのが見えた。
一人は高校生、もう一人は小学生――だから、それがどうしたというんだ。
「えぇ~い!! もう破れかぶれじゃぁ~ッ!!」
プライドもキャリアもズタズタに引き裂かれた満身創痍の俺は、ただただ一心不乱に駆けだした。
何故なら俺は――
「――かぜだぁぁあああ!!!」
「――あで!!」
――盗った!!
そして俺から大事なものを取られたヤツは、盗られた後になって決まってこう言うのさ――
「待てこのドロボー!!」
案の定、後ろからバカ高校生の声が聞こえた。
そしてこの瞬間、俺は夢にまで見た勝利を確信する。
「待てこのドロボー!!」
――勝利の女神は、最後の最後で俺に微笑む。
「待てこのドロボー!!」
「何回言うんだアイツら頭悪いな!!」
やけにしつこく「待てこのドロボー!!」を連呼するクソガキ共だったが、これでようや――
***
「――ん……?」
気が付くと、俺は見知らぬ土地にいた。
「こ、ここは……どこだ……。」
ひと気のない見慣れない夜の街並み。
建物は俺の知ってる日本の建築じゃない。
中華っぽくもあり、インドっぽくもある……まぁ、なんか、多分アジアだとは思う。
「クズザンポー!」
「……え? ク、クズザン、ポー……?」
なんだコイツ……。
立ちすくむ俺の目の前を横切って行ったおじさんが何やら陽気に手を振って挨拶してきたが、発した言葉は日本語ではなかった。
そして思わずなんか返事しちゃったけど、たぶんここは日本じゃない……。
そして、夜――時間は、いま何時なんだろうか……。
「ここはもしや、タイか? ここがタイなのか? だがなぜ俺はタイにいるんだ……。」
何とも言えない建物の雰囲気や人の様子から、どうやらここがアジアのどこか――恐らくはタイなのはなんとなく解ったが……。
だが解らない――何故俺はこんな所にいるのだろうか。
確か、頭の悪そうなガキ共から財布をパクった所までは記憶があるが――
「あ……。まさか――アナタはもしかして……。」
「――ん?」
あまりに支離滅裂な現状に俺が頭を抱えていると、今度はガリノッポとチビデブの二人組の男が日本語で話しかけて来た。
「し、神矢さん!?」
「ん? どこかで会いました?」
どうやらこの二人組は俺の事を知ってるらしいのだが――え、誰だろう、普通に怖いんだけど。
まさか新手のオレオレ詐欺とかじゃないよね。
「クズザンポー!!……あーいや、こんばんは、お久しぶりです神矢さん!!」
しかしそれはどこか懐かしく、妙に聞き覚えのある声だった。
それはまるで、ほんの数カ月前に失踪した二人組の警察官の――
「まさか、佐藤と佐々木か? 失踪した警察官の。」
「あ……えっと、俺は田中で、こっちは伊藤ですね。」
「そうか、まぁどっちでも良いんだけど。」
そうか、やはり田中で伊藤で佐藤で佐々木だったか。
そうだと思ったんだ。
俺は知り合いに会えてちょっと安心した。
「というか神矢さん、どうしてこんなところに?」
「それが私にもよく解らないんだ、そもそもここはどこなんだ?」
「ここはブータンです。」
「ブータン!?!? ってどこだ……。」
「タナカ!! イトー!! クズザンポー!!」
「「クズザンポー!!」」
「あ、神矢さん紹介します。このおじさんは僕たちが一緒に暮らしてるチョデンさんです。」
「クズザンポー!!」
「「クズザンポー!!」」
「ク、クズザンポー……。」
一体、なにがどうなっている……。




