「繧ュ繝溘ワ遘∽ケ区ェサ荵倶クュだってよ。」

――平成二十八年、五月二十二日、日曜日。

もう間もなく日を跨ぐ頃、細かくは二十三時五十分くらいか。

まぁ割とアバウトだ。

「そういえばコンビニにはサンマ缶も売ってるのかい？」

「しらねー、缶詰のコーナー俺あんまり触らねーし。」

　明日の授業が午後からという事もあり夜更かしをしていた俺は、小腹の空いたタイミングでセラを連れて自分のバイト先でもあるコンビニへと買い物に出ていた。

と言うより俺は一人で行くつもりだったのだが、珍しくセラがくっ付いて来たという方が正しい。

　いつも自転車で通っているから、コンビニまでは歩くと意外に遠い。

歩きながら今日の深夜勤が誰だったか考えていると、嫌なやつの顔が浮かんだ。

「あ……。」

「……ん？」

――今日、前島じゃね……。

　前島（まえじま）　雫華（しずか）――俺の一個上の先輩だ。

前島は高校時代からずっとそこのコンビニで働いていることもあり、灰崎や俺を含む後輩勢に対してやけに態度がデカい。

その癖やたらと下らないミスはするし、無駄に客を激怒させるし、更にその都度パニックを起こして涙ながらに年下に縋りついて来る。

いやまぁ、こうして考えてみると可愛く思えるかもしれんが、実際これがかなりウザい。

そしてぶっちゃけ、俺もかなり苦手だ。

「前島？　誰なんだいそれ。」

「だから心を読むなっての。けど、そういやお前とは何故か一度もハチ合わせしてないな。」

「おほー、女か。うぇいうぇ～いっ。このモテ男～。」

「言ってろ、解ってるくせに。」

「けー、つまんなーい。」

　セラはダル絡みの末、勝手に喜んで勝手に不貞腐れた。

因みにサイフは鞄ごとセラに持たせている。

なにしろ最近ここいらも物騒で、確か二〜三日前にも「神速なんたら」とかいう変な名前の通り魔がこの近くで出たらしい。

そんなわけで、万が一ソイツに鞄ごと持っていかれでもしたら大変だが、それもまぁセラに持たせておけば一先ず安心だろう。

仮にセラが背後からナイフで切り付けられたとしても、この悪魔のことだ、サンマ缶さえ献上しておけば笑って許してくれるに違いない。

「まっ、このヤンディラデュマセランに任せておきなさいっ。けどその代わり、ちゃんと買ってよねー？」

「あ？　何がだ？」

　ちゃんと買って――なんだ、どういう意味だ？

セラの擦り寄るような怪しい笑みに、一瞬ドキッとした。

まさかコレ、魂の取引とかなのか？

「なに言ってんだいキミ。サンマ缶だよサンマ缶。もしコンビニに売ってたら買ってくれって言ったんだよっ。」

「あぁ、そっちか……。好きにしろ。だが一個な。」

「ぃやったーーー！！　ぃやっほーーーいっ！！　ウルトラソウッッッ！！」

「おい静かにしろ、近所迷惑だろ。」

「いやぁ、たまには人助けも良いもんだねー。あははー。」

　セラは魂の喜びを月に向かって吠え、ピョンピョンと兎のように飛び跳ねて喜んだ。

それにしても安い野郎だ。

そんでこんな真夜中の閑静な住宅街でこんだけ騒いでりゃ、むしろ通り魔の方から逃げてくだろうな。

端から見たら俺達も相当に迷惑な不審者だが、そう思うと一気に気が抜けた。

「ま、頼むぞ。ヤン。」

「あ！！　だからそのヤンってのはやめてって――わぎゃ！　……あれ。」

「おい、お前――」

　瞬間、セラに体当たりをした黒づくめの男は俺の財布が入ったカバンを抱えて、サバンナの猛獣が如き物凄いスピードであっと言う間に遠ざかって行った。

あまりにも唐突で呆気ない結末に、俺とセラは訳も分からず思考停止してしまったが――

「何やってんだこのバカ女！！」

「ちょっとなんで私を怒るのさ！！　悪いのはアイツだろ！？

　それにこんな美少女が突き飛ばされたってのにキミってやつは『セラにゃん怪我はない？』の一言さえも無いの！？　もっと悪魔を労われ！！　ムキーーー！！」

「はやく追いかけるぞアホ！！　待てこのドロボー！！」

「プッ！！『待てこのドロボー』だってー。こんな真夜中に恥ずかしいヤツだなぁキミは。」

「いいからてめぇも走りやがれ！！　このままじゃサンマ缶も買えねんだぞ良いのか！！」

「な――サンマ缶がッッッ！？！？」

必死になっていたとはいえ、だが俺はその時――

「――って……。」

――それが人生最大の過ちであることに気が付かなかった。

「……え、あれ？――セ……セラ、さん？」

――アイツまさか……。

俺が大声で叫んだ時には既に、セラの姿が無かった。

まるでテレポートでもしたかのように、あっと言う間にセラは忽然と姿を消してしまった。

どうやらアイツは「サンマ缶」＆「買えない」という２ワードに反射的に反応したらしい。

そして今宵、最悪なことに――

「んぎゃぁぁああああ！！！」

「まずい、あのバカ！！」

――死人が出る、そう思った。

「セラァァアアア！！　たかがサンマ缶ごときでぇぇえええ！！　人を殺すなぁぁあああ！！」

　住宅街にガンガン鳴り響く、通り魔の断末魔と、俺の絶叫。

さっきの悲鳴は恐らくこの先、右にある細い脇道の方から聞こえた。

頼む――頼むから、あの動画の子猫のような惨たらしい事にはなっていないでくれ――心からそう願った。

「セラァァアアア！！」

そして角を曲がって小道へと入った時。

「は……。」

――恐らく俺が目にしたものは、人類が到達していい領域ではなかった。

「な……んだ……。」

　　　　

　空間が、重苦しく歪（ひず）んでいる。

まるで割れた液晶画面のように、バグっている。

これは幻覚か、或いは夢か、そうでなければ俺の頭がおかしくなったのかもしれない。

「レ」

――そ0クウカンをニンシキしΞいるだけ§タマシイΦホウカイしΛしま#$そう=ナッタ。

　　　　

「菫コ繝弱せ繝吶ユ繝上が蜑堺ケ狗黄」

　　　　

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「ハヤト君。」

繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄

「……。」

「心配しなくても、殺してないよ。」

「お……おう……。そうか……。」

　ふと気が付くと、そこに居たのは、セラだけだった。

犯人の姿はなく、あとは街灯に照らされた地面に俺の鞄がポツンと落ちているだけだった。

「え、お前、犯人に何かした？」

「なにも。逃げてったから放っておいたよ。」

「そ、そうか……。」

てっきり無惨に四肢をもがれて生きたまま腸でも食われているんじゃないかと思ったが――

「失礼だなぁ。キミが思うような暴力性なんてものは秘めてないよ。それじゃただの動物じゃないか。」

「そういうもんか……。まぁ、それならそれで良いんだが。」

「じゃ、いこっかっ。」

――けど、なんだ……。

「さんまかっんっ、さんまかっんっ、おっいしっいぞぉ～。」

俺は、何か――

　　　　　

――繧ュ繝溘(キミハ)?遘√?讙サ縺ョ荳ュ(オリノナカ)――

　　　　　

何かなにかナニカ������繧ュ繝溘ワ遘∽ケ区ェサ荵倶クュ�����繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄繧ュ繝溘ワ遘∽ケ狗黄

「マぁ、いい――菫コ繝弱せ繝吶ユ繝上が蜑堺ケ狗黄、か。」

　　　　　

――まぁ、いいよな。